お気に入りの万年筆にはこだわりのインクを使うことで、より万年筆の楽しみを広げることができます。インクの基礎知識と、各ブランドの特徴を紹介するので、インク選びの参考にしてみてください。インクが出ないときの豆知識も必見です。
万年筆のインクは大きく分けて3種類
まず、万年筆に使うインクの種類は大きく分けると3種類があります。
- 染料インク
- 顔料インク
- 古典インク
上記の3種類はそれぞれの特徴があり、色合いや使い勝手も変わってきます。自身の用途や好みに合うインクが選べるようにそれぞれの特徴をチェックしてみましょう。
使いやすくビギナーにおすすめの染料インク
染料インクは、初心者にも扱いやすく『カラーバリエーション』も豊かな特徴があります。最初のうちはこの染料インクを選ぶと、書きやすく万年筆の世界を楽しむきっかけにもなるかもしれません。
また、インクが固まりにくいのである程度の時間使用しなかった場合でも、すぐに書き出すことができます。メンテナンスも難しくないので、まだまだ万年筆に慣れていないという人には重宝するインクです。
ただし、染料インクはその扱いやすさの反面、『耐水性・耐光性』が低くなっています。汗や水に塗れることでにじむほか、日光に長時間当ててしまうと色褪せてしまうといった特徴もあるのです。
長期保存に適する顔料インク
染料インクと比べて、耐水性と耐光性が最も高いインクが『顔料インク』です。1度乾いてしまうと水や光に強くなるので、書いた文字を長期間保存していても色褪せにくいのが特徴です。
高い耐水性と耐光性を持っていますが、万年筆のメンテナンスを怠ってしまうとインクの水分が蒸発し固まってしまいます。染料インクよりも蒸発が早いので、放置してしまうとインクが出なくなることがあるので注意しましょう。
また、衣類や布についてしまうと取れにくいこともあります。このように、扱いが少し難しい点があるので『染料インクに慣れてから顔料インク』を使う方がいいでしょう。
奥深い色味の古典インク
次に紹介するのが、奥深い色味を楽しむことができる古典インクです。古典インクも顔料インクより若干低いながら耐水性と耐光性に優れており、書いた文字を長期保存することができます。
そして、最大の特徴が『書いた文字の色の変化を楽しめる』点です。古典インクを使い書いた文字は、最初はとても鮮やかな色合いがあります。しかし、書いてから時間が経つと『黒く色が変わっていく』のです。
書いたときとは違った深い色味に変わっていくことから、万年筆で書いた文字の魅力を最大限に引き出してくれるインクと言えます。
これら3つのインクの種類から、自分にあったインクを選んで『文字を書く』ということを楽しめるのが万年筆の魅力なのです。
インクの入れ方
インクを選んだら、次に考えるのが『インクの入れ方』です。インクの入れ方は、使っている万年筆によって違います。吸入式・コンバーター式・インクカードリッジ式の3種類のどのタイプなのかを確認して行うようにしましょう。
吸入式の万年筆の場合
まず、吸入式の万年筆の場合は、ボトルタイプのインクを用意します。万年筆の吸入ネジを回して開いて、ボトルインクにペン先をしっかりと浸けましょう。ペン先がしっかりと浸かったら、吸入ネジを回して閉めることでインクを吸い上げて補充ができます。
このとき、ペン先に付いてしまったインクは軽く柔らかい布で拭き取っておきましょう。そのまま放置すると固まってしまうので、インクが出なくなることがあります。ティッシュを使うと、ティッシュのかけらが入り込むので『布』がおすすめです。
コンバーターを使うタイプの場合
次に、コンバーター式の万年筆の場合は、ペン先を外してコンバーターに付いている吸入ネジを回して開いていきます。吸入式と同じようにボトルインクにペン先を浸けてから吸入ネジを閉めれば、補充ができます。
また、サイズによってはコンバーターを外してインクカートリッジを入れるインクカートリッジ式でのインク交換も可能な場合もあります。その場合、外したコンバーターは無くさないように掃除して持っておきましょう。
インクカートリッジの場合
インクカートリッジ式の場合には、ペン先を外してインクカートリッジの交換を行います。対応しているインクカートリッジを、ペン先を上に向けて真っすぐ押し込んで交換していきましょう。
このときに入りにくいからと回しながら交換しないようにしてください。ペン先の内側を傷つけてしまうため、故障の原因になってしまいます。プチッと穴の開く感覚がするまで押し込めばOKです。
インクのトラブル解決法
新しい万年筆を買ったときや、インク交換・補充をしたときにどうしても起きてしまうトラブルが『インクが出ない』ことと『インク漏れ』です。どちらもよく起きるトラブルなので対処法を覚えておきましょう。
新しい万年筆のインクが出ないとき
新しい万年筆でも特にカートリッジ式ではインクが出ないことがあります。これは、ペン先にインクが届いていないことで起きているので、ペン先までインクを送ってあげましょう。
