将棋の対局で扇子を持つ理由とは。エピソードや揮毫について解説

2018.12.28

将棋の対局で扇子を持つ理由や選び方を、プロの対局で起きたエピソードと共に紹介します。また、扇子を使うためにマナーも忘れずに覚えておきましょう。扇子に揮毫された言葉や、込められた思いを知ると楽しみも深まるので参考にしてみてください。

将棋と扇子

将棋を指しているプロの対局を見てみると、扇子を手にしている姿を見かけます。和の雰囲気とぴったり調和した扇子ですが、なぜ持っているのでしょうか。そこには、扇子だからこそのメリットがあるのです。

まずは、扇子を持っている理由をチェックしてみましょう。

扇子を持っている棋士はなぜ多いのか

囲碁の世界でも見かけることのある扇子を、棋士はどうして持っているのでしょうか。

これは、将棋を指しているときの頭の熱を下げるために使われていると言われています。熱くなってしまったら、冷静に局面を見ることができません。そこで、扇子を使ってクールダウンをすると、より冷静に1手を見極めることができます。

他にも、扇子を開いたり・閉じたりをすることでリズムを取っている人もいます。また、空いた手に扇子を持っていることで、長時間座っている苦痛を少しでも和らげるという使い方もできるようです。

プロの対局を見ていると、考慮中に口元を隠すときや、表情を相手に見せないようにする、または飾りとして置いておくなどさまざまな使われ方がされています。長時間座る対局での苦痛やストレスを和らげて、ゆっくりと対局を楽しむためにも活用してみましょう。

扇子の使い方、マナー

扇子を使うときには、マナーを守って使わなくてはいけません。大きな素振りでバタバタと使ってしまうと、集中している相手にとって良くないものです。

扇子を使って扇ぐときには、胸元より低い位置から自分の顔に向けて静かに扇ぐようにしてみましょう。横からバタバタと扇ぐと、周りの人に風が当たってしまいマナー違反です。

棋士が扇子に揮毫することがある

棋士にとって重要なアイテムである扇子は、揮毫されて彩られているケースがあります。揮毫されている文字や絵柄などは、棋士によって違います。どのような扇子なのかをチェックしてみるのも良いでしょう。

揮毫とは

まず、揮毫とは筆で文字や柄を描くことです。棋士にサインを求めるときにも、この揮毫という言葉が使われ『色紙や扇子に揮毫してもらう』という言い方が使われます。

揮毫を依頼するときは白扇がよく使われる

揮毫を依頼するときには、白い色紙が使われることもありますが、最も多いのが『白扇』です。文字が書きやすく丈夫に作られているので、寄せ書きなどの用途にも使える扇子です。

棋士に頼んで白扇へ揮毫してもらう文字は、棋士によって違うので楽しみの1つとも言えます。どのような言葉を選んでいるのか、言葉の意味は何があるのかをチェックしてみるのもおすすめです。

次は、揮毫をしてもらう『言葉』を紹介します。どんな言葉が使われているのか見てみましょう。

人気棋士 羽生三冠がよく揮毫に選ぶ言葉

人気の棋士、羽生三冠がよく揮毫に選ぶのが『玲瓏(れいろう)』です。玲瓏とは、玉などが透き通るように美しい様子や、玉などが触れ合って美しく鳴る様子などの意味を持っています。

羽生三冠の指して残した手筋の綺麗な棋譜が自分でも残せるようにと、羽生棋士のファンの多くが愛用している扇子にも揮毫されています。

他にもこんな言葉が選ばれている

羽生棋士以外の揮毫にも目を向けてみましょう。例えば、独創性のある差し回しで人気の佐藤康光棋士が選んでいるのが『天衣無縫(てんいむほう)』という言葉です。

天衣無縫とは、自然であり完全無欠で美しいという意味があります。また、天真爛漫の様子を天衣無縫と呼ぶこともあり『独創性のある差し回し』の様子が選んだ言葉からも感じ取ることができます。

他にも、千駄ヶ谷の受け師のキャッチコピーで知られている、木村一基棋士が好んで揮毫しているのが『百折不撓(ひゃくせつふとう)』です。この言葉は、何度失敗しても志を曲げないという意味があります。

このように自分のスタイルが色濃く出ているものや、信念を言葉に表したものなど、棋士ごとの特徴が出てくるのが揮毫している言葉なのです。

揮毫された扇子を手に入れるのは困難?

