剣道をやったことが無い大人の男性のなかには、これから始めてみたいと思っている人もいます。まったくの初心者でも、剣道を大人になってから始めることはできるのでしょうか?ここでは、初心者も安心!剣道の基本ルールと始め方について紹介します。
剣道はどんな競技か
『剣道』とはいったいどんな競技なのでしょうか?剣道とは、日本の武士が剣(日本刀)を使った戦いを通じて、『剣の理法を習得するために歩む道』のことを言います。
江戸中期に剣道具が開発されて以降、竹刀によって行う剣術の稽古(竹刀打ち込み稽古)が定着しました。各地の道場では、剣術の試合も幕末にかけて急速に広まっていき、大正初期には撃剣・剣術を剣道と呼ぶようになります。
そして、剣道こそが武士の精神に基づく『武道』であると説いたのです。
ここでは、剣道について解説します。
武士の心を学ぶ
剣道の目的は、『人間形成の道』と言われています。それはなぜでしょうか?剣の使い方を厳しい稽古のなかで学ぶことで、剣の理法の奥にある武士の心を学ぶことができるからです。
平安時代中期に『反り』と『鎬』を持つ独自の刀である日本刀が作られるようになりました。日本刀は、戦いにおける主要な武器として使われるとともに、次第に武士の精神的象徴として扱われ、刀は武士の心と言われるようになります。
剣道は、日常の稽古や試合という競技の剣道を通じて、武士の心を学ぶものであって、単なる競技ではありません。
厳しい稽古にメンタルが鍛えられる
剣道とは、剣の道を自得するだけでなく人間形成の道であることから、『礼儀や作法』などにとても厳しいことも特徴です。重たい剣道着を身に着けて、稽古をすることは思っているよりも簡単ではなく、強いメンタルが求められます。
最初は厳しいと感じている稽古も、繰り返し行うことでメンタルが自然と鍛えられ、ストレス発散や身体の健康を維持するだけでなく、自分に自信が持てるようになるのです。
正しい姿勢や礼儀が身につく
剣道は、『礼に始まり礼で終わる』と言われています。本来、剣道は相手を倒すための武術でした。
しかし、時代の変化とともに剣客の武技となり、剣客はその技を磨くため、剣の道として剣道の修行をするようになり、人間形成の道となっていったのです。対戦相手にも尊敬の念や感謝の心を持つことで、ほかのスポーツではあまり見られない『気持ちの上での礼儀』を学ぶこともできます。
また、剣道では正しい構えを身に着けることで、姿勢がよくなり、普段あまりすることのない正座にも慣れていきます。
ルールを知ろう
剣道がどんな競技なのかを理解したら、次はルールについて学びましょう。剣道は、境界線を含む1辺を9~11mの正方形・長方形の試合場で行います。
開始線は、中心より均等の位置に左右1本ずつ表示されています。
ここでは、剣道の『基本の規則』と『試合の流れ』について解説します。
基本の規則
剣道の基本の規則は下記のとおりです。
- 剣道具は、面、小手、胴、垂れを用いる。
- 竹刀は、竹または全日本剣道連盟が認めた竹に代わる化学製品のものとする。竹刀の構造、長さ、重さ、つば(鍔)の規格などは、細則で決められている。
- 服装は、剣道着・袴とする。
- 試合は、原則として3本勝負とする。ただし、運営上必要な場合は1本勝負とすることができる
- 試合時間内に2本先取した者を勝ちとする。ただし、片方が1本を取り、そのままで試合時間が終了したときは、この者を勝ちとする。
試合の流れ
剣道の試合は、1試合5分を基準としています。勝敗は、試合時間内に2本先取した人が勝者です。 ただし、片方が1本を取り、そのままで試合時間が終了したときは、 1本とった人が勝ちとなります。
試合時間の5分で勝敗が付かない場合には延長戦となり、延長の場合には3分が基準です。この3分の延長戦の中で先に1本を取った方が勝者です。
また、判定or抽選により勝敗を決めたり、 引き分けにしたりするケースもあります。判定or抽選により勝敗が決まった場合には、その勝者には1本が与えられます。
判定によって勝敗を決める場合は、 技能判定が優先、そして次に試合態度も考慮して勝者が決められます。
ただし、主審が『有効打突』または『試合の中止』を宣告したときには、 再開までにかかった時間は試合時間にカウントされません。
二刀流は長い間禁止されていた
二刀流とは、左右の両方の手に刀を1本ずつ持って戦う技法のことです。宮本武蔵の流儀としても知られており、テレビや映画などで観たことがある人も多いのではないでしょうか?
