料理の腕が上がると、道具にもこだわりたくなります。特に包丁は切れ味を保ちたいものです。長年愛用している包丁も、状態にあった種類の砥石で正しく研ぐと新品同様の切れ味を取り戻します。本記事では、砥石の種類と包丁の正しい研ぎ方を解説します。
砥石の種類は主に3つ
砥石は、『粒度(りゅうど)』の数値によって種類が分かれています。粒度とは、砥石の目の粗さを表すものです。
粒度は、砥石の包装に『#』から始まる『番手』と呼ばれる値で表記されます。番手が2、3桁の小さな数値であれば砥石の目は荒く、4桁の大きな数値であれば砥石の目は滑らかです。
荒砥石
番手は80~220程度です。色は青や黒っぽい物が多く、表面はゴツゴツとしています。
荒砥石は、日常のメンテナンスには向いていません。研磨力が強く、主に刃こぼれしたときなどの修理に使います。
中砥石
番手は400~1500程度です。レンガ色など茶系の色であることが多く、表面は少しザラついて感じられるでしょう。
中砥石は、砥石の中でメインともいえます。包丁の日常のお手入れには、これだけで十分という人も少なくありません。
仕上砥石
番手が3000以上の砥石は、仕上砥石と呼ばれます。市場に出回っているものは、ベージュなど薄い色が多いです。表面はサラサラとしています。
仕上砥石は研磨力が弱く、刃の修正には向いていません。包丁の表面を鏡のように磨き上げたり、食材の切れ味をより滑らかにしたりする、主に中砥石で研いだ刃の仕上げとして使われます。
番手 | 主な色味 | 表面の感触 | 主な用途 | |
荒砥石 | #80~220 | 青・黒 | ゴツゴツ | 傷の修復 |
中砥石 | #400~1500 | レンガ色・茶系 | ザラザラ | 日常のお手入れ |
仕上砥石 | #3000以上 | ベージュなど | サラサラ | 仕上げ磨き |
包丁の状態により砥石を使い分ける
砥石の粒度が分けられているのは、包丁の刃の状態や仕上がりの希望によって、適する砥石が異なるからです。自分の包丁の状態をよく確認して砥石を選びましょう。
刃こぼれした場合
包丁が刃こぼれしているときは荒砥石の出番です。刃こぼれした包丁を荒砥石で研げば、力も時間もさほどかからず修復できます。
しかし荒砥石は研磨力が強いため、刃の欠けや刃先のすり減りの原因にもなります。短期間に荒砥石を何度も使用したり、研ぐときに力を入れ過ぎたりしないように注意してください。
切れ味が落ちてきた場合
切れ味が落ちてきたと感じたときは、中砥石で包丁を研ぎましょう。包丁の切れ味が戻るだけでなく、少し時間をかければ、刃の小さな傷も修復可能です。
一般家庭では、中砥石があれば十分だといわれます。ただし中砥石では、大きな傷や刃こぼれを直すことや、プロが使う包丁のような鋭い切れ味は望めません。
より鋭い切れ味を求める場合
中砥石で研いだ包丁の切れ味に物足りなさを感じるときには、仕上砥石を使います。仕上砥石は、3種類の砥石の中で最も目が細かく、研磨の仕上げに使われる砥石です。
中砥石で研いだ後に仕上砥石で刃を研ぐと、見た目が美しくなるだけでなく切れ味も抜群にあがります。切れ味のよい包丁で食材を切ると、食品の成分を壊さず、見た目も美しく調理できるでしょう。
包丁の正しい研ぎ方
包丁が両刃か片刃かによって、包丁を研ぐ過程が異なります。どちらの場合の研ぎ方も知っておくとよいでしょう。まずは共通する研ぎ方の基本から見ていきます。
ポイントは、砥石の上に包丁を置くときの刃の向きと角度です。刃は自分に向け、砥石に対して45度くらいに斜めに置きます。次に刃を砥石に当て、前後に滑らせましょう。包丁を押すときには力を込め、引くときには力を抜いて研ぎます。
この際、利き手で包丁の柄をしっかり握ってください。反対の手の親指、人差し指、中指を刃先の真上に添え、砥石と包丁の角度を45度に保つよう注意しましょう。
また、包丁は刃全体を一気に研げないので、先端から刃元まで数回に分けて研ぎます。刃先・中心・刃元の順で作業を進めるのが効率的です。
片刃包丁
片刃包丁は、まず刃先の角度通りに刃を砥石に当て、包丁の背に力をかけて研ぎます。このときに、肘を使って包丁を上に持ち上げながら研ぐと簡単です。
包丁全体が研げたら、刃の『かえり』をチェックします。かえりとは、研いだ部分の裏面にできるギザギザのことです。爪を当ててザラザラした感触があればかえりがあり、包丁がしっかり研げている証拠となります。
仕上げには、かえりを取る作業が必要です。始める前に砥石の表面が水平かどうか確認してください。砥石に対して包丁の角度を90度にし、研いだ面の裏面を砥石にぴったり当てて、包丁全体を軽く2、3回程度滑らせましょう。
両刃包丁
両刃包丁もまずは刃先を研ぎ、次に全体を研ぎます。片面が研げたらかえりがあるかを確認し、反対の面も同じように作業をします。反対の面は、押すときに力を抜き、引くときに力を入れて研ぎましょう。
両面にかえりが出れば、両刃ともしっかり研げた証拠です。仕上げに包丁を砥石に対して90度に置き、両面のかえりを取ってください。
自分で研ぐには基本を知り、慣れるのみ
自分で包丁を研げるようになるために、まずは砥石についての基礎知識や正しい研ぎ方を知ることが大切です。砥石には用途によって種類があり、包丁によって研ぎ方のポイントが異なります。
愛用の包丁にあった砥石で、正しい研ぎ方をマスターしましょう。