剣道の基本ルールを解説。精神力が鍛えられる競技の戦い方

2019.02.01

剣道は武道の側面を持つ競技です。勝敗を決める基準や反則の考え方などに、武道の精神が強く反映されています。このため、ほかのスポーツに比べてルールがわかりにくいこともあります。剣道を楽しむために理解しておきたい基本ルールについて解説します。

剣道とはどのような競技か

剣道では、道着を着用し竹刀を使って相手の体の決められた部位を、打ったり突いたりすることで勝敗を競います。

しかしいくら正しい部位を打突しているように見えても、一本が取れないケースが多くあります。剣道のルールを知らずに試合を観戦していると、そのようなことがとても不思議に感じるでしょう。

実は剣道では相手を打突するだけではなく、打突するときの気迫や打突後の動作が重要となります。このため、どうしても判定が曖昧なように思えてしまうのです。

まずは試合を行う場所の大きさと試合時間、勝敗の決め方といった基本的な項目を確認していきましょう。

試合場のルール

剣道の試合を行う場所は、板張りの床であることが原則とされています。ここに1辺が約9mか11mの正方形または長方形を白線でつくり、その中で試合を行います。

9m四方や11m四方の正方形でも、9m×11mの長方形でもよく、会場全体の大きさや必要な試合場の数によって決められます。

試合場の中心には目印となる×印をつけ、そこから左右に1.4mずつ離れた場所に、選手が立つ位置となる開始線をひきます。

何本取れば勝負がつく?

剣道の試合は三本勝負です。制限時間は5分間で、この時間内に先に二本取ると勝ちとなります。二本取れずに5分過ぎた場合は、一本を取ったほうが勝ちです。

両者一本ずつ取った状態で試合が終わった場合は、一本先取の延長戦を行いますが、大会によっては引き分けにしたり、審判による判定やくじ引きなどで勝敗を決めることもあります。

一本の判定基準は曖昧?

剣道では打突部位に竹刀を当てるだけでは一本は取れません。一本を取るためには、攻撃が有効打突(ゆうこうだとつ)になっている必要があります。有効打突の判定基準は、全日本剣道連盟の試合規則に下記のように定められています。

有効打突は、充実した気勢、適正な姿勢をもって、竹刀の打突部で打突部位を刃筋正しく打突し、残心あるものとする。

出典:全日本剣道連盟|剣道について

竹刀の打突部というのは、竹刀の先端1/4の部分を指します。この部分で、適正な姿勢を保った状態で打突しなければなりません。

さらに『充実した気勢』(気迫を感じる攻撃)と、『残心』(打突した後も油断しない態勢)という条件が全て揃っていてはじめて、有効打突と認められるのです。

打突部や姿勢についてはわかりやすいですが、気勢や残心の判断は審判の経験などに頼る部分が多く、初心者が見ると判定基準が曖昧なのではと感じることもあります。

かけ声が必要

有効打突の条件の1つ、充実した気勢をわかりやすく表現するために行うのが、かけ声です。打突しようとする部位を『面(メン)!』などと大きな声で言いながら打ち込んでいきます。

ほかのスポーツでも気合いを入れるために声を出すことがありますが、得点や判定には関係がありません。しかし剣道では、一本を取るために大きなかけ声が必要なのです。

基本の戦い方を知ろう

剣道には入場、退場の仕方やあいさつについてもきちんとしたルールがあります。また、試合中は審判の指示に速やかに従う必要があります。

最初から最後まで、対戦相手や審判、観客に対してきちんと礼をつくすことが求められているのです。試合をする際の基本的な流れについてみていきましょう。

入場と試合の始め方

試合会場に入るときは、正面に向かって礼をしてから入場します。指定の場所に着座し、静かに順番を待ちましょう。

自分の出番になったら試合場に入ります。このとき、竹刀は手にさげて持つ『提げ刀(さげとう)』です。対戦相手と向き合って立礼をし、『帯刀(たいとう)』して開始線まで3歩進みます。

帯刀とは、竹刀を持った手を腰に引きつけた状態のことで、武士が刀を帯に差している様子をあらわしています。

3歩めで竹刀を抜き、対戦相手と剣先を交えながら『蹲踞(そんきょ)』します。蹲踞というのは、相撲の取り組み前に力士が土俵上でしゃがむポーズです。剣道でも同じように開始線上に蹲踞し、試合開始の合図を待ちます。

試合中の合図の意味

試合中はさまざまな理由で中断されることがありますが、これは審判の合図によってわかるようになっています。

反則があったり、怪我や事故などの危険な状況になったりした場合には『止め』の合図があります。このとき選手は試合を中断して、開始線に戻ります。なお、止めの間は有効打突があっても認められません。

審判の判定が曖昧と思われたり、反則かあったかどうかがはっきりしなかったりするときは『合議』の合図があります。選手は開始線まで戻ってから竹刀を納め、試合場の境界線の内側まで下がり合議の結果を待ちます。

つば競り合いが長く続いて試合が膠着(こうちゃく)したときは、『わかれ』の合図が出ます。選手は合図が出された位置で、『一足一刀(いっそくいっとう)の間合い』(一歩踏み込めば相手に竹刀が届く距離)に戻ります。

