落語協会と落語芸術協会を解説。それぞれの特色や人気の企画に注目

2018.12.16

落語家にはそれぞれ所属している団体があり、所属先によって出演できる寄席や活動が変わります。団体についての知識があると、落語家の応援もしやすくなります。関東の落語家の多くが所属する、2つの団体について特色や活動内容などを解説します。

落語家の所属団体の種類と寄席の関係

落語を見ようと演芸場の番組表をチェックしても、好きな落語家が出演する気配がまるでないことがあります。実は都内に4カ所ある定席と呼ばれる演芸場は、特定の団体に所属している落語家だけが、出演できることになっています。

定席に出演できない落語家は、ほかの演芸場やホールを使って活動しています。このため、お目当ての落語家の公演予定を知りたいときは、まず所属する団体を調べる必要があるのです。

最初に落語団体の種類と、定席の出演条件を紹介します。

大きく分けて5つの団体が存在

落語界には現在以下の5つの団体があり、ほとんどの落語家はこの中の1つに所属しています。上方落語協会は関西を拠点に活動する落語家の団体で、ほかの4つは東京で活動する落語家の団体です。

  • 落語協会
  • 落語芸術協会
  • 落語立川流
  • 五代目円楽一門会
  • 上方落語協会

定席の演芸場に出演する条件

現在東京には、鈴本演芸場(上野)、浅草演芸ホール、新宿末廣(すえひろ)亭、池袋演芸場の4つの定席があります。落語協会に所属している落語家は、この定席すべてに出演可能です。

また、落語芸術協会は、鈴本演芸場を除く3つの定席に出演できることになっています。落語立川流と五代目円楽一門会所属の落語家は、ゲストとして呼ばれる場合を除いて定席には出演できません。

落語協会とは

落語協会は、東京にある4団体の中でもっとも所属する落語家が多い団体です。歴史も古く、主に古典落語の継承を活動内容としてかかげています。落語協会の歴史と特徴をみていきましょう。

東京落語協会から落語協会へ

1923年に発足した落語協会は、その後『東京落語協会』と『日本芸術協会』に分裂していましたが、第二次世界大戦参戦を前に国の管轄下に置かれ、『講談落語協会』となります。このときは、落語家は全員この団体に所属させられていました。

戦後、講談落語協会は解散し、元の2団体に戻ります。1946年、東京落語協会は4代目柳家小さんが会長となり、『落語協会』として新たにスタートします。1977年に社団法人の認可を受けて、一般社団法人落語協会となりました。

古典落語を軸にしている

落語協会は、もともと古典落語(江戸時代~明治時代に作られた落語)に力を入れていました。現在も古典落語が得意な落語家が多く所属し、『古典落語の継承及び研究発表会』という活動も行っています。

世間的にも落語協会は古典落語をメインにした団体という認識が強く、『古典の協会、新作の芸協(落語芸術協会のこと)』とも言われています。

林家こん平や春風亭小朝などが所属

落語協会の所属落語家には、テレビ番組『笑点』の『チャラーン』で有名な林家こん平や、笑点メンバーの林家たい平、テレビドラマやCMにも多く出演している春風亭小朝などがいます。

落語協会は4つの定席のどこかで必ず公演していますので、観覧のチャンスもたくさんあります。

落語協会注目の企画

落語協会では主に定席、各地の演芸場やホール、学校などで公演活動を行っているほか、落語の普及や人気向上に重点を置いた特別企画を開催しています。落語の新しい一面が見られる、注目の企画を紹介します。

湯島天神で開催の感謝デー 落語協会謝楽祭

2015年から毎年9月に東京の湯島天神で開催されている『謝楽祭』は、落語家がファンをおもてなしする、ファン感謝デーです。この日限定の特別寄席や出し物、芸人が営業する屋台など、お祭り気分で参加できるイベントです。

入場は無料で、有料の寄席も通常よりお得な料金で見ることができます。普段高座でしか見ることができない有名な落語家と、握手したり写真を撮ったりすることができ、とても身近に感じられます。限定グッズの販売や富くじもあって、1日中楽しめますよ。

例年、人気落語家も出演 新作台本まつり

『新作台本まつり』は池袋演芸場で、毎年3月21日から30日の下席(月の下旬に行われる寄席)に開催される日替わり企画です。落語協会主催の台本コンクールの入賞作品を、協会所属の落語家が実演します。

新作を聞くのは落語の楽しみの1つでもありますし、入賞作品を人気の落語家が自分なりにアレンジしながら熱演する様子も、興味深く見ることができます。

落語協会分裂騒動

ここからは東京の落語団体の現状を知るうえで避けて通れない、真打昇進にまつわる『落語協会分裂騒動』について解説します。今から40年前、落語協会は重大な局面を迎えます。

落語ブームで入門者が増えたことから、1度に多数の真打(しんうち)昇進を進めたい会長と、それに反対する顧問との対立が起きます。それが発端となり、有力な落語家とその弟子が相次いで協会を脱退してしまいます。

