ルオーの厚塗り縁取り絵画。彼にしか書けない20世紀肖像画の傑作

2019.10.31

ジョルジュ・ルオーは、19世紀末フランス生まれの画家で、太い輪郭線を使った作品で有名です。特に、人物の顔をアップで描いた作品は、ルオー独特の人間の内面をえぐり描いた肖像画ともいえるでしょう。日本人にも愛され続ける彼の作品の特長を紹介します。

魂を丸裸に描かないと気がすまない性

1871年にパリに生まれ1958年に死去するまで、作品を生み続けたルオー。様々なモチーフや、絵画から版画まで、手がけた作品の種類は幅広いのですが、最大の特徴は、人物画。姿形を残すということより、人間の内面を特徴的に表現した作品が多数残っています。

一見グロテスクにも見える肖像画

彼の人物画は、一見、稚拙な表現に見えるほど、太い輪郭線でなぞられ、象徴的に描かれています。また、油彩画は厚さが何センチあるの?というほど、絵の具が重ねて塗られているものも特徴。

アカデミックで繊細な歴史画や、幻想的な世紀末美術に反する流れがあった当時、ルオーは、自分なりの表現で、描く人間の魂を写し取ることにこだわり続けた画家でした。

街の娼婦もキリストも同じ表現で

ルオーも最初の頃は、師:ギュスターブ・モローにもとづき、レンブラント風の劇的で表現主義的な絵画を描いていました。ところが、モローのすすめもあり、自分なりの表現を求め始めた時に取り入れてみたのが、ステンドグラス風の表現だったのです。

彼は、10代のころ、ステンドグラス職人の元で職人として働きながら、美術学校に通っていました。誰にでもわかりやすい表現で、人間の根源の姿を描こうとしたのでしょう。描く対象が誰であっても、自分の表現をつらぬきとおした画家でした。

生涯のモチーフ・キリストと旅芸人

ルオーは、風景や街の様子も描くことはありましたが、生涯描き続けたのはキリストと旅芸人や貧しい労働者など市井の人々でした。

鼻の長いキリストの顔

敬虔なキリスト教徒だった彼は、キリストをわざとアカデミックではない表現で描きはじめます。キリストの顔がアップになった「聖顔」などの連作は、単純化されたキリストの顔が描かれていますが、誰がみてもそれはキリスト。鼻が長く、ヒゲのついた男は、親しみを感じさせながら、見ているこちらを静粛な気持ちにさせるのです。

サーカスの女性や娼婦の強いまなざし

同様に、貧しい旅芸人や下級娼婦とされるパリの女性たちの顔にもこだわって描いています。彼女たちは、キリストと違い、強い生命力と意志をひめたまなざしが特徴。当時、世界中から人が流れ込んでいた大都市・パリは、活気に溢れる反面、生き抜いていくのが大変な場所でした。そこで自分の身ひとつで稼いで生きていく姿は、現代の私たちにも力強さを与えてくれます。

日本人に愛されるルオー

フランス本国だけでなく、日本でも愛されているルオーの作品は、各地の美術館にも所蔵されています。また展覧会も比較的よく開催される画家です。何がそんなに日本人にもうけるのか?その秘密をさぐっていきましょう。

一見大雑把に見える繊細な絵画

先にも述べたように、一見ルオーの作品は大雑把でわかりやすい絵となっています。大胆にもみえる筆使いと色の使い方、そして何より太い縁取り線画あるため、繊細な絵画には見えないのです。

ところが、近寄ってよく見ると、計算された表現であることがよくわかります。1枚の絵画として見たときのバランスを計算して、色を選んだり、筆のタッチを変えたりしているのです。

ときには、キャンバスの枠に額縁のような装飾枠をつけて、キリストの神秘性を高めた効果のある絵画もあります。

ルオーの作品が多数ある美術館

ルオーのコレクションを多数所蔵している日本の美術館としては、「パナソニック汐留美術館」が有名。ルオーの油彩画と版画を約200点所蔵しており、常設展示でもルオーを見ることはできます。

パナソニック汐留美術館 公式ウェブサイト

ルオーが描く親しみやすいキリストの顔

キリストは古来、世界中で描かれたモチーフ。歴史的にも有名な画家たちが、彼の姿や顔を残しています。ルオーが描いた人物はキリストは、気持ちを寄せやすい、いつまでも見つめていたい姿です。これが日本人にも愛されるわけなのかもしれません。

その他のテーマ

ART

CULTURE

CRAFT

FOOD

TIME