退場の仕方

勝敗が決したら、開始線へ戻って竹刀を中段に構えます。主審が終了の合図をしたあとに、蹲踞して竹刀を納めてから立ち上がります。

帯刀した状態で後ろへ下がり、提げ刀で立礼してから試合場の外へ出ます。

旗の意味と宣言の仕方

剣道の試合では1人の主審と2人の副審、計3人の審判員がいます。主審は右手に赤い旗、左手に白い旗を持ち、向かい側に立つ副審2名はその逆に旗を持っています。

選手も目印として赤か白のたすきを着けていて、赤の選手は主審の右手側に、白い選手は左手側に立ちます。審判員はこの赤白の旗を上げ下げしたり、振ったりしながらジャッジを行います。

一本が認められたとき

試合中最も盛り上がる瞬間が、一本(有効打突)が認められたときです。審判員は一本を認めたら、取った選手の色の旗を斜め上に向けて上げ、同時に『面あり』などのように、どの部位を打突したかということを宣言します。

有効打突が決定したら、審判員は旗を上げたまま定位置に戻り主審の宣告を待って旗を下ろします。

中止のとき

怪我や竹刀の不具合などにより、選手から試合中止の要請があった場合は、両旗を真上に上げて宣言します。選手双方が中止を確認したら、旗を下ろします。その後主審が中止の理由を確認し、再開等の判断を行います。

団体戦のルール

剣道の試合では、団体戦も多く行われています。1チーム5人で構成され、順番に試合をしていくのですが、勝敗の決め方は1つではなく、大会によって定めることができるようになっています。よく採用されているルールを2つ紹介します。

勝者数法

『勝者数法』では、勝った人数が多いほうが勝ちとなります。つまり5人中3人が勝てば、勝者です。2勝2敗1引き分けのように勝者が同じ場合は、一本を取った総数の多い方を勝ちとします。もしこれも同じ場合、代表者戦を行って勝敗を決めます。

勝ち抜き法

『勝ち抜き法』は、1回戦で勝った選手が続けて試合を行い、負けるまで続けていく方法です。相手チームを全滅させると勝ちになります。

知っておきたい剣道の反則

剣道では試合中、2回反則を取られると相手の一本になります。もし4回反則をしてしまうと相手に二本取られたことになり、負けてしまいます。さらに反則の内容によっては、即試合終了ということもあります。

試合に勝つためには有効打突を狙うのと同じくらい、反則をしないことも重要なのです。どのような場合に反則を取られるのか、詳しく見ていきましょう。

武士の精神から外れたことは禁止とされる

剣道の反則は、ほとんどが武士道精神に則って決められています。審判員や相手選手に対して非礼な言動をしたり、不正な用具を使ったりした場合は特に厳しく、問答無用で相手に二本が与えられ、負けとなります。

また、相手の足をかけたり不当に場外に出したりすること、自分の竹刀を落としたり、意味のない打突を繰り返したりするといった行為も反則とされます。

ガッツポーズも反則となることがある

剣道では、ほかのスポーツと違って一本取ったあとにガッツポーズをすると、なんとその一本が取り消しになってしまいます。せっかく一本を取れたのに、ガッツポーズくらいで取り消しとは、厳しいですね。

しかし剣道は、技の良し悪しよりも礼節を重んじる武道です。いくら素晴らしい打突を決めても、敗者の目の前でガッツポーズをするような態度は相手に対する思いやりを欠いており、礼節を軽んじた行為とみなされます。

このため一本取り消しのような厳しい対応が取られているのです。

細かい反則がわかるルールブック

剣道にはほかにもさまざまなルールが設けられています。細かな規則や反則などは、審判員向けのルールブックを読むとよくわかるでしょう。おすすめの本を2冊紹介します。

  • 商品名:剣道試合・審判規則/同細則
  • 価格:350円(税込)
  • 全日本剣道連盟:商品ページ

全日本剣道連盟が発行している公式ルールブックです。必要な決まりごとはすべて載っているので、剣道を始めるなら必ず目を通しておきたいですね。

  • 商品名:よくわかる剣道審判法のすべて
  • 著者:香田郡秀
  • 価格:2160円
  • Amazon:商品ページ

公式の規則集だけではよくわからない部分や、試合中に判断が難しい実例と対処方法などを、写真を使って詳しく解説しています。

著者の香田郡秀氏は、全日本剣道連盟強化委員や全日本学生剣道連盟審判委員長などをつとめる剣道のエキスパートで、豊富な体験に基づいた情報はわかりやすいと好評です。

剣道からサムライスピリッツを学ぼう

剣道の目的は技や体の鍛錬を行うことだけでなく、礼節を重んじることで自身の人格を高めていくことにあります。試合における細かい作法やルールにも、こうした考え方が反映されているため、慣れないと近寄りがたく、わかりにくいと感じる方も多いようです。

しかし剣道の奥深さは、試合を観たり練習に参加したりするうちに、だんだんとわかってくるものです。ぜひ独特な剣道のルールを理解して、日本に古くから伝わるサムライスピリッツを学んでくださいね。

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