料理をする上で包丁は欠かせない道具です。普段から手入れをしておくことで、切れ味を保ったまま安全に扱うことができるようになります。そんな包丁の手入れに欠かせない砥石の種類や選び方と、そして砥石を使った包丁の研ぎ方について解説します。
包丁の切れが悪くなる原因とは
包丁は日々の料理に使用しますが、手入れをせずに使用していると切れ味が悪くなってきます。その原因は、肉や野菜を切ることによって刃の鋭利さが失われ、徐々に丸くなってしまうためです。
切れ味の鈍くなった包丁は料理がしにくくなるだけではなく、指を切ってしまうようなケガにもつながりかねません。
砥石を使ってお手入れをすることで、包丁の切れ味を保ち、料理しやすくするだけでなく、包丁を長く保たせることもできます。
研ぐタイミングの見極め方
包丁の切れ味が鈍くなっていても、毎日使っているとなかなか気付きにくいかもしれません。包丁の種類や使い方によって刃の摩耗具合は変わってくるので、研ぐ頻度・タイミングはさまざまです。
ではどのように包丁を研ぐタイミングを見極めるかですが、実はトマトを用いることで簡単に見極められます。
やり方は次のとおりです。まずは皮付きトマトを包丁で切ってみてください。切れ味の保たれている包丁であれば、皮とトマトをスッと切ることが可能です。刃がトマトを切れず、汁が出るようなら包丁を研ぐべきタイミングとなります。
他にも、鶏肉の皮の上で包丁が滑り始めたり、タマネギを切った時に普段より目にしみたりなどの兆候が出てきたら、包丁を研ぐタイミングです。
砥石の選び方と種類
一口に砥石といっても、さまざまな種類があるのはご存じでしょうか?包丁の材質や刃先の摩耗具合にあわせた砥石を使うことで、より研ぎやすく、包丁の切れ味も鋭くなります。
砥石の種類について詳しく見ていきましょう。
まずは包丁の材質を知ろう
砥石の種類を見ていく前に、まずは包丁にどのような材質が使われているかを解説します。
包丁に使用されている材質は『鋼』『ステンレス』『セラミック』などです。また、金属の含有率によって包丁の固さも変わってきます。包丁の砥石は、まず包丁の材質に合わせて選ばなければなりません。
特に、包丁の材料として使われるセラミックは、模造ダイヤにも使われるジルコニアを使ったもので非常に硬く、ダイヤモンド砥石でのみ研ぐことが可能です。
自分が持っている包丁の種類についてあらかじめ把握しておくと、砥石を選ぶ時にも困らないでしょう。
包丁に適した砥石の粒度とは
砥石の表面の目の粗さは『粒度』という単位で表します。
粒度は『#600』や『600番』という形でパッケージに表示されていて、粒度の数字が小さいほど目が粗く、大きいほど目が細かい砥石となります。
粒度によってどのような違いがあるのかは、次で詳しく見ていきましょう。
砥石の種類はおおまかに3つ
砥石は、粒度に応じておおまかに3種類に分別できます。
まず『荒砥石』の粒度は120~600あたりで、目が最も粗く、包丁の刃が欠けてしまった時や、極端に切れ味が落ちてしまった時に使う砥石です。
次に『中砥石』は、粒度が800~2000程度の砥石で、荒砥石ほど削る力は強くありませんが切れ味の良さを一定以上取り戻すことが可能となります。一般家庭用の包丁であれば、中砥石だけで十分に仕上げられます。
最後に『仕上砥石』ですが、これは粒度が3000以上で、かなり目の細かい砥石となります。削る力は荒砥石に比べてかなり弱いですが、最後の仕上げや細かい調整をする時に使う砥石です。
ダイヤモンド質の砥石が人気
最近では、ダイヤモンド質の砥石も人気が集まっているようです。
ダイヤモンド質の砥石は研磨力が強く、ほかの砥石と比較して早い時間で包丁が研げます。さらに、砥石自体の減りも少なくて長持ちです。
ただし、研磨力が強すぎるため、通常の砥石のような感覚で包丁を研いでしまうと、かえって包丁を傷めてしまうことがあるので注意してください。
100円均一でも砥石は手に入る
砥石は100円均一でも入手可能で、包丁の種類や形に合わせてさまざまな砥石が売られています。100円均一で砥石を購入するメリットは、自分が所有する包丁にあった砥石を試しながら選べるという点です。
砥石は値段が幅広く、ものによっては1万円を越えるので容易に購入できません。万が一、購入した砥石が自分の包丁に合わなかった場合、痛い出費を被ってしまいます。
そこでまずは100円均一で入手すれば、砥石の使い方も分かりますし、いくつか購入して比較することも可能です。
砥石を使った包丁の簡単な研ぎ方
それでは、実際に砥石を使った包丁の研ぎ方について解説していきます。砥石の使い方や、研ぐ時のコツと注意点についても解説しますので、参考にしてみてください。
上手に研ぐポイントは角度
砥石で包丁を研ぐ際に重要なのは、包丁を寝かせる角度です。一般家庭で使われる両刃包丁なら、この角度は15度を保つようにしてください。
