憧れのバーテンダーの世界。極上の時間を提供する彼らの技術とは

2019.02.06

大人の洒落た社交場であるバーにつどう人たちにとって、バーテンダーは至福のカクテルを手際よく作って喜ばせたり、会話の相手を絶妙につとめて和ませたりしてくれる『もてなしのスペシャリスト』です。そんなバーテンダーの技術について解説します。

バーテンダーの世界を覗いてみよう

バーテンダーとはお酒のコンシェルジュであり、バーという社交場での会話の仕方にも精通していて、彼らにしかない特有の技術をもっています。そんなバーテンダーの世界を少し覗いてみましょう。

バーテンダーという職業を知る

『バーテンダー』(bartender)という名称は、酒場を意味する『bar』と、世話をする人をあらわす『tender』が組み合わされた造語です。

アメリカの西部開拓時代である19世紀から、そのようなたぐいの仕事は存在していました。

余談ですが、昔の西部劇などではバーテンダーが少し離れたところにいる客に向けて、バーのカウンターの上においたビアグラスを巧みに滑らせて届けるシーンがよくあります。

現代のバーテンダーは、ただお酒をお客様に提供しているだけではありません。控えめながらも知的な、お酒と対話のプロフェッショナルです。

何気ないようにふるまいながらも、さまざまな技術が求められる奥深い仕事と言えるでしょう。

バーテンダーになるには

バーテンダーには資格があります。しかし、資格がなくてもバーテンダーとして働くことは可能です。勤務する時間帯は当然夜間がメインで、わりと求人が見つかりやすい職業になっています。

バーテンダーになるには『求人に応募して実践しながら学ぶ』か『養成学校で学ぶ』というアプローチがあります。

基礎からしっかり学びたいのなら、養成学校がおすすめです。カクテルの正しい作り方や、氷の作り方などの技術面を体系的に学ぶことができます。

見習いからスタート

いきなり現場に入って、見習いから始めるのも悪くありません。素人であっても求人を頼りに、思いきって現場に飛び込んでみるのもよいかもしれません。

もし、オーセンティックなバーで働くことができれば、高い技術やマナーを身につけることが求められるので、バーテンダーの先輩から学べる機会が多いはずです。

しかし、バーテンダーを募集していたのにもかかわらず、生ビールのサービスや水割りを作る程度しかできないお店もあります。働く前にしっかりと業務内容や指導について確認しておきましょう。

スクールや留学など

ホテルや飲食関系の専門学校には『バーテンダー養成コース』が設けられているところもあります。基礎から知識や技術を習得したい者にとってはよいアプローチです。

また、ニューヨークなどに1〜4週間留学してバーテンダーの資格が取れる『留学パック』もあります。費用は滞在期間に応じて、およそ30〜40万円が目安です。

収入は経験や地位で差がある

バーテンダーの収入は最初は決して高くありません。

下積み時代はどんな職種でも大変ですが、数年経験を積むと、バーテンダーの場合月に30万円程度の収入が得られるようになります。年収にすれば300~400万円ぐらいは稼げるでしょう。