有名な棋士や注目されている棋士が揮毫した扇子が販売されることも少なくありません。しかしその多くは、その人気からすぐに完売してしまうことも多いのです。転売の問題などもある、揮毫の扇子の売買についてご紹介します。

人気の棋士が揮毫した扇子は抽選販売に

2018年5月に販売された『藤井聡太棋士の専心と揮毫された扇子』が、販売開始から多くの購入者がでたことで抽選販売になったケースがあります。藤井棋士が七段への昇格戦を控えていたこともあり、最後になるかもしれない『六段の記載がある扇子』は多くのファンの注目を集めました。

藤井棋士は、四段のころにも扇子が即完売になるほどに購入者が多くいることでも知られています。他の棋士でも、扇子は即日完売になることもある人気アイテムと言えるのです。

ネットで値段が高騰し、転売問題も

人気の棋士の扇子の多くは、すぐに完売してしまうため『ネットでも高値』で取引されています。しかし、その背景には『転売』を目的として購入したケースもあり注意喚起が行われています。

希少な材料を使って作られた扇子は、多くを用意できないため、『転売』目的での購入は問題です。ファンの人のためを思って販売しているものなので、転売目的の購入は注意のほか、キャンセルなどの対応がされています。

対局中、扇子でトラブルが発生した事例

扇子のマナーについては、対局中にトラブルが発生したこともあります。2007年の名人戦では、扇子の音に関して話し合いが行われました。どのようなトラブルだったのかを確認してみましょう。

扇子の音がうるさいと対局が中断

対局では、扇子を持ち込むことも少なくはありません。相手が考えているとき、自分が長考しているときなどついつい扇子でリズムをとってしまう人もいます。このトラブルでは、この扇子でリズムを取る『音がうるさい』として話し合いの時間が設けられました。

本来であれば、扇子の音は気にならない程度のものです。しかし、人によっては『扇子の音が耳障り』ということもあり、注意が必要です。

2007年、名人戦にて

扇子の音がうるさいと対局が中断してしまったのが、2007年に行われた名人戦でした。森内俊之名人と郷田真隆九段の対局では、郷田棋士が扇子を持ち込んでリズムを刻んでいました。

対局前では、森内棋士が扇子の音を控えて欲しいとじかに掛け合い、1度は了承しました。しかし、対局中『許容範囲ではないのか』と感じた郷田棋士は、掛け合いの10分後に立会人を含めて話し合いがしたいと申し出たのです。

その結果、立会人は記録係の時計を止めて『別室』に移動し、対局者・立会人・関係者で協議が行われ、森内棋士の手番では扇子の音に配慮するということで決着したのです。

紹介したトラブルは稀なケースですが、扇子の音も雑音と感じてしまうケースがあるので注意しておくようにしましょう。

粋な扇子を持とう

扇子を持つのであれば、お洒落なものでありながら長く愛用できるものを持ちたいものです。そこで、扇子の選び方やおすすめの扇子を紹介します。参考にして扇子選びからこだわってみましょう。

対局で持つ扇子はどんなものがおすすめ?

扇子は元々、位の高い人が顔を隠すためにアクセサリーとして使われていたのが始まりと言われているアイテムです。棋士が持つようになったのは、指揮をするときの軍配の残りでは、と言われています。

将棋でも扇子は、そこまで大きな意味を持っていませんが、せっかく持つなら良い扇子を探してみるというのもおすすめです。扇子を購入するときには、色・柄や作りなどをしっかりと見て選ぶようにしていきます。

良い扇子と色の選び方

まず、良い扇子を探すためにも『作り』を見ていきましょう。まず、閉じた扇子を正面から見たときに『全体的に左右対称』なのかを確認します。次に、綴られている紙が『平ら』かどうかを見てみて、真っすぐなものは熟練の職人が作った扇子です。

他にも、素材に使われている竹にもこだわっているという人もいます。滋賀や岐阜といった琵琶湖周辺の竹が使われているものは、扇子に最適な丈夫さやしなやかさがあるので人気があります。

扇子の色の選び方は、自分の好みのものを選ぶというのが一番です。無地にこだわる必要はありません。ただし、あまりに派手すぎるものはマナー違反になることもあるので注意しておきましょう。

プレゼントや自分用にも。通販可能な揮毫入り扇子

実際に販売されている扇子を見てみるのも、扇子選びの参考にはおすすめです。例えば、日本将棋連盟の公式ショップでは『プレゼント用・自分用』などのさまざまなジャンルの扇子が取り扱いされています。

そのままショップで購入できるので、通販で好みのものを選ぶのも楽しみ方の1つです。公式ショップだからこその揮毫入り扇子などもあるので、1度はチェックしておきましょう。

棋士直筆の文字が印刷された扇子

中でも人気なのが、棋士直筆の文字が印刷された扇子です。売り切れになることも多い注目の扇子で、自分が応援している棋士の扇子を購入するというのも良いものです。

揮毫が印刷された扇子の価格は1500円から3000円程度なので、そこまで高くありません。揮毫に関係なく、扇子は高いものでも5000円前後までなので、手軽に購入できるのもうれしいものです。

将棋ファンなら1つは持っておきたいアイテム

将棋ファンなら1つは持っておきたい粋なアイテムの扇子は、個性を出すのにも便利なアイテムです。応援している棋士のものを選ぶほか、自分が好みのものを使うというのも楽しめます。

扇子を使うときには必ずマナーを守って、将棋の世界を堪能しましょう。

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