立てすぎても刃を傷めてしまいますし、寝かせすぎるのはNGです。15度をキープしたまま砥石の上をスライドさせる必要があります。
慣れないうちは難しいので、うまくできない人は角度を固定するホルダーがついた砥石を購入するか、ホルダーを別途購入しましょう。
包丁を研ぐ際の砥石の使い方
まずはタオルや布巾を濡らして、砥石の下に置いてください。これは砥石が滑るのを防ぐためです。
次に砥石を水で濡らします。どの程度濡らすかは砥石によって違いますので、砥石の説明書を確認しましょう。
次はいよいよ包丁を研ぐ作業です。引く時はあまり力を入れず、押すときに少し力を入れてスライドさせます。両刃包丁の場合は、裏面も同様に研いでください。
研いだ後は刃の裏側に刃反り(バリ)というザラザラしたひっかかりができるので、そっと砥石をあてて取り除きましょう。
なお、研いだ直後は金属臭が出るため、料理の直前に研ぐのはおすすめしません。時間に余裕をもって研ぎを行いましょう。
砥石の上の黒い研ぎ汁は流さない
砥石で研いでいると、濁った研ぎ汁が出てきます。これは研石がこすれて出てきた粒子なので、この研ぎ汁を利用して刃を研ぐとより刃が研磨され、スムーズに研ぐことができるようになります。
ただし、この研ぎ汁をずっと残しておくと、次に使う時に包丁を傷める原因になってしまいますので、研ぎ終わったらしっかりと洗い落としてください。
砥石のお手入れ方法
砥石の状態は包丁の切れ味や研ぎのしやすさにも直接関係しますので、普段から手入れを忘れないようにしましょう。砥石のお手入れ方法についても紹介します。
使い終わった後はきれいに洗い流す
研ぎの作業が終わったら、砥石と包丁、手をしっかりと洗いましょう。粒子が残っていると、次に研ぐ時に刃や砥石を傷つけてしまい、また金属臭が残ってしまうことがあるため、しっかりと落とします。
その後は自然乾燥させてから、直射日光の当たらない日陰で保管しましょう。傷つかないように新聞紙でくるみ、ケースがある場合は入れて保管しておくようにします。
熱風で無理矢理乾燥させたり、湿気の多いところに長時間放っておいたりするとひび割れや劣化の原因になりますので避けてください。
砥石の面直しをして表面を平らに
包丁を研ぐと、刃と同様に研ぎ石の方も削れていきます。砥石の表面でもよく使っている部分とそうでない部分で高低差ができてしまい、徐々に凸凹してくるでしょう。
そうなってしまうと綺麗に研ぐことができなくなるので、砥石の方を平面に直す作業である『面直し』が必要になります。
面直しの作業には、砥石の面を修正するための『面直し砥石』を使用します。値段もそれほど高くありませんので、砥石が劣化したと感じた場合は使ってみると良いでしょう。
ただし、ダイヤモンド砥石に関しては、専用のパウダーなどが必要になる場合があります。
砥石がない場合でも包丁は研げる?
包丁の切れ味が鈍ってきたので研ぎたいと思っても、手元に砥石がない場合もあるでしょう。そんな時は、砥石以外のものを使って包丁を研いでみてはいかがでしょうか。砥石の代用品として利用できるものを紹介します。
キッチンにあるアルミホイルを代用
アルミホイルを何重にも折り曲げ、それを包丁で切ることで切れ味をある程度復活させることができます。
包丁を使い込んでいると、目に見えない小さな傷がいくつもできてきます。アルミホイルはこの小さな傷に入り込み、包丁の表面を滑らかにするのです。これは、アルミニウムの『構成刃先』という作用によって起こります。
包丁だけでなくハサミやカッターなども、アルミホイルを切ることで切れ味が戻ることがあるので、試してみてください。
陶器のお茶碗も砥石代わりに
お茶碗やマグカップなどの陶器の底の輪っか状の部分は『糸底』といいます。この部分を使って、砥石の代わりに包丁を研ぐことが可能です。
お椀を逆さにして、水で濡らし、包丁の刃を当てて手前に向けて引く工程を数回行います。力を入れず、陶器をしっかりと固定するのがポイントです。
この研ぎ方で切れ味はかなり戻りますが、包丁の錆びや欠損までどうにかするほどの効果は得られません。
ここまでに紹介した方法については、あくまで研ぎ石がない場合の応急措置であることは念頭に入れておきましょう。できれば砥石を使うのが一番です。
砥石を使ってもっとおいしい毎日を
包丁の切れ味を保つには、きちんとしたお手入れが必要です。砥石を使って包丁をしっかりと研いで調理を行いましょう。
砥石は粒度によって使い方や用途が違うので注意が必要です。包丁の金属素材や摩耗に合わせた砥石での手入れを行いましょう。
研いだ後の砥石や包丁は水でゆすいで保管することで、次の研ぎ作業もスムーズに行えます。包丁のお手入れを欠かさないことによって、毎日の料理のおいしさをキープしましょう。