飲食チェーンなどの企業でバーテンダーを勤め、力をつけて店長に抜擢されれば、収入はアップする可能性があります。

また、個人経営のバーであっても、お店を切り盛りできるリーダー的なスタッフになってくると飲食チェーンと同様に収入アップが期待できるでしょう。

このあたりはどんな業界にも共通する部分です。

バーテンダーの大切な役割

バーは居酒屋とは違って、落ち着いてお酒と会話を楽しむ空間です。なじみ客の顔見知りができたり、少しずつお酒に詳しくなったりするプロセスも味わえます。

バーの中では控えめな佇まいで、黙々と作業しているイメージですが、そんなバーテンダーによってお店のムードはつくられています。

バーテンダーの仕事とは具体的にどのようなものなのでしょうか?少し詳しく見ていきましょう。

美味しい逸品のお酒を作る

バーテンダーは美味しい逸品のカクテルを作って、お客様をもてなすのが仕事の基本です。

お酒には非常に多くの種類があります。お客様からお酒に関して質問された場合は、答えられなければなりません。

醸造酒を蒸留して作ったお酒であるスピリッツの種類だけでも、ラム・ウォッカ・ジン・テキーラなどがあり、特徴も千差万別です。さらに、カクテルの種類は数千を数えます。

そのため、年代物ウイスキーなどにも深い造詣を持つ必要があるでしょう。また、カクテル作りには知識とともに、確かな技術とスマートなふるまいも大切です。

ただお酒をサービスするだけのような単純なものではなく、奥深い仕事がバーテンダーには求められます。

お客様に居心地のよい空間を提供する

お客様に居心地のよい空間を提供して楽しませるのも、バーテンダーの大切な仕事の1つといえるでしょう。

常連のお客様の顔と名前を覚えるのはもちろん、趣味や仕事も把握して、楽しく知的な会話をする力が必要です。

もちろん、なかには話をしたくないお客様もいますので、臨機応変に対応することも求められます。

それぞれの人がどのような接客を望んでいるのかを察して、1人1人が居心地よく過ごせるように心がけるのがバーテンダーの仕事です。お酒の知識はもとより、気配りや一般教養も求められます。

バーテンダーに必要な基本知識

バーテンダーの基本は、何といってもオーダーされるさまざまなカクテルを手際よく作ることです。

そのために必要な知識にはどんな項目があるのか確認していきましょう。

ベースのリキュール

カクテルの基礎になるリキュールを『ベース』と呼びます。主にスピリッツ(蒸溜酒)が用いられます。

たとえば、ウォッカトニックはウォッカが基礎になるので『ウォッカがベースのカクテル』となります。

よく使われる主なリキュールは『4大スピリッツ』と呼ばれる以下の4種類です。基本中の基本なので覚えておきましょう。

  • ウォッカ:ロシア発祥の穀物が原材料で清涼感のある強めのリキュール
  • ジン:麦芽・トウモロコシなどが原料のクセのないリキュール
  • ラム:西インド諸島が原産のサトウキビが原料の甘味を感じるリキュール
  • テキーラ:竜舌蘭(アガベ)が原料でアルコール度数が高めのリキュール

副材料となるソフトドリンク

『ソフトドリンク』と呼ばれる飲料水が、カクテルの重要な『副材料』になります。アイス(氷)も欠かせない副材料です。ほかにもフルーツやミルクなど、副材料はいろいろあります。

代表的な副材料は以下のとおりです。

  • アイス:氷。大きな塊の『ブロックオブアイス』中ぐらいで正方形の『キューブドアイス』細かい粒状の『クラッシュドアイス』など
  • トニックウォーター:柑橘系の風味と甘味を加えた炭酸水
  • シロップ:カクテルに甘味をつけるためのもの
  • ミント:『スペアミント』『ペパーミント』などが有名、清涼感を加えるためのもの

カクテルを彩るデコレーション

『アクセサリー』とも『ガーニッシュ』とも呼ばれる『デコレーション』は、カクテルを彩るビジュアル面での大切な要素です。

デコレーションとして使われる主なものを紹介します。

フルーツ、野菜、花などを使用

レモン・ライム・オレンジなどのフルーツに加えて、オニオン・セロリ・きゅうりなどの野菜がデコレーションに使われることもあります。

ほかに使われるのは、食用花のデンファレやベルローズ、そして塩、砂糖などの調味料です。

色で魅せるグラスデコレーションも

煮詰めた綺麗な色のリキュールを絵の具の代わりにしてグラスの表面に塗り、そこに砂糖や塩をまぶして仕上げるというお洒落なデコレーションもあります。

プロフェッショナルのバーテンダーが丁寧に解説する、参考動画を見てみましょう。

プロが伝授!リキュールを使ったグラスデコレーションのテクニック!