吸引式では、空気が入り込んでいることもあるので『しっかりとペン先を浸けて』インクを全て入れ替えます。カートリッジ式の場合は、ペン先を柔らかい布で覆い軽く振ると、ペン先までインクを送ることができます。
また、インクカードリッジの真ん中を軽く押してあげてもインクを送ることができます。どの方法も、インクで手や周りを汚さないようにペン先を柔らかい布で保護してから行ってください。
【関連記事】万年筆のインクが出ないときの対処法。セルフケアでペン先を綺麗に
インクが出過ぎるとき
インクが出過ぎるときには、使っているインクの種類を検討してみましょう。例えば、書いている文字がにじんでしまうなら染料インクから顔料インクに変えることでにじみを抑えることができます。
インクは水のようなものなので、粘度によってもにじみ方が変わります。さらさらよりも少しドロドロしたテクスチャーのものを選ぶとにじみにくくなるのです。
また、書いている紙にも注目してみてください。紙にも材質があり、荒い材質のものはインクを多く吸い込んでにじみます。上質紙のような細かい材質のものに変えるだけでも、裏抜けやにじみが少なくなるので試してみましょう。
インク漏れするとき
インク漏れするときには、内部の故障やインクの固まりをチェックします。ペン先や、芯の中でインクが固まっているときにはインクが押し出されて漏れることがあります。また、内部のどこかに損傷があると、そこからインクが漏れるため『修理』しましょう。
万年筆はとてもデリケートな筆記具です。ペンケースに他のペンと入れて衝撃が加わるだけでもインクが押し出されて漏れてしまいます。気圧の変化で押し出されることや、結露によってキャップ内の水分が呼び水の役割をしてインク漏れを起こしてしまうこともあるのです。
インク漏れのチェックは、普通に文字を書いていて手にまでインクが付くかどうかで判断してみましょう。ペン先に付く程度は、万年筆の特性なので柔らかい布で拭き取るなどの対処で問題ありません。
【関連記事】万年筆のインク漏れの原因とは。万年筆を長く使い続けるための基礎知識
パイロットのインク
ここまでインクの種類と入れ方、トラブルを説明してきました。そこで、次は実際に販売されているインクをチェックしてみましょう。メーカーそれぞれに特徴のあるインクが販売されているので、見ているだけでも楽しみが広がります。
まずは、代表的な日本のブランド『パイロット』から紹介します。パイロットでは、日本の美しい情景をモチーフに作られた全24色の『色彩雫(いろしずく)』が販売されています。長年の研究を続けてきたパイロットだからこそのシリーズをみてみましょう。
カラーバリエーション豊富な色彩雫
美しい日本の自然や景色をイメージして作られた『色彩雫』は、それぞれモチーフとなった情景の名前が付けられたお洒落な染料インクです。特徴のあるインクのカラーは、深みのある色合いで初心者でも扱いやすく、多くの人から愛されています。
温かみのある黒 竹炭
マイルドな色合いの黒を楽しめるのが『竹炭』です。温かみのあるマットな黒なので、シーンを選ばずに使うことができます。赤茶色が垣間見えるその黒は、竹炭をそのまま想像させるほどの味わい豊かな黒です。
- 商品名:パイロット 万年筆インキ iroshizuku INK-50-TAK タケスミ
- 価格:1461円
- amazon:商品ページ
鮮やかなオレンジ 冬柿
やや透明感のあるインクから想像ができないほど綺麗な発色で人気なのが冬柿のカラーです。温かみを感じるオレンジ色なので、名前通りの季節感を感じることができます。
- 商品名:パイロット 万年筆インキ iroshizuku INK-50-FG フユガキ
- 価格:1470円
- amazon:商品ページ
ブルー系インクの違いを楽しもう
ブルー系のインクでは、それぞれ違った色合いで分けられており一言で『青』と言っても表情の移り変わりのような個性を持っています。中でも人気の『月夜』では、引き込まれるダークトーンの青が広がる中、所々見える明るい色が月の光のように楽しめるのが特徴的なカラーです。
1色のインクを購入しても、いくつもの色合いを魅せてくれる色彩雫は、初心者でもまずは使ってほしい魅力が詰まったシリーズなのです。
- 商品名:パイロット 万年筆インキ iroshizuku INK-50-TY ツキヨ
- 価格:1401円
- amazon:商品ページ
【関連記事】万年筆のインクとパイロットの特徴。定番色から色彩雫シリーズまで
モンブランのインク
海外ブランドの高級ブランド『モンブラン』は、幅広い万年筆からインクまで取り揃えられています。アフターサービスも充実しており、万年筆人生の最初から最後までモンブランのお世話になっているという人も少なくないブランドです。
ミステリーブラック
モンブランが取り扱っているインクの中でも、特に人気なのが『ミステリーブラック』の黒インクです。速乾性に優れていることで、にじみにくいのも人気の秘密となっています。インクフローも申し分ないので、モンブランというブランドの高品質を納得する仕上がりです。