剣道では、昔から二刀流が認められており、戦前には全国レベルの大会で活躍した二刀流の剣士もいました。しかし、戦後のある時期に占領軍によって日本の剣道が禁止され、その後復活した剣道では、二刀流は小・中・高・大学の試合での使用が禁止されていました。
その後、二刀流が認められるようになってからも、長い間禁止されていたことで二刀流の流儀を指導する人が減少したこともあり、最近ではあまり見かける機会がありません。
剣道形とは
剣道にはさまざまな『突き方』があります。その突き方を学ぶための稽古を『剣道形』と呼びます。
剣道形では、技を仕掛ける『仕太刀』と、技を仕掛けられる『打太刀』がいます。打太刀は『師の位』、仕太刀は『弟子の位』とされており、上級者が打太刀、下級者が仕太刀をとるのが一般的です。
ここでは、剣道形について解説します。
1本目から3本目
剣道形の1本目は『面抜き面』という技に分類されます。相手の面打ちを下がって抜き、すぐに踏み込んで面を打ち返すという大技です。試合などでは決めることがとても難しい超高等技術です。
次に2本目は、打太刀・仕太刀ともに中段に構える『相中段』で始まり、お互いに間合いに入ったら、機を見て打太刀が大きく小手を打ってくるので、仕太刀は刀を下段に下げて抜きながら、左斜め後方への体さばきでかわします。
そして、すかさず大きく小手を打ち、残心を示しながら元の位置へと戻り終了です。
3本目は、打太刀・仕太刀ともに下段に構える『相下段』で始まり、両者が下段に構えたまま間合いに入ったら、両者ともに少しずつ剣先を上げていきます。中段になって打太刀は機を見て仕太刀の水月に突きを入れるので、仕太刀はこれを引き込むようにさばいて、逆に打太刀の胸を突き、左足を踏み込んで突きの気勢を示して終わりです。
4本目と5本目
4本目は、打太刀が『八相の構え』、仕太刀が『脇構え』から開始です。両者が3歩進んだところで、お互いそれぞれの構えから上段の構えに移します。そして互いに頭上で切り結んだら、頭上から中段へと剣先を下ろしていき、打太刀は仕太刀の右肺めがけて突きを放ちます。
仕太刀は左足から左斜め前に体をさばき、刀を剣先を下にして右体側に立てるようにして打太刀の突きを流し、大きく巻き返して面を打ち、終了です。
5本目は、打太刀が『諸手左上段の構え』、仕太刀が中段の変形である『平正眼の構え』で始まります。お互い3歩進んで、打太刀は仕太刀の正面に対して真っ向に切り下ろし、仕太刀は左足から下がりながら表鎬(おもてしのぎ)で摺り上げて、すぐに右足を踏み込んで打太刀の正面を打ちます。
仕太刀が右足を引きながらその場で諸手左上段に構えて残心し、両者ともに中段に剣先を合わせて元の位置へと戻って終わりです。
6本目と7本目
6本目は、打太刀は『中段の構え』、仕太刀は『下段の構え』で開始です。お互いに右足から進み、間合いに接したら、仕太刀は下段から打太刀の両拳の中心を攻めるように中段に刀を上げ、同時に打太刀は剣先を少し下げ、諸手左上段に構えます。
仕太刀はすぐに攻め、打太刀は下がりながら剣先を中段に下ろして、『相中段の形』にします。打太刀が小さく鋭く小手を打ってきたら、仕太刀はこれを擦り上げながら打太刀の小手を打ち、打太刀は斜め後ろに下がって負けた姿勢を示すので、仕太刀は追い込むようにして諸手左上段に構えて終了です。
7本目は、両者ともに『相中段』から開始です。打太刀は仕太刀の胸部を突いて攻めます。仕太刀はそれを支え受けて小さく下がり、打太刀が正面を切り下ろしてくるので、仕太刀は右斜め前に移動してすれ違いざまに打太刀の胴を切ります。
仕太刀は右ひざをついて片膝立ちになり、そのまま脇構えて、お互いの剣先を合わせて元の位置に戻って終わりです。
剣道のレベル
剣道には、初心者から上級者までレベル別に分けられます。それぞれ、決められた条件をクリアした場合のみ昇段試験の受験が可能です。
剣道は強ければよいという競技ではなく、精神と礼儀を大切にしているため、それを身につけるために一定の期間が経たなければ試験は受けられません。
ここでは、剣道のレベルについて解説します。
段位、級位で示される
剣道のレベルは段位・級位で示される段級位性が用いられます。段級位制とは、剣道の段位や級位の制度全般を指すもので、主に全日本剣道連盟や国際剣道連盟などが定める制度のことです。
段位の数が上がるにつれて上級レベルということになります。
昇段するには年数などさまざまな条件がある
剣道の段位は『初段から十段』です。段位を上げるためには、昇段試験を受審しなければなりません。
受審には、加盟団体の登録会員であるとともに『満たさなければならない条件』があります。
1級は小学6年生以上であること、そして、初段は13歳以上でなくてはなりません。また、2~7段までは前段位を受有した後、2段では1年、3段は2年と段が1段上がるごとに1年ずつ修業しなくてはならない期間が増えます。