バーテンダーが使う基本の道具

バーテンダーはカクテルを作るために、さまざまな道具を使います。すべてをそろえるのは大変なので、まずは基本の道具から始めましょう。

最初にそろえるべき基本の道具を紹介します。

シェイカー、ミキシンググラスなど

『バーツール』(カクテルの道具)の基本的なアイテムは以下の5種類です。

  • シェイカー:材料を混ぜて冷やす道具
  • メジャーカップ:材料の分量を量る道具
  • バースプーン:柄の長いスプーン
  • ミキシンググラス:バースプーンで混ぜ合わせる際の専用のグラス
  • ストレーナー:カクテルを注ぐときにアイスや果実の種などを濾過する道具

なかでも『シェイカー』や『ミキシンググラス』は、バーテンダーにとって必要不可欠な道具です。シェイカーには、お酒を混ぜ合わせるだけでなく、冷やす効果もあります。

ミキシンググラスを使った『ステア』という方法もよく用いられています。主に、材料に使う数種類のお酒の比重が近くて『混ざりやすいもの』に使われる混ぜ方です。

「ドライに仕上げたい」「お酒の味をストレートに出したい」「アイスと一緒に混ぜて冷やしたい」などの場合は、ステアで作ります。

グラスの種類はさまざま

グラスの種類はまず、大きく2つのタイプに分けることができます。『平底タイプ』と『脚(ステム)つきタイプ』です。さらに細かく分けてみましょう。

  • グラスの飲み口が広いか狭いか
  • 背が高いか低いか
  • 丸みがあるかスリムか
  • 取っ手がついているかいないか
  • グラスに入る容量が多いか少ないか

グラスにさまざまな特徴を持ったタイプがあるのは、使用するお酒やジュースなどの材料の個性や特性を活かすためです。

それぞれのドリンクが持つ味わい・アルコール度数・発泡性・色・温度などの要素を、さまざまなグラスが際立たせてくれます。

バーテンダーに必要な基本技術

バーではカクテル以外にも、いろいろな種類のお酒を頼むことができます。とはいえバーテンダーの技術が最も問われるのは、カクテルです。

カクテルは2種以上のアルコールやジュースを混ぜ合わせて作ります。このとき『どの材料を使うか』で用いる技術が異なるのです。もう少し詳しく見ていきましょう。

シェイクをするのには理由がある

『シェイク』はバーテンダーの技術の代表的な技術です。

アイスと材料を『シェイカー』に入れて軽快なリズムで振る動作で、特定の振り方はありませんが『くの字を描くように』上下に振るやり方が一般的です。

混ざりにくい材料を混ぜ合わせたり、短時間で充分に冷やしたりするためにシェイクを行います。

そもそもカクテルは、元になる個々の材料の味がわからなくなるぐらい混ぜ合わせて、新しい味を生み出すものです。その実現には、シェイクの技術が欠かせません。

シェイクをすれば、アルコールに空気を混ぜ込んで『まろやかさ』を加えることができます。さらに、急激に冷やせばアルコール度数の高いお酒の『きつさ』を緩和する効果も期待できるのです。

マティーニを作るときなどはステア

『ステア』はまず、ミキシンググラスにアイスを入れて、その中に使用材料を注ぎ込みます。それからバースプーンで氷と材料を回転させて『冷やしながら混ぜ合わせる』テクニックです。

ステアの技術で作られる有名なカクテルに『マティーニ』があります。

冷やすという点では優れていても、混ぜるという点においては少し弱めなので、お酒とお酒を混ぜるなどの『ジュースを使わないレシピ』で使われることが多いテクニックです。

ビルドは見かけ以上に難しい

『ビルド』は、シェイカーやミキシンググラスなどの道具を使わないで、グラスに使用材料をダイレクトに入れながらカクテルにしてしまうテクニックです。

見かけだけでいうと、誰でもできそうなぐらい簡単に見えます。しかし、バースプーンの使い方が非常に難しく、習得するには練習の積み重ねが必要です。

たとえば、炭酸を用いた場合、材料を1~2回かき回す間に上手く混ぜ合わせなければなりません。ビルドで作る代表的なカクテルとしては『ジントニック』などがあげられます。

