プラグマティズムとは何か?思想が生まれた背景から思想家まで簡単に解説

2019.12.03

「実用主義」とも訳されるプラグマティズム。どんな思想で、どんな歴史があるのでしょう。現代アメリカ人の考え方の基礎をなすプラグマティズム、その内容と歴史を、パースやジェームズ、デューイといった哲学者の考え方とともに振り返ります。

現代哲学のひとつプラグマティズムって?

まずプラグマティズムとはそもそもどんな思想なのでしょうか。

プラグマティズムとは効果から考えること

プラグマティズムは一言でいうと、効果や結果を重視する考え方です。

たとえば「神はいるか、いるとすればどんな存在か」というのは宗教や哲学において昔から重要なテーマでした。だからいろんな観念的な議論が為されてきました。しかしプラグマティズムでは、神を信じること・信じないことによる効果から逆に神を定義します。

神を信じることで謙虚になる、来世を信じるようになる。あるいは神を信じないことで絶望する、科学のほうを信じる……。神とはそんな効果をもたらす概念である、この定義で必要十分だとするのがプラグマティズムになります。

発祥は19世紀後半のアメリカ

つまりプラグマティズムとは、観念的なおしゃべりはやめよう、効果や結果に表れないものをあれこれ論じても意味ないじゃないかという主張です。真理をたんなる道具とみなす思想ともいえます。

こうした考え方が出てきたのは、19世紀後半のアメリカでした。南北戦争が終わり、大量の移民が押しよせ、さまざまな背景をもった人たちが国内にひしめく時代。またダーウィンの進化論をはじめ科学の発展が人々にも知れわたりはじめた時代。こうした時代に対応する思想として、プラグマティズムは登場したのです。

プラグマティズムの格率とパース

プラグマティズムのはじまりは1870年代、創始者はパースと言われています。

無名のまま亡くなったパース

チャールズ・サンダース・パース(1839-1914)はアメリカの論理学者・数学者・科学者です。パースは測量技師として働くかたわら、いろんな独自研究をすすめ、また後述するジェームズたちと私的なクラブをつくって哲学を論じあいました。

パースは生前はまったく認められず、貧困のうちに亡くなりましたが、記号論理学や無限論など多くの研究を残しました。なかでもプラグマティズムにとって重要なのは、最初に挙げたプラグマティズムとは何かの説明(「プラグマティズムの格率」)をしたこと、そしてアブダクション(仮説形成)という推論方法を確立したことです。

アブダクション(仮説形成)

論理的推論の方法としてよく知られているのは、演繹と帰納でしょう。演繹とは数学の証明などで使われる、仮定と規則から結論を導く方法。また帰納とは個別の観察結果をたくさん集めて一般的な規則を導く方法です。

ここにパースは第3の方法としてアブダクションを主張します。それは、結論Bがあって仮定Aを設定するとうまく説明できるからAは本当だろう、という推論方法です。たとえば落体の運動や天体運動という結果があって、万有引力の法則を仮定するとうまく説明できる、だから万有引力の法則は本当だろうという推論です。

こうしてパースは、科学の方法を科学以外にも使う道、つまりプラグマティズムを開いたのでした。

代表的な哲学者ジェームズとデューイ

パースが創始したプラグマティズムを世に広めたのは、ジェームズそしてデューイという哲学者です。

ウィリアム・ジェームズ

ウィリアム・ジェームズ(1842-1910)はアメリカの心理学者、そしてパースの友人でした。ジェームズはパースとちがい、30年以上にわたり名門ハーバード大学の教授で、「心理学の父」としても名声を博していました。

ジェームズは私的クラブでのパースとの交流を通じて、プラグマティズムの考え方を確立し、それをパースの意見として発表しつづけました。なかでも1907年に発表した『プラグマティズム』という本によって、プラグマティズムはアメリカ中に広まっていきます。

ジェームズはプラグマティズムを道徳や宗教にも応用した点でパースと異なっています。ただ、今日のプラグマティズムの理解はジェームズのものが一般的です。

ジョン・デューイ

その後プラグマティズムは大戦前後にいったん廃れます。しかし1950~1960年代頃から再評価を受け、やがてアメリカ社会の常識となっていきます。ここで再評価を受けたのがジェームズ、そしてジョン・デューイ(1859-1952)でした。

デューイはその教育理論、とりわけ「問題解決学習」で有名です。問題解決学習とは、受け身の授業ではなく、生徒が主体となる学習方法のひとつです。それはある結果を提示して、その原因や解決方法をあれこれ試行錯誤するというもの。

プラグマティズムをもとにしたこのデューイの教育理論は日本にもおおきく影響し、現代では「アクティブ・ラーニング」の一環として取り入れられています。

アメリカ企業の特徴がわかる?

以上、プラグマティズムの内容とその歴史を、パース・ジェームズ・デューイという代表的な哲学者とともに振り返りました。

プラグマティズムの特徴は2つ。経験できることだけをもとに議論しよう、そして結果や効果から考えようという点にあります。この意味でプラグマティズムはイギリス経験論や、ベンサム・ミルなどの功利主義とも通ずるところがあります。

また、売り上げという結果や広告の効果、あるいは議論の結論などを重視するアメリカ企業の特徴をつかむ上でも、プラグマティズムは知っておいて損はない思想といえます。

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