森鴎外の『舞姫』を映画版で楽しもう。キャストや見どころを紹介!

2019.10.29

森鴎外が自身のドイツ滞在経験をもとに描いた名作短編小説『舞姫』が、映画化されていたのをご存知でしょうか。この記事では、映画『舞姫』のあらすじやキャスト、見どころに加えて、原作との違いまでをわかりやすくご紹介します。

映画版『舞姫』とは

ベルリンを舞台に繰り広げられる悲恋の物語『舞姫』。元々は短編小説であった森鴎外の傑作はどのように映画化されているのでしょうか。ここでは、映画の概要とあらすじをご紹介します。

映画版『舞姫』の概要

映画版『舞姫』は、森鴎外の同名小説を原作に、大作映画『スパイ・ゾルゲ』で知られる篠田正浩監督がメガホンを取り、1989年に日独合作で製作されました。脚本や撮影には日本とドイツ双方から一流スタッフを集め、音楽には『ラストエンペラー』でアカデミー賞を受賞したコン・スーを迎えた国際的な大プロジェクトでした。

映画版『舞姫』のあらすじ

陸軍軍医としてベルリンに留学した太田豊太郎は、ある日、父親を亡くして道端で泣いている踊り子エリスに出会い、恋に落ちます。そんな豊太郎に反感を抱く、私費留学中の谷村武と陸軍省大尉の副島和三郎によって、豊太郎は免官させられてしまいますが、新聞記者としての職を得て、エリスとその母との生活を始めます。

やがてエリスは子どもを宿しますが、ある日、友人の相沢謙吉より、大臣の天方伯爵が助けを求めていると連絡を受けた豊太郎は、依頼された論文の翻訳をこなし、ルール地方への視察に同行して、大臣の信頼を得ました。そして、大臣のブレーンとして帰国しないかという誘いを断り切れず、承諾してしまいます。

エリスとの愛と功名心に引き裂かれた豊太郎は酒に酔って雨の中を彷徨い、肺炎になって寝込んでしまいます。その間、相沢はエリスに大金を渡して豊太郎を諦めるように説得。取り乱したエリスは階段から落ちて流産してしまいました。豊太郎は、エリスに後ろ髪を引かれ、相沢を憎む気持ちを抱きながらも、帰国の途につきます。

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主演は郷ひろみ!映画版『舞姫』のキャストを紹介

ここでは、映画版『舞姫』を彩るキャストを厳選してご紹介します。

主人公 太田豊太郎(郷ひろみ)

古い日本の価値観と自由恋愛のあいだで悩み苦しむ青年、太田豊太郎役は、若き日の郷ひろみが熱演しました。本作は、郷ひろみがアイドルとしての活動を休止し、ニューヨークに暮らしていた頃に製作されています。猛特訓したというドイツ語を全編にわたって見事に操る郷ひろみの演技には、豊太郎の清潔感のある誠実な人柄がにじみ出ていて、エリスを裏切ることへの苦悩にリアリティが感じられます。

舞姫 エリス(リザ・ウォルフ)

エリス役に抜擢されたリザ・ウォルフは、当時20代半ばで10年以上のキャリアがあった経験豊富な女優でした。アイドル出身の郷ひろみの演技をフォローするように選ばれたと言われています。

美しくも確かな演技力で映画版『舞姫』になくてはならない存在でしたが、「可憐で儚げな印象のエリスのイメージと合わない」と一部原作ファンからは不評もある様子。ちなみにウォルフは『舞姫』出演後の90年代にはテレビドラマなどでも活躍していたそうです。

映画オリジナルキャラを角野卓造、佐野史郎が熱演

原作にはない登場人物の陸軍省駐在武官・副島和三郎と、私費留学生・谷村武を、角野卓造と佐野史郎という実力派俳優がそれぞれ演じています。二人は結託して豊太郎とエリスを監視し、別れさせようとした挙句、豊太郎を免官に追い込みます。エリスたち踊り子を好色そうに眺めるシーンなど、原作にはないエピソードでコミカルな演技を見せ、映画を彩っています。

映画版『舞姫』の魅力や原作との違いは?

映画『舞姫』の見どころは、何と言っても、長期ベルリンロケで撮影された映像から19世紀末のドイツの雰囲気が味わえるところです。ここでは、そんな映画の魅力に加え、映像化にあたって原作から変更された点についてご紹介します。

映画版『舞姫』で味わう19世紀末のドイツ

映画『舞姫』の制作では、統一前の東西両ベルリンを舞台に3ヶ月もの長期ロケが行われました。原作にも印象的に登場する地名で、ベルリンの目抜き通りであるウンターデンリンデン周辺のコンサートホールや、フリードリヒ大王像などが登場し、混沌かつ華麗な19世紀末のドイツの雰囲気を伝えてくれます。豊太郎とエリスがデートに出かける美しい滝の公園「ビクトリアパーク」は、今もベルリン南部にあります。

また、セリフからナレーションに至るまでドイツ語で語られるため、ドイツ語を学んでいる人にとっては、歴史だけでなく語学の教材にもなる映画です。

映画版『舞姫』は原作とどう違う?

『舞姫』の原作と映画版では、大まかなストーリー展開は同じですが、細かな設定やエピソードに違いがあります。

例えば、豊太郎は原作では法学を学んでいましたが、映画では、作者の森鴎外と同じように陸軍軍医として留学しています。また、豊太郎に裏切られたエリスが、原作では、子どもを身籠ったまま精神を壊してしまうのに対して、映画では、階段から転落して流産してしてしまうことは、結末の余韻を大きく変えています。

さらに、映画では原作に無いドイツ陸軍の演習を見学するシーンや改革運動を志す芸術家が登場するなど、夢幻的な雰囲気の原作に比べて、当時のドイツの社会背景が伝わるリアリティが付け加えられています。

原作の理解にもつながる映画版『舞姫』

映画版『舞姫』では、原作には記述されない豊太郎の心情がナレーションで語られることで、近代的な自我に目覚めていく青年の心の変化や、旧来の日本的価値観を捨てきれない葛藤がわかりやすく伝わってきます。そんな映画版は、文語体で書かれた原作に比べて近づきやすく、多少の違いこそあれ、原作の理解にもきっと役立つでしょう。

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