バーテンダーのトップを競う大会

バーテンダーのトップを競う大会は、日本国内あるいは世界でも開催されています。そのチャンピオンには、計り知れないほどの名誉が得られるでしょう。

国内と海外で行われている大会をそれぞれ紹介します。

全国バーテンダー技能競技大会

日本で1番権威のあるバーテンダーの大会は『全国バーテンダー技能競技大会』です。

優勝者は、厚生労働大臣賞をはじめ世界大会出場権の獲得、開催地の知事賞・市長賞の授与など、バーテンダーとしての栄誉が与えられます。

バーテンダーの知識は、理論的な知識と実践面の技術習得の双方が求められます。この大会に挑戦することは、その双方を深く身に刻みつけることにつながるでしょう。

たとえ入賞できなくても、その参戦を通してかけがえのないものが得られると言えます。

WCC

『WCC』は『ワールド・カクテル・チャンピオンシップス』の略称です。バーテンダーとカクテルの祭典とも言えるイベントで、会場はさまざまな国や人種の人たちでおおいに盛り上がります。

WCCを主催する『国際バーテンダー協会』( I.B.A.)は、世界の飲料文化の発展・バーテンダーの国際交流・カクテルレシピの標準化などを目的とする組織です。

WCCのクラシック部門・フレア部門は毎年開催され、加盟国は毎年持ち回りです。出場資格は厳しく、加盟各国組織が自国で開催した大会の勝利者に限定された非常に名誉ある大会です。

日本では『日本バーテンダー協会』(N.B.A.)の会員のみがこの大会の出場資格を持っています。

世界チャンピオンとなったバーテンダーの店

日本人の中にも、バーテンダーの世界大会でチャンピオンの座を獲得した素晴らしいバーテンダーがいます。彼らの素敵なバーを紹介しましょう。

Bar 石の華

『Bar 石の華』は東京渋谷にあります。本物が好きな大人が集う、オーセンティックなバーです。

オーナーバーテンダーの石垣忍さんは、国際バーテンダー協会公認の世界大会に日本代表として出場し、見事優勝しました。

同大会の最も権威のあるシニア部門(29歳以上)でも優勝して世界1になった、名バーテンダーです。

その後も、国際的な美術展や老舗高級ブランドのオープンを記念するイメージカクテルの考案を依頼されるなど、さまざまな方面で活躍しています。

  • 店舗名:Bar 石の華
  • 住所:東京都渋谷区渋谷3-6-2 第2矢木ビルB1
  • 電話番号:03-5485-8405
  • 営業時間: 18:00〜翌2:00
  • 定休日:日曜、祝日(ゴールデンウィークは無休)
  • 公式HP

Bar Noble

横浜・関内にある、アールヌーヴォー調のオーセンティックバー『Bar Noble』は本格的なカクテルやお酒を味わう大人の社交場です。

オーナーバーテンダーの山田高史さんは、2011年に『ワールドカクテルチャンピオンシップ』で総合優勝を果たしました。

業界での役職としては日本バーテンダー協会の関東統括本部国際部長を務めています。

  • 店舗名:Bar Noble
  • 住所:神奈川県横浜市中区吉田町2-7 VALS吉田町1F
  • 電話番号:045-243-1673
  • 営業時間:18:00~翌1:30(L.O1:00)
  • 定休日:無休
  • 公式HP

お酒と社交場を知り尽くした一流職人

バーテンダーは、お酒の広い知識にとどまらず、カクテルを作るための深い技術を体得しています。そのうえ話し相手としての巧みさを兼ね備えた『お酒と社交場を知り尽くす』職人です。

そんなバーテンダーとの大人の時間に酔いしれるために、今夜もバーの扉を開けましょう。

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