アダム・スミスの『国富論』を5分でわかりやすく解説してみる。

2020.06.18

経済学という学問分野は、1776年にアダム・スミスが出版した『国富論』(『諸国民の富』)から始まりました。『国富論』には何が書かれているのか、どこが画期的だったのか?スミスの生きた時代背景とともに、わかりやすく解説します。

アダム・スミスとはどんな人物?

まず『国富論』を書いたアダム・スミスとはどんな人物だったのか振り返りましょう。

主著は『国富論』と『道徳感情論』

アダム・スミス(1723-1790)は18世紀イギリスの学者です。大学で哲学・法学・文学を学び、道徳哲学の教授として教鞭をとった後、貴族の家庭教師として3年間ヨーロッパを旅行して、53歳から執筆活動に専念しました。

主な著作は、教授時代に書いた『道徳感情論』、そして執筆活動に入った年に書き上げた『国富論』の2つです。またスミスは哲学者ヒュームの親友であり、フランス旅行の際にはヴォルテールやケネーらとも交流しています。

産業革命が始まった時代

アダム・スミスの生きた時代はちょうど、イギリスで世界最初の産業革命が始まった時期に当たります。それは、王侯貴族をさしおいて資本家が力をつけていく時代、また市場経済がさらに大きくなっていく時代、そして農業中心社会から工業中心社会へと変わりつつあった時代でした。

つまり18世紀後半というのは、人間社会のなかで「経済」というものの占めるウェイトが一気に増大しはじめた時代なのです。これをいち早く察知して、スミスは新しい時代の経済を分析してみせました。それが『国富論』です。

分業が社会を豊かにする

ところで経済を分析するには、まず「社会の豊かさの基準」を定義する必要があります。

重商主義を批判

それまでのヨーロッパにおいて、豊かさの基準とは「貴金属や貨幣をたくさん持っていること」でした。つまり金・銀・貨幣が国庫にたくさんあるほどその国は豊かであるとされていました。この考え方を「重商主義」といいます。

しかしアダム・スミスは重商主義を批判します。重商主義では貿易黒字を増すために、輸入を抑制し輸出を奨励していましたが、そういう国家主導の政策をつづけてもムダが多いとして、段階的な規制の緩和を主張しました。

富の源泉は国民の生産活動

またアダム・スミスは、「土地をたくさん持っていること」が豊かさの基準であるという重農主義にも与しません。代わりにスミスが定義した豊かさの基準とは、「モノをたくさん持っていること」、つまり日用品やぜいたく品こそ富であるとしました。

よって富を生み出すのは、国民の生産活動です(ちなみにスミスのこの考え方は国民総生産・GDPとして現代でも活きています)。では、生産力を上げるにはどうしたらいいか?分業こそ答えだと彼はいいます。

つまり社会全体で分業体制を推し進めることで社会は豊かになる。スミスはそう予見したのです。

「神の手」「自由放任主義」とは言ってない

またアダム・スミスは市場経済の性質も分析しました。

「見えざる手」に導かれて全体の利益も増す

よくある誤解として、市場では「神の見えざる手」がはたらくので結果うまくいくとスミスが説いた、というものがあります。しかし実は、アダム・スミスは『国富論』のなかで「見えざる手」とだけしか言っていません。しかも使ったのは1回きりです。

スミスはこう言いました。人が自分の利益を求めて事業をおこしたりする行動は、市場をとおして、結果として全体の利益につながると。ここにはスミスの、人は本来利己的なものだという人間観があります。

「自由競争」は同感と正義のもとに

ただ、利己的なふるまいをつづけても他人からの同感が得られず、その人は市場で損をします。よって、他人から批判されるような行動は避け、むしろ正義をおこなうようにしてはじめて、多くの利益を得つづけることができます。

利益を得るためには同感と正義が必要になる、人間には、市場にはこういう特徴があると見なしたから、スミスは自由競争を肯定したのでした。だから、スミスは自由放任を説いたというのも誤解です。好き勝手し放題じゃ損をする、それが市場の特徴だと言っただけだったのです。

『国富論』は読まれない名著?

以上、アダム・スミスの『国富論』の内容をかんたんに紹介しました。

このほかにも、たとえば需要と供給の関係とか、資本蓄積の過程とか、国防・司法・公共という国家の役割など、『国富論』には現代経済学の基礎となるテーマがたくさん書かれています。まさにスミスは「経済学の父」といえるでしょう。

ただ、実際にいま『国富論』を読む人は少ないようです。それだけ、彼の考え方が広く普及して、ある意味あたりまえになったということでしょうか。

しかし、資本主義が地球を覆いつくした21世紀の現代に、アダム・スミスの『国富論』はこの世界を外から眺める視野を与えてくれるかもしれません。

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