マルクス経済学ってどんなもの?『資本論』を中心にわかりやすく解説

2019.12.04

マルクスが資本主義を攻撃して、その後ソ連や中国などの社会主義国が誕生した、こうした歴史の流れはご存じの方も多いと思います。では、マルクスは具体的に資本主義をどのように捉え、どう批判したのか?彼の理論をつっこんで見てみましょう。

『資本論』で資本主義を分析する

まずマルクスは資本主義を攻撃する前に、資本主義とは何かを詳細に分析しました。

資本主義が広まりはじめた時代

カール・マルクス(1818-1883)の生きた時代、すでに資本主義はヨーロッパに浸透しはじめ、やがて世界をも飲みこもうとしていました。多くの人々が労働者となって低賃金で暮らし、反対に金持ちはますます金持ちになっていく。市場には商品があふれ、反対に人は市民社会から疎外されていっている……。

いったいこの資本主義とは何なのだろう?マルクスの思想は、こうした実感と痛切な疑問から生まれました。その結実が、有名な『資本論』です。

『資本論』の最初は商品の考察から

『資本論』はまず、商品について考察するところからスタートします。なぜなら資本主義社会では、富は商品というかたちで現れるからです。

商品には、使用価値と交換価値という2つの価値があります。ではこうした商品の価値を生み出すものは何か。マルクスによれば、それは商品をつくるための労働の量です。たとえば靴1足をつくるのに社会全体で平均3時間かかるなら、その3時間という労働時間が靴1足の価値になります。こうした考え方は「労働価値説」と呼ばれます。

マルクス経済学のかなめ「剰余価値」

ところで、労働力それ自体もひとつの商品です。この労働力という概念を使って労使関係を分析したところに、マルクス経済学のミソがあります。

賃金と労働力だけは等価交換じゃない

資本主義とはおおざっぱにいえば、資本家が労働者に「賃金」という商品を払い、代わりに労働者は自分の「労働力」という商品を払う仕組みです。この商品の交換だけは、ほかの場合とちがって、等価交換になっていません。

つまり、資本家が払う「賃金」よりも、労働者が払う「労働力」のほうが、つねに価値が高いのです。たとえば日当1万円をもらう労働者はつねに、1万円分よりも多い労働力を提供しています。そうでなければ、怠け者のその労働者はすぐクビになります。

労働者はつねに搾取されつづける

よって、資本家はつねに労働力-賃金=余った価値、つまり儲けを手にするのです。たとえばあなたが会社から月給20万円をもらっていて、あなたは労働力として25万円の価値を今月生み出したとします。すると、会社のオーナーはあなた一人につき5万円分の儲けを得ることになります。

こうした剰余価値は、つねに資本家のほうに蓄積されていきます。逆に労働者はつねに搾取されつづけます。マルクスが指摘したのは、資本家と労働者のこのような不平等な関係でした。

そしてマルクス主義へ

マルクスはこうした不平等を指摘するだけでなく、だからこそこの社会を変えなければならないと訴えました。こうした実践性こそが、マルクス主義の核心です。

史的唯物論

マルクスは資本主義打倒を正当化するために、人間の社会および歴史には法則があると主張しました。

社会の法則とは、経済の生産力こそがすべての土台だとするものです。つまりその社会の生産力によって狩猟採集社会か農耕牧畜社会か工業社会かが決まり、そうした生産形態によって法律も政治も規定され、さらには文化や人の考え方さえ規定されるとしました。

また歴史の法則とは、階級闘争が人の歴史だというものです。つまり生産力がマックスまで上がると、生産関係に矛盾が生まれ、そこから階級闘争によって次の段階に発展するとしました。

マルクスのこの世界観は「史的唯物論」などと呼ばれます。

「共産党宣言」

この考え方にたてば、人間社会の歴史とは、専制vs.奴隷、封建制vs.農奴、そして資本家vs.労働者という段階で進んできたことになります。

いま世界は資本家(ブルジョワ)vs.労働者(プロレタリア)という段階を迎えている、この段階もまた、階級闘争によって乗り越えられるべきステップにすぎない、資本主義の矛盾はそこかしこに現れている、万国のプロレタリアよ、団結せよ……。

こうしてマルクスは共産主義への移行を訴えたのでした。

『資本論』は今なお色あせない

21世紀の現代、マルクス主義が失敗に終わった一方で、マルクスの『資本論』は再評価されはじめています。それは資本主義が世界中を覆い尽くしますます拡大しつつあるなか、資本家による労働者の搾取を多くの人が実感しているからでしょう。

資本主義とは何か。資本主義の問題点はどこにあるのか。こうした疑問をいち早く検討し、詳細に分析してみせたマルクスの『資本論』。出版から150年以上経ったいまも、色あせない古典です。

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