8段の場合は、7段を受有した後、10年以上の修業と46歳以上でなくては昇段試験が受けられません。ただし、加盟団体会長が特別な理由を持って認めた場合は、前段位を有していなくても受審することも可能です。
剣道の始め方
剣道を始めてみたいけれど、どうやって始めればよいのかわからない人も多くいます。剣道は、道場へ行くことから始めるのが一般的ですが、道場以外にも方法があります。
ここでは、剣道の始め方についていくつか方法を紹介します。
まずは自分だけでやってみる
剣道は道場へ行かなくても、自分1人でも練習が可能です。まずは、足さばきや素振りを自分だけでやってみましょう。
素振りは、竹刀が長すぎて家では練習ができないと思われがちですが、竹刀を短く持ち、蹲踞をしたままの姿勢(腰を落として立膝をついた状態)で行うことができます。
また、足さばきは、かかとを5mm程度浮かせたまま歩いたり、すり足練習・踏み込み練習などで自主トレーニング可能です。
無料体験をしてみる
道場によっては、無料体験を設けているところがあります。無料体験では、胴着や竹刀を持っていなくても気軽に参加できることもあり、初心者が気軽に剣道を体験できます。
本当に剣道を続けられるか心配という初心者は、まず無料体験に申し込んで、自分が続けられそうか判断する基準にもなります。
道場へ行く
道場というと、子どもが剣道を習う場所と思われがちですが、大人向け道場もあります。大人向け道場では、まったくの初心者でも安心して剣道の指導が受けられます。
また、周りも大人だけなので、気兼ねなく剣道の稽古を始められると人気です。
サークルに参加する
仕事やプライベートで決まった時間が作れない大人の男性は、道場へ通うことが難しく感じるかもしれません。
そんな人は、剣道サークルに参加してみましょう。剣道サークルは、そんな忙しい大人でも剣道が稽古できます。事前予約や会員登録などの手間がかからない場合が多く、練習時間に直接会場を訪れるだけで剣道の稽古ができます。
剣道を始める準備
剣道を始めるために必要なものはどんなものがあるでしょうか?ここでは、剣道を始めるにあたって、準備すべきものを紹介します。
剣道に必要なもの一覧
剣道は道具を使う武術なので、始める前に揃えなくてはならないものがいくつかあります。しかし、最初からすべての道具を揃える必要はありあせん。剣道を始めるときに必要な道具は下記のとおりです。
- 剣道着
- 剣道袴
- 手ぬぐい
- 竹刀
- 面
- 胴
- 小手
- 垂
まずは剣道着と竹刀を
剣道を始めるときにまず必要となるのが、『剣道着・剣道袴・手ぬぐい・竹刀』です。
剣道着は、やわらかくて着心地のよいものを選びましょう。また、剣道の稽古では、汗をかくので、何枚か用意しておくと便利です。
剣道袴は、剣道着と同じ色合いのものを選びます。手ぬぐいは、剣道専用のものを購入しましょう。
竹刀は、自分の身長に合った長さ・重さのものを選びます。
上達するにつれ防具を揃える
ある程度上達してきたら、次は防具を揃えましょう。相手の打突から頭やのど、肩などを守るための防具である『面』は、しっかりと自分の頭・顔にフィットしたものでなくてはなりません。初心者は、剣道専門店を訪れて、スタッフに計測してもらってから購入した方がよいでしょう。
また、『胴・小手・垂』も面と同様に、初心者は専門店で計測してもらってから購入しましょう。
剣道を学べる書籍3選
剣道を自分で学ぶためには、書籍を活用するのも1つの方法です。書籍ならば、自分の好きな時間に手軽に学べます。
ここでは、剣道を学べる書籍3選を紹介します。
剣道をしっかり学ぶなら 剣道を知る事典
『剣道を知る事典』は、これから剣道を始めようと思っている人などの初心者にもわかりやすく剣道のことを解説している本です。
稽古・試合・審査・用具など基本的なことから、剣道の歴史についてまで幅広く学べます。また、剣道特有の表現である1本・残心・間合などの用語についても詳しく載っているので、基本から学びたい人におすすめです。
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気持ちが熱くなる剣道漫画 六三四の剣
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『剣道時代』は、昭和49年に創刊されて以来、長い間剣道ファンのバイブルとして読まれている月刊誌です。剣道の精神・理論・技術を幅広く紹介しているので、本物の剣道の心に触れられます。
特に、技術に関しては、連続写真やイラストを用いて初心者にもわかりやすく解説されています。
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今からでも遅くない。剣道で男を上げよう
剣道の稽古をすることで、礼儀作法を身に着けるだけでなくメンタルが鍛えられます。身体もメンタルも鍛えることで、より男らしさがアップすること間違いありません。
剣道に必要な道具をそろえて、まずは始めてみましょう。