異端の思想家ジョルジュ・バタイユ。奇想の著作の内容を簡単に紹介

2019.12.02

『眼球譚』『マダム・エドワルダ』といった退廃的な小説で、知る人ぞ知る作家ジョルジュ・バタイユ。ここでは彼の思想家としての一面もふくめて、バタイユとその作品を紹介します。理性や道徳や常識に疲れてしまった人にはおすすめです。

エロスと死の作家バタイユ

まずバタイユのかんたんなプロフィールからご紹介します。

三島由紀夫もファンだった

ジョルジュ・バタイユ(1897-1962)は20世紀フランスの知識人です。税務官の家に生まれ、17歳で自主的にカトリックに入信しましたが、ニーチェの影響を受けて20代には無神論者となりました。

31歳のとき精神分析の治療のひとつとして『眼球譚』を執筆、その後は雑誌の編集長をつとめたり秘密結社をつくったりしながら数々の文章を発表しました。

ちなみに日本では三島由紀夫がバタイユの熱心な読者だったようで、三島の小説『憂国』にはバタイユの『エロティシズム』という評論と通ずるところがあります。

著作は大別すると3パターン

バタイユは小説のほかにも、政治・経済・文化・宗教などあらゆる分野の文章を残しました。ただ大別すると、それらの著作は3つのカテゴリーに分けられます。

1つは『眼球譚』などの小説。2つめは『呪われた部分』などの、人間の経済や歴史を論じたもの。そして3つめは『無神学大全』など、いわゆる神秘主義的体験を語ったものです。

これら3つすべてに共通するのが「エロスと死」というテーマ、そして理性をすばらしいとみなす態度への反抗・反逆でした。

『眼球譚』『青空』ってどんな本?

ではここから、バタイユの作品を具体的に紹介していきます。まずは小説から。彼の異端ぶりが垣間見えます。

『眼球譚』

『眼球譚』は前述したとおり、バタイユの処女短編です。オーシュ卿(直訳すると「便所神」)というペンネームで発表されました。

物語は、「私」とシモーヌという2人の少年少女が、周囲の人間も巻き込みながら、さまざまな性的倒錯の遊びをしていくというものです。内容は非常に凄惨なもので、特に眼球をめぐる異常な執着には、グロテスクというだけでない異様かつ不気味なインパクトを与えます。

この『眼球譚』は文学史上、マルキ・ド・サドと並ぶ異端作品とも呼ばれています。

『青空』(『空の青』)

『青空』(または『空の青』)は1935年、バタイユ38歳のときに書かれた小説です。

主人公のトロップマンは、既婚者でありながら3人の女性と関係をもっています。美しく奔放なダーティ、裕福で都合のいいクセニー、そして共産主義運動家で醜いラザール。スペイン内戦と戦争が近づくなか、主人公はダーティへの畏敬から不能となり……。

夢とも現実ともつかない描写、そして恍惚と死を行き来する主人公の内面が切々と迫ってくる傑作です。

『呪われた部分』『無神学大全』とは?

つづけて、バタイユの理論書も紹介します。

『呪われた部分』

『呪われた部分-普遍経済の試み』とはバタイユの経済書・歴史書です。副題のとおり、バタイユはこの本をとおして経済全体を新たな視点から捉えなおそうとしました。

キーワードは「過剰」と「蕩尽(または消尽)」です。バタイユはこう言います。生命は自分を維持するエネルギーだけでなく、過剰なエネルギーを持っている。その過剰が人間の場合、戦争やエロス、そして富の蓄積などに向かう。古代社会や未開社会では、共同体のために、そうした過剰な富を破壊的なまでに蕩尽していた、と。

よってバタイユによれば、近現代の資本家が富を蓄積しつづけることは、過剰を、つまり呪われた部分を増やしつづけていることなのです。

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『無神学大全』

『無神学大全』はバタイユのアフォリズム(格言集)です。第二次大戦中に書かれた日記をもとにした本で、「内的体験」「有罪者」「ニーチェについて」という3作品の総称となっています。

そこにはバタイユの神秘主義的な体験、自らを有罪者と宣言するような思想や行動などが見受けられます。なお、神秘主義とは「世界」と「私」という通常の区別を瞑想などによって少しずつ無くしていき、最終的に絶対的な何かへと到達するもの。新プラトン主義や密教などがこれに当たります。

常識や道徳に疲れてしまったら

以上、バタイユの4作品をかんたんに紹介しました。

エロスと死をテーマに、西洋文明の理性至上主義からこぼれ落ちたものをつきつめた作家・思想家として、バタイユは後世に多くの影響を与えました。三島由紀夫だけでなく岡本太郎にも、またミシェル・フーコーやジャック・デリダにもその影響は認められます。

世間一般の常識や社会の求める道徳に疲れてしまったとき、あるいはそこから思考をちょっと抜け出させたいと感じたとき、ジョルジュ・バタイユの作品がきっかけになってくれるかもしれません。

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