フッサールの現象学とは何か?哲学の目標と研究内容を分かりやすく解説

2019.11.09

「現象学」という新しい方法を提唱したフッサール。その内容とは?そして彼の哲学が目指したものとは?19世紀末~20世紀前半という時代背景から、わかりやすく解き起こします。近現代哲学の流れを理解したい方向けの記事となります。

フッサールの哲学の背景

まずフッサールの生きた時代とはどんなものだったのか、そこから確認しましょう。

哲学者フッサールとは

エトムント・グスタフ・アルブレヒト・フッサール(1859-1938)はオーストリアに生まれ、ドイツで活躍した哲学者です。はじめは数学基礎論の研究者でしたが、ブレンターノという哲学者と出会ったことで影響を受け、専攻を哲学に変えました。

フッサールはその後大学教授として働くかたわら次々に著作を発表、「現象学」という新しい哲学の提唱者として世に知られていきました。ちなみに1919年からはハイデガーが彼の助手を務めています。

科学の一大過渡期

フッサールが活躍した19世紀末~20世紀前半は、科学の歴史における一大過渡期でした。

すでに哲学から完全に離れていた科学は、力学・電磁気学・化学などに専門分化し、それぞれの分野でおおきな成果を挙げていました。と同時に、決定論や絶対空間といったそれまでの土台が問い直され、量子力学や相対性理論という新しい方法が登場してきた時代でもありました。

こうした科学の変遷を横目に、哲学には何ができるのか。それは科学のもっと根本的な土台を問い直すことである。フッサールの現象学とは、この「土台の根本的な見直し」から出てきた方法のひとつなのです。

フッサールの現象学の目標と「エポケー」

科学を科学たらしめる土台は2つ、数学および実験・観察です。このうち前者の確実性をもっと根本から問い直そうとしたのが論理学(または広く分析哲学)、そして後者の確実性を深く追求していったのがフッサールの現象学でした。

世界の実在を受け入れる自然的態度

科学者が実験や観察をおこなうとき、ふつうそこに現れる事象は「実際に存在している」とみなします。これは科学者にかぎらず私たちも同じで、この世界は私の見たまま・感じたままに存在していると信じています。

しかしフッサールに言わせると、このことはひとつの謎なのです。なぜなら、この世界が実在していることを確かめるすべはないからです。もしかしてこの世界は、水槽に浮かぶ脳が見ている夢かもしれない、あるいは機械が作り出した虚構かもしれない。それなのになぜ私たちは、この世界の実在を自然な態度として受け入れているのか、フッサールの関心はここにありました。

エポケーによって意識に目を向ける

フッサールは世界の実在を否定したわけではありません。そうではなく、なぜ私たちは世界の実在を自然なこととして受け入れるのか、その理由を解明しようとしたのです。

そのための第一歩としてフッサールが提案したのが「エポケー」です。エポケーとは一時的な保留、あるいは判断停止のこと。つまり何かを見聞きしたときに「それは実在している」という思い込みをいったん保留にすることです。

たとえば目の前に赤くてつるつるしたリンゴがあるときに、「赤くてつるつるしたリンゴがある」と確信するのを一時的にストップし、ただ赤いリンゴが私に見えている、つるつるとした感触が私の手に感じられる、という私の意識にだけ集中するのです。

還元によって見えてくる確信の根拠

こうした態度変更を、フッサールは「還元」と呼びました。この還元をおこなうと、なぜ私たちが世界の実在を確信するのか、その理由がすこしずつ見えてきます。

知覚も意味も、私たちの自由にはならない

先ほどのリンゴの例でいうと、私たちは目の前のリンゴの色・形・大きさを自由に変えることはできません。リンゴにかぎらず、私に知覚されたこの世界は私の意思で勝手に作り変えることができません。この不自由さが、世界の実在を確信する理由のひとつです。

また、私たちはこのリンゴを「赤いリンゴ」と言葉で説明することができます。この「赤い」という言葉は私たちにとってひとつの意味を持ち、と同時に、やはりリンゴについての知覚からもたらされた自由にできない絶対的なものです。つまり私たちは、意味もまた、直観によって与えられたままに受け取るしかない。よってさらに世界の実在を確信するのです。

20世紀哲学におけるフッサールとは

以上のように、フッサールの問いの立て方はとてもユニークでした。この世界は実在するのかどうか、ではなく、この世界の実在を私たちが確信するのはなぜか、という角度から認識論をおしすすめ、所与の絶対性(=私たちに与えられるデータは私たちの自由にならない)を彼は指摘したのです。

フッサールの現象学はその後、ハイデガーやサルトル、また心理学にも影響を及ぼしました。科学隆盛の時代に哲学にできることを追求したという意味でも、フッサールは20世紀哲学を知るうえで欠かせない一人といっていいでしょう。

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