やや赤色がかった独特な黒色が魅力
ミステリーブラックと名前が付いているだけあって、普通の黒とは違います。『やや赤みのかかった色合い』が特徴の黒インクです。濃淡も味わい深く、書かれた文字からはチャコールグレーのような発色や、深い紫も見つけることができるので楽しみのあるカラーで人気があります。
- 商品名:MONTBLANC モンブラン 万年筆 インク ミステリーブラック 黒 60ml 正規輸入品 ボトルインク MB105190
- 価格:2111円
- amazon:商品ページ
ミッドナイトブルー
モンブランでもう1つ人気のカラーが『ミッドナイトブルー』です。黒にとても近い青いカラーが特徴のミッドナイトブルーは、耐水性と耐光性にも優れているので使い勝手からも人気を集めています。
シックなブルーブラックインク
色合いは、シックなブルーブラックなので派手すぎないためビジネスシーンでも使うことができます。また、インクフローが渋めでにじみにくく、カスレも少ないので書きやすさからも定評があるインクです。
- 商品名:MONTBLANC モンブラン 万年筆 インク ミッドナイトブルー 青 60ml 正規輸入品 ボトルインク MB109204
- 価格:2127円
- amazon:商品ページ
セーラーのインク
国内ブランドで安定の高品質で人気なのが『セーラー』です。独自開発による超微粒子顔料インクは、目詰まりしにくく、染料インクと変わらない快適な書き心地を実現しています。
真っ黒のインク 極黒
水に強く、にじみにくい黒を極めたインクが『極黒(きわぐろ)』です。超微粒子なので裏抜けもしにくく、速乾性もあるのでビジネスシーンでも活躍します。ボトルタイプとカートリッジタイプの2種類があるので、使っている万年筆に合わせられるのもポイントです。
- 商品名:セーラー万年筆 万年筆 顔料ボトルインク 50ml 極黒 13-2002-220
- 価格:1536円
- amazon:商品ページ
イラスト描きにも最適なSTORiA
同じように超微粒子顔料インクで作られているシリーズが『STORiA(ストーリア)』です。顔料インクでは珍しいカラーバリエーションが8色展開で、色味が選びやすくイラストにも最適のインクに仕上がっています。
速乾性と発色は、存在感のある綺麗な色合いを万年筆で楽しむことができるとデザイナーや漫画家の人たちも愛用しているインクです。
- 商品名:セーラー万年筆 万年筆 顔料ボトルインク ストーリア 30ml ブルー 131502240
- 価格:958円
- amazon:商品ページ
好みの色に調合してくれるイベントも
『セーラー万年筆』では、好みの色に調合してくれるイベントが行われていることもあります。インク工房と呼ばれる場所で、1人1本まで自分の好みの色作りを楽しむことができるイベントです。
万年筆のインクをブレンドしてお好みの色を調合してもらえるイベントは、現時点で詳細が確定している日程が公式サイトで掲載されているのでチェックしてみましょう。
ペリカンのインク
ペリカンは、伝統を守り洗練されたデザインの製品を作り出しているブランドです。インクでは、細部までこだわった色合いや書き心地のものが豊富に取り揃えられているため、用途に合わせて目的のインクを選ぶことができます。
高級感と快適な描き心地 エーデルシュタイン
ペリカンの高品質なインクの中でも注目したいのが、高級感と快適な書き心地を実現したエーデルシュタイン・インクコレクションです。宝石をテーマとして『オニキス・サファイア・トパーズ(青)・タンザナイト・ジェード・アベンチュリン・マンダリン』など15色から選ぶことができます。
見た目のデザインにもこだわりがあり、プレゼント用に購入する人もいるほど注目を集めています。
鮮やかな緑で文字を彩る アヴェンチュリン
中でも人気のカラーが、鮮やかな緑で文字を彩り『爽やかな色合い』を感じることができる『アヴェンチュリン』です。インド翡翠と言われる5月の誕生石のグリーンアヴェンチュリンは、素直さ・優しさという意味を持っています。
発色が鮮やかな緑で、ちょっとしたメモに書き込んだだけでも1度その色合いを見れば特別な印象を受けると注目されています。
- 商品名:ペリカン 万年筆 ボトルインク アヴェンチュリン エーデルシュタイン 正規輸入品
- 価格:2204円
- amazon:商品ページ
書き心地や色合いの違いを楽しもう
万年筆のインクはその書き心地や色合いの違いを楽しめることから、万年筆を使っている人の心を掴んで離さないものです。初心者の人は染料インクを、中級者からは顔料インクや古典インクでその色合いの奥深さを体験してみましょう。
インクを変えることでさまざまな表情を見せてくれる万年筆の世界を大人の嗜みとして愉しんでみてはいかがでしょうか。
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