歌舞伎の中村屋を知り尽くす。歴史や家系図について解説

2018.11.29

歌舞伎は日本の伝統芸能の1つとして、歌舞伎の家元が大切に継承してきました。そんな家元の1つが、今回紹介する『中村屋』です。ここでは中村屋の歌舞伎に対する取り組みだけでなく、歴史や、その家系についても解説します。

歌舞伎の一門、中村屋の歴史と家紋

歌舞伎の一門である中村屋の名前は知っているけど、詳しくは知らない、という方も多いのではないでしょうか?そこでまずは、中村屋の歴史と家紋など、基本的な情報をまとめました。

代々座元の名前として継承

中村屋一門は、歌舞伎役者だった初代中村勘三郎が、中村座の座元になったことから始まります。当時の屋号は『柏屋』といい中村屋を名乗ってはいませんでした。ちなみに座元とは、今でいう劇場の支配人のような存在です。

つまり現在の中村屋とは、もともと中村座の支配人であった、初代中村勘三郎によって創設された一門、ということです。役者というよりは、プロデューサー側の家系であるといえるでしょう。

十七代目中村勘三郎が復活させ、屋号に

当初は座元として始まった勘三郎の歴史ですが、時代が変わってくると、役者と座元を掛け持つことも多くなりました。

十四代目中村勘三郎の時代から、屋号は『舞鶴屋』となり、幕末からは、中村勘三郎を名乗る役者もいなくなりました。

しばらくの間、勘三郎の名は『預かり名跡』となっていましたが、昭和25年(1950年)に十七代目中村勘三郎が復活し、ここから『中村屋』を名乗るようになりました。

定紋は角切銀杏

中村屋の現在の定紋は、『角切銀杏』(すみきりいちょう)となっていますが、当初は『丸に舞鶴』(まるにまいづる)が定紋でした。

徳川綱吉の姫『舞鶴』が誕生した際に、鶴の紋を使用することが禁止されたため、低紋が変更されたという経緯があります。

中村屋の伝統と進化

基本的な歴史がわかったところで、ここからは、中村屋がいかにして現在に至るのかということを具体的に解説します。

幅広い役と踊り

中村屋は、1624年に『中村座』として創設されて以来、江戸歌舞伎を表と裏から支えてきました。

江戸歌舞伎には、室町時代以前の昔の話を演じる『時代物』、江戸時代が舞台の『世話物』、そして『舞踊』があり、この3つを組み合わせて上演されます。

十七代目中村勘三郎は、時代物や世話物、舞踊と幅広い役と踊りを得意とする役者でした。その芸は現在の中村屋を牽引する六代目中村勘九郎や二代目中村七之助に確かに受け継がれています。

新しい歌舞伎への挑戦

今でいうプロデューサーのような位置づけであった中村屋は、現代においても、新しい挑戦をやめることはありません。

1994年に十八代目中村勘三郎によって上演された『コクーン歌舞伎』では、石野卓球や椎名林檎などのポップアーティストと共演し、新しい歌舞伎の姿を提案しました。

また2000年には『平成中村座』を立ち上げ、アメリカやヨーロッパなどの海外公演を積極的に行うなど、歌舞伎を世界に広げる試みを続けています。

このような活動は、歌舞伎を支え続けてきた中村屋だからこそできるといえるでしょう。

中村屋の家系図

中村屋の血筋は、歌舞伎だけはなく、日本の芸能界全体でも活動しています。ここからは、そんな中村屋の家系について解説します。

十七代目中村勘三郎と六代目尾上菊五郎

幕末以来、途絶えていた中村勘三郎の名を、1950年に復活させたのが十七代目中村勘三郎です。

1909年に、三代目中村歌六の三男として生まれ、芸の道を歩んでいきました。六代目尾上菊五郎の長女久枝と結婚した後、十七代目中村勘三郎を襲名しています。

十七代目中村勘三郎は、師事していた六代目尾上菊五郎の芸風を踏襲しながらも、新しい芸風にも挑戦し、生涯にわたって、なんと800役以上を務めたことでも知られています。人間国宝であり、中村屋として一時代を築いた名役者です。

六代目尾上菊五郎は、1885年に五代目尾上菊五郎の長男として生まれ、1901年に襲名しました。

その後は江戸三座の1つであった『市村座』で活躍し、昭和24年に文化勲章を受章しています。

十八代目中村勘三郎が残した功績

十八代目中村勘三郎は、現代の私達に最も馴染みのある中村勘三郎といえるかもしれません。1955年に十七代目中村勘三郎の子として生まれました。

9歳の時に初舞台を踏み、それ以降、歌舞伎のみならず、テレビやラジオ、映画や舞台でも活躍し、お茶の間の人気者となりました。

新しいものに挑戦する意欲が強く、ミュージカルなどにも挑戦していきました。その延長線上にあったのが『コクーン歌舞伎』です。

海外公演なども積極的に行いながら、2005年に中村勘三郎を襲名しています。幼いころから天才役者として歌舞伎界の期待を一身に背負ってきた十八代目でしたが、2012年に、急性呼吸窮迫症候群で死去しました。57歳という若さでした。

