ビリー・ホリデイの魅力。壮絶な生き様を見せたジャズシンガーを知る

2019.11.05

20世紀半ばのジャズ発展期に活動し、独特の存在感を放つシンガーとして音楽史に名を遺したビリー・ホリデイ。その歌声や表現者としての壮絶な生き様は、今もアメリカ社会に大きな影響を与えています。そんなビリー・ホリデイの魅力を知っていきましょう。

ジャズ史に輝くビリー・ホリデイの歌

(画像はイメージ)

ビリー・ホリデイの圧倒的な歌声は、今もジャズ史の中で輝き続けるものとして知られています。彼女がどんなシンガーだったのか、ご紹介します。

三大女性ジャズ・ヴォーカリストの一人

1930年代から1950年代にかけて活動したビリー・ホリデイは、若い頃から才能を見出されてさまざまなクラブや劇場で歌い、多くの人気ジャズミュージシャンと共演しました。

レスター・ヤングやデューク・エリントン、ベニー・グッドマンといった当時のジャズシーンを代表する名プレイヤーたちと並び、アメリカ中で知られるジャズシンガーへと成長していきます。

数々のヒット曲を世に送り出し、アメリカだけでなくヨーロッパでも公演を行ってその名前は世界のジャズシーンで知られるように。アルコールや麻薬などさまざまな依存症に体を蝕まれて44歳の若さで逝去するまで、多くのジャズファンに愛されました。

今では、同じく20世紀のジャズ界で活躍したサラ・ヴォーンやエラ・フィッツジェラルドと並んで、「女性ジャズ・ヴォーカリスト御三家」の一人に挙げられています。

壮絶な生涯は映画「ビリー・ホリディ物語/奇妙な果実」に

先述のように、人生の後半ではさまざまな依存症に苦しんだことでも知られているビリー・ホリデイ。その裏には、幼少期の過酷な生活や、人種差別が公然と行われていた時代に黒人シンガーとして活動する上での苦悩がありました。

彼女の壮絶な生涯は自伝となり、1972年にはそれが「ビリー・ホリディ物語/奇妙な果実(Lady Sings the Blues)」として映画化されました。この作品は主演のダイアナ・ロスがアカデミー賞女優賞にノミネートされるなど批評的・商業的に大きな注目を集め、これがきっかけでビリー・ホリデイの生き様は広く知られることになります。

アメリカ社会に影響を与えたビリー・ホリデイ

ビリー・ホリデイは、ジャズシンガーとしても一人の人間としてもアメリカ社会に大きな影響を与えました。その評価や功績を見ていきましょう。

幅広いアーティストやメディアからの評価

先述のように多くの名プレイヤーと共演したビリー・ホリデイは、同世代の他のジャズシンガーからもその歌声を絶賛されました。

特に映画俳優としても有名なフランク・シナトラや「ビリー・ホリデイの後継者」とも言われたアビー・リンカーンなどはビリー・ホリデイを敬愛していたことで知られ、親しい友人関係でもありました。

また、その影響は後世のミュージシャンにも伝わっていて、世界的ロックバンドのU2や人気ヒップホップグループのブラック・アイド・ピーズがビリー・ホリデイについて言及したりと、他ジャンルのアーティストからも支持を集めてきました。

2000年にはロックの殿堂入りを果たしたほか、イギリスの名門音楽雑誌Qでは「歴史上最も偉大な100人のシンガー」の12位に挙げられるなど、死後もその功績が評価され続けています。

「差別と闘い続けた人物」としての功績

ビリー・ホリデイは魅力的な歌声を持つジャズシンガーとしてだけでなく、人種差別や性差別と闘い続けた人物としても広く知られてきました。

シンガーとしての活動中も白人ミュージシャンと同じレストランやホテルに入れなかったり、肺炎を患った父親が人種を理由に病院で診療してもらえず亡くなったりと、壮絶な体験をしてきた彼女。差別への強い憤りは、音楽の中にもメッセージとして表れていました。

まだ差別の根深かった時代から公然と差別に立ち向かった人物として、その生き方には今も賞賛や敬意を表する声が集まっています。

ビリー・ホリデイの名曲

最後に、ビリー・ホリデイを代表する名曲をご紹介します。ジャズシンガーとして、一人の人間としての生き様やメッセージが込められた楽曲は、今もジャズ史において重要なナンバーとなっています。

奇妙な果実(Strange Fruit)

ビリー・ホリデイを象徴する代表曲「奇妙な果実」は、フランク・シナトラのヒットソングなども手がけたルイス・アレンによる曲です。

その歌詞の内容は人種差別による暴力を痛烈に批判するもので、差別と闘い続けたビリー・ホリデイの信念を物語る一曲として、コンサートで必ず歌われるようになりました。

また、黒人シンガーでありながら危険をかえりみず人種差別を批判する曲を歌う、という活動が社会的にも注目を集め、アメリカの名門ニュース雑誌「タイム」誌で初めて写真が載ったアフリカ系アメリカ人となるなど、この曲がきっかけで幅広い注目を集めました。

ビリー・ホリデイを知る上で、まず聴くべき一曲と言えるでしょう。

サマータイム(Summertime)

元々はオペラソングとしてジョージ・ガーシュウィンによって作られた「サマータイム」は、暖かくも切ないストーリーが描かれるミディアムナンバーです。

ビリー・ホリデイが自身のレパートリーとして歌ったことでジャズのスタンダードナンバーとして広く知られるようになり、彼女の後にもジョン・コルトレーンやマイルス・デイヴィス、ビル・エヴァンスといった名だたるジャズミュージシャンがこの曲を演奏しました。

また、ポップソングとしても人気を集め、ジャニス・ジョプリンによってブルースカバーが歌われたり、日本でもアニメ映画「心が叫びたがってるんだ。」でアレンジ曲が劇中歌として使われたりと、世界的に知られています。

ビリー・ホリデイの魅力に触れよう

アメリカのジャズの歴史、またアメリカ社会そのものの歴史を語る上で、見逃せない重要人物であるビリー・ホリデイ。その生き様を知ることで、ジャズシンガーとしての彼女の歌声にますます魅力や説得力を感じることができます。

深いメッセージが込められたビリー・ホリデイの歌声の魅力に、ぜひ触れてみてください。

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