脱退した落語家は弟子を率いて新しい団体を結成したため、現在東京には4つもの団体が存在することになったのです。

円楽一門が落語協会から脱退

真打は落語家の階級の最高位です。真打に昇進できれば、ひとまず落語家として成功したことになります。落語協会では毎年春と秋の2回、1~2人程度を真打に昇進させていましたが、ある時期入門者が急増し、この調子では何年経っても真打になれない落語家がたくさん出ることが、懸念されるようになりました。

このため1972年、会長の柳家小さんは春秋合わせて20人を一気に昇進させることを決めます。しかし当時顧問だった三遊亭円生は、昇進は実力をみて決めるべきと反対意見を唱えます。

このときの対立は一旦おさまりますが、6年後再び10人の真打昇進が決まると、円生は落語協会を脱退することを決意します。弟子の円楽や、円生の意見に賛同した古今亭志ん朝などが加わって、新しい団体『落語三遊協会』を立ち上げました。そこから紆余曲折を経て、現在の『五代目円楽一門会』が結成されることになります。

一連を赤裸々に綴った 師匠、御乱心

この一連の分裂騒動については、円生の弟子である三遊亭円丈が『御乱心』という本を出版し、一門の内情を赤裸々に綴って大変話題になりました。そして分裂騒動から40年を迎える2018年3月、『師匠、御乱心!』と改題した文庫版が発行され、再び話題となっています。

巻末には騒動の後日談と、著者の円丈、6代目三遊亭円楽、円生に弟子入りを断られたことがある三遊亭小遊三が、騒動について当時の心境などを語った『三遊鼎談(ていだん)』が収録されています。

『御乱心』を読んだことがある方にも、騒動について知らなかった方にとっても、大変興味深い1冊となっています。

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落語立川流も騒動の影響を受けて誕生

さらに1983年、小さんの弟子だった立川談志が落語協会を脱退します。先の分裂騒動後、協会が導入した真打昇進試験で談志の弟子が落ちたことが不満だったためです。

もともと落語協会の保守的な体質を危惧していた談志は、弟子と共に『落語立川流』を結成します。脱退したことで定席には出られなくなりましたが、ホールなどを中心とした独自の活動を続けます。

談志が亡くなった現在は、志の輔や談春、志らくなどの弟子たちが、その遺志を継いで活躍しています。

落語芸術協会とは

次に、2番目に大きな団体である『落語芸術協会』についてみていきましょう。こちらは笑点の司会で人気があった桂歌丸が、長く会長を務めたことでも知られています。

三遊亭小遊三や春風亭昇太など、落語をあまり知らない人でも顔を知っているような有名落語家がたくさん所属している団体です。

発足の歴史

落語芸術協会の前身は、1930年に落語協会から分かれてできた『日本芸術協会』です。現在の落語協会と同じく、戦前に一度講談落語協会となり戦後に復活、1977年に落語芸術協会と名を改めます。

2011年には公益社団法人落語芸術協会となり、現在まで続いています。落語協会とは対照的に新作落語を多く扱い、上方落語家も所属しているのが特徴です。

新作落語を多く扱う

新作落語とは、大正時代以降に創作された落語のことです。江戸時代から語り継がれる作者のわからない古典落語と異なり、落語家自身がオリジナルの台本を作って演じます。このため時事ネタを多く取り入れるなど、親しみやすい内容となっています。

落語芸術協会にはこのような新作派の落語家や、テレビなどでタレントとして活躍する、大衆的な落語家が多く所属しています。

毎年10月に開催される芸協らくごまつり

落語芸術協会では毎年10月に、西新宿の会場で『芸協らくごまつり』を開催しています。落語協会の謝楽祭と同じく、ファン感謝デーとなっていて、特別寄席や歌合戦、人生相談コーナーから抽選会まで盛りだくさんの内容です。

2018年は9月30日に開催され、故桂歌丸の衣装などを展示したミュージアムや、追悼コーナーも設置され大勢のファンが訪れました。ちなみに2019年の芸協らくごまつりは、5月に開催されることが決まっています。

所属落語家へのファンレターの送り方

落語芸術協会所属の落語家に応援のメッセージを伝えたいときは、協会の事務局宛てにプレゼントやファンレターを送ることができます。

『公益社団法人落語芸術協会 ○○○○(落語家の名前)宛』と書いて送れば、本人に渡してもらえます。ただしすぐに渡せるとは限らないので、生花や生ものは送らないようにしましょう。

落語家をサポートする大切な柱

落語団体は、公演のスケジュール調整からファンとの交流まで、落語家の活動すべてをサポートする大切な柱のような存在です。

所属する落語家と共に、江戸時代から続く落語の伝統を正しく受け継ぎ、新しい世代へ伝えていく役割も担っています。分裂したり、活動範囲が違ったり、いろいろあってもその思いは共通です。

それぞれの団体の特徴を理解して、寄席やイベントに積極的に通ってみてくださいね。

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