十八代目は今までのどの勘三郎とも違う、独自のやり方で新しい歌舞伎の世界を作り上げていきました。十八代目が歌舞伎界に残した功績は、多大なものであったといえるでしょう。

六代目中村勘九郎と二代目中村七之助

六代目中村勘九郎と、二代目中村七之助は、十八代目中村勘三郎の息子です。六代目中村勘九郎は、1981年に長男として誕生し、1987年には中村勘太郎を襲名し、舞台を踏んでいます。

2009年に女優の前田愛さんと結婚し、2011年に長男が誕生した後、2012年に中村勘九郎を襲名しました。子ども時代に名乗っていた勘太郎の名は、長男が受け継いでいます。

二代目中村七之助は、1983年に次男として誕生しました。1987年から、兄と共に舞台を踏み、現在に至っています。

中村屋の弟子と部屋子

歌舞伎の世界には、『弟子』と『部屋子』呼ばれる人達がいます。聞いたことはあるけどよくわからない、という人が多いのではないでしょうか?ここでは弟子と部屋子の違いについて、詳しく解説します。

歌舞伎の弟子と部屋子の違い

歌舞伎における『弟子』とは、現在ではその多くが国立劇場の研修所を卒業した人たちです。『黒子』として役者の側で衣装替えを行ったり、時には通行人や、斬られる役として出演したりします。つまりエキストラに近い役割も持っているわけです。

弟子は、役者の付き人のように舞台を補助しながら演技の勉強をし、やがては立派な歌舞伎役者として活躍していきます。

これに対し『部屋子』というのは『同じ楽屋を使用する子ども』のことです。歌舞伎には多くの子役が出演します。それは劇団の子どもであることが多いのですが、ほとんどの子どもたちは、歌舞伎役者とは別の楽屋を使います。

その子どもたちの中から、将来が期待できそうな子どもをスカウトし、部屋子とするのです。部屋子になった子どもは、役者さんと同じ楽屋で過ごし、舞台の心得や、役者としての姿勢を学んでいき、歌舞伎役者として成長していきます。

弟子の二代目中村小山三

中村屋に在籍していた弟子の中では二代目中村小山三が有名です。1920年に生まれ、子役の時代から十七代目中村勘三郎に師事し、94歳で亡くなるまで生涯弟子として中村屋を支えてきました。

歌舞伎の一門に生まれたわけではなかったので、主演を演じることはなかったのですが、中村屋に欠かせない名役者として、歌舞伎ファンの間でよく知られています。

部屋子の中村鶴松

現在中村屋には、中村鶴松という部屋子がいます。本名は清水大希さんです。5歳の時に歌舞伎のオーディションを受けて以来、歌舞伎の世界に魅せられ、歌舞伎役者になることを夢見ていたそうです。

そんな中、十八代目中村勘三郎さんに目をかけられ、中村屋の部屋子となりました。学業と両立させながら歌舞伎を学ぶなど、忙しい生活を送りながら成長し続けています。

中村屋の舞台の楽しみ方

中村屋一門について、詳しく理解したところで、実際に歌舞伎を観に行ってみましょう。歌舞伎の舞台の楽しみ方を解説します。

スケジュールやチケットは公式サイトで確認

歌舞伎公式サイト『歌舞伎美人』には、歌舞伎公演のスケジュールやチケット情報などが掲載されています。

初めての人のために、歌舞伎を観るうえでのマナーなどの情報もあります。歌舞伎を観ようと思ったら、まずはこの公式サイトを確認しましょう。

歌舞伎公式サイト | 歌舞伎美人(かぶきびと)

舞台を盛り上げる掛け声について知る

歌舞伎といえば『中村屋~!』などの掛け声が有名です。掛け声は、舞台を盛り上げるうえで欠かせない要素ですが、掛け声にもマナーがあります。

まず最も大切なのは、舞台の雰囲気を壊さないことです。悲しい場面や、役者の見せ場ともいえる場面で掛け声を上げるのは控えましょう。

また掛け声は歯切れよく言うようにし、間延びした掛け声で雰囲気を壊さないように心がけましょう。

掛け声をするタイミングとしては、登場シーンと、見得と呼ばれる場面の時です。見得では、床を叩く音が入ります。床を叩く音が二発目になった時に、声を掛けるのがマナーです。

また基本的に歌舞伎は男性の世界ですので、『掛け声は男性が行うもの』ともいわれています。

初心者のうちは無理に掛け声に参加せず、他の人のお手本をよく聞きましょう。慣れてきたら掛け声にも挑戦することで一層楽しめます。

実際に舞台を見に行けない時はDVDで

歌舞伎を観たいけど、どうしても観に行けないという場合もあるでしょう。そんな時は、DVDで観ることもできます。

お試しとしてDVDを観て会場の雰囲気を知り、その上で実際に観劇するのもよいでしょう。

一度は観に行ってほしい中村屋の舞台

歌舞伎は、日本を代表する伝統芸能として国内外で人気があります。一度も歌舞伎を観たことがないという方も一度観に行くと、その世界の奥深さに惹きつけられることでしょう。

ぜひこの機会に、中村屋の舞台に足を運んでみてはいかがでしょうか?

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