サルトルの代表作は?彼の著作や人生から学ぶ実存主義哲学とは

2019.11.12

1905年にパリに生まれたジャン=ポール・サルトルは、実存主義の哲学を論じたフランスを代表する哲学者、文学者です。この記事では、そんなサルトルの著作や人生から、彼の実存主義哲学とはいかなるものかをご紹介したいと思います。

実存主義小説『嘔吐』とは

1938年に刊行された『嘔吐』は、のちの著作の先駆けとなる実存主義小説です。

内容は主人公アントアーヌ・ロカンタンという人物の内的体験を日記形式で記したもの。アントアーヌは、周囲の物事や人間、そして自分自身に対して謎の吐き気を感じていましたが、その原因を探るうちに、それらすべてがなんの存在理由もなくそこにあるからだという結論に達します。

哲学小説とされながら、力強い表現と具体的で興味深い挿話によって、その抽象性が和らげられています。

代表的著作からみるサルトルの思想

小説『嘔吐』にすでに表れていたサルトルの実存主義的な哲学は、次に紹介する二つの代表的著作に詳細に論じられています。現象学的考察を基礎におく『存在と無』と、講演が基になった入門書『実存主義とは何か』から、サルトルの思想を紐解いてみましょう。

『存在と無』と自由

『存在と無』は、1943年に出版されたサルトルの主著で、フッサールの現象学を基礎とし、ハイデガーの影響下に構想されました。

意識というものにはつねに対象があって、その対象は端的に存在する、すなわち「即自」であるとされます。これに対して、意識を持った存在である人間は「対自」と呼ばれ、その存在は「無」や「否定性」といった言葉で説明されます。人間は、岩が岩であることに満足しているように、自分であることに満足していません。

だからこそ、人間は自由であり、選択によって自分自身を構築していかなくてはならないのです。

『実存主義とは何か』に見る名言

『実存主義とは何か』は、1945年の終戦後まもないパリで行われた講演に基づく著書で、実存主義の入門書にもなっています。

道具などの物体はその用途や素材、仕組みがあらかじめ決められていて「本質が実存に先立つ」と言えます。18世紀頃までは、人間も同じように神の定めた本性(本質)を持つとされていました。

しかし、サルトルは、人間が様々な選択の自由を持って存在し、その本質は自ら主体的に作り出すものだと論じます。そのため、サルトルは「実存は本質に先立つ」、「人間は自由の刑に処せられている」という名言を残したのです。

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人生からみるサルトルの思想

「行動する知識人」とも呼ばれるサルトルは、実存主義の哲学を人生においても実践しました。ここでは、その生涯における様々な選択、行動からサルトルの思想に近づいてみたいと思います。

ボーヴォワールとの契約結婚

サルトルが、24歳のとき年下の女性哲学者シモーヌ・ド・ボーヴォワールと契約結婚をしたことはよく知られています。この決断にも、自由意思に基づく個人の選択を重視するという、実存主義の哲学が背景にありました。

婚姻や子どもを持つことは否定し、互いの自由恋愛を認めるという前衛的な二人の関係は、最初は2年の期限付きでしたが、結局、サルトルが亡くなるまでの約50年間続くことになりました。サルトルはまた、ノーベル賞をはじめとする公的な受賞を全て辞退し、自身に予めレッテルを貼ることを拒みました。

「アンガージュマン」の実践

「アンガージュマン」とは、日本語にすると「参加」を意味します。

先に述べたように、人間は自由な存在であり、選択によって自己を形作ります。しかし、サルトルの「約束とは言葉ではない、行動なのだ」という名言通り、選択には行為をともなわなければ新しい自己をめざすことはできません。

サルトルは、政治や社会、思想上の対立において自分の立場を明らかにし、その発言や行動の結果に対し責任を引き受ける態度を「アンガージュマン」と考え、共産党を支持し、紛争や革命があれば、明確に意見を表明するなど、その思想を実際に態度で示しました。

まだまだある、サルトルの業績

サルトルは、小説や哲学書だけでなく、戯曲や文学評論などを出版し、現在のフランスの主要日刊紙『リベラシオン』を創刊するなど、ここでは紹介しきれないほど、たくさんの業績を残しています。難解な哲学書から読み応えのある小説まで、サルトルの著作を一度手にとってみてはいかがでしょうか。

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