歌舞伎役者は舞台の外でも活躍中。ドラマやCMで人気の役者を紹介

2018.11.21

最近ではドラマやCMでもよく見かけるようになった『歌舞伎役者』ですが、そもそも歌舞伎役者とはどんな仕事をしている人たちなのでしょうか。歌舞伎役者のルーツから人気役者の一覧、公演情報の調べ方、オススメの演目などを紹介します。

歌舞伎役者のあらまし

今から400年以上前に誕生した歌舞伎は、庶民の代表的な娯楽として人気を集めた伝統芸能です。その人気は内容だけでなく演じる役者にまで及び、彼らの動向は現代に至るまで社会や人々に多大な影響を与えてきました。

現在、歌舞伎役者はドラマやCMなど舞台の外でも幅広い活躍を見せていますが、そもそものルーツや伝統芸能としての特徴を知っている人は少ないのではないでしょうか。

歌舞伎役者について詳しく知る前に、まずはルーツや特徴などのあらましを探っていきましょう。

歌舞伎役者は男性のみ

現在、歌舞伎の舞台は男性役者のみで構成されており、女性の役も男性役者が演じるというのがルールです。なぜこのような決まりが設けられたか、その謎を解く鍵は今から400年前、江戸時代にまでさかのぼります。

歌舞伎のルーツとなる踊りを始めたのは女性でした。出雲大社の巫女である『出雲の阿国』(いずものおくに)が始めた『かぶき踊り』が、現在の歌舞伎のルーツだといわれています。

かぶき踊りとは、当時を破天荒に生きた『傾き者』(かぶきもの)に扮して踊った演目です。やがて阿国が民衆の間で人気を集めると、それに便乗した遊女らによる女一座が次々に現れ、『女歌舞伎』として大成功を収めることになりました。

しかし際どい演目も多かったことから、武家社会の風俗を乱すとして幕府が禁止することになります。

この後に生まれたのが少年一座による『若衆歌舞伎』ですが、こちらも風紀を乱すものとみなされ、最終的には成人男性による『野郎歌舞伎』へ落ち着くことになったのです。

有名役者は世襲制

歌舞伎役者の有名な名前として『市川海老蔵』や『中村勘九郎』などが挙げられますが、それらの名前の多くは現在に至るまで代々受け継がれてきたものです。

この代々受け継がれてきた名前を『名跡』(みょうせき)、名前を継ぐことを『襲名』(しゅうめい)と言います。

名跡には芸風や得意な演目なども含まれるため、襲名するにはその名跡にふさわしい技量を身につけなくてはなりません。それゆえ『市川海老蔵』や『中村勘九郎』といった有名役者は、ほとんどが世襲制となっています。

一般人が歌舞伎役者になるには

本来は世襲制の歌舞伎役者ですが、役者の家系でない一般人にも門戸は開かれています。それは日本芸術文化振興会の『国立劇場 養成課』の歌舞伎俳優研修生になることです。

応募は2年おきに行われていますが、非常に狭き門となっています。応募資格は中卒以上で、原則23歳以下の男子です。

その他、歌舞伎役者に弟子入りを直接志願する方法もあります。いずれにしても役者の家系でない一般人が歌舞伎役者になるためには、相当な時間と稽古を重ねる覚悟が必要です。

歌舞伎は役者名が変わる

平成24年(2012年)に中村勘太郎が六代目『中村勘九郎』となったように、歌舞伎の世界では役者名が変わることになります。なぜ役者名を変えるのでしょうか。

役者名の襲名

世界的に有名な歌舞伎役者として『中村勘三郎』や『市川團十郎』が挙げられますが、これら代表的な名跡を襲名するためには、2度3度と段階的に襲名を経る必要があります。

例えば『中村勘三郎』なら『勘太郎→勘九郎→勘三郎』、『市川團十郎』なら『新之助→海老蔵→團十郎』といった具合です。どうしてこのような決まりごとがあるのでしょうか。

名前が変わる理由

前述したように歌舞伎役者の『名跡』には、その名跡ならではの芸風や得意な演目なども含まれています。

特に『中村勘三郎』や『市川團十郎』などの名の知れた先人たちは技量も人気も高かったため、実力の及ばない役者は名跡を名乗ることが許されていないのです。

つまり平成24年に二代目中村勘太郎が六代目中村勘九郎を襲名したのは、かつての『中村勘九郎』と同程度の実力を身につけたからに他なりません。

六代目中村勘九郎が最高位の名前である『中村勘三郎』を襲名するためには、同程度の実力を身につけるか、今後身につけると周りから認められる必要があるのです。

歌舞伎役者は江戸時代から人気者

江戸時代に庶民の娯楽として人気を集めた歌舞伎ですが、その人気と呼応するように演じる役者にも注目が集まりました。

役者絵でわかる歌舞伎役者の人気度

歌舞伎役者の当時の人気がうかがえるものとして『役者絵』があります。役者絵は人気役者たちの舞台での姿や楽屋での日常風景が描かれたもので、舞台の一場面を描いたものは芝居の興行を知らせるチラシのような役割を持っていました。

はじめは当時の娯楽である『浮世絵』の中の1つとして見られていましたが、やがて役者絵そのものが人気を博し、ついには現代でいうアイドルのブロマイドのように扱われるようになったのです。

役者文様は現代のファン用グッズ

「お気に入りの役者のグッズを手にしたい」というのは今の世の中でも普遍的なファン心理ですが、当時は歌舞伎役者と同じ『役者紋』を手に入れるのが大流行しました。

役者紋とは、個々人の役者の名前をグラフィカルに表現した文様のことです。この文様がデザインされた楽屋着や手ぬぐいは、現代で言うとファン用グッズに当たります。

たくさんの種類の役者紋がありますが、共通して言えるのは『江戸らしい粋を感じさせるデザイン』ということです。

例えば『鎌』『丸輪』『ぬ』の字を配して『かまわぬ』と読ませる『鎌輪ぬ模様』、三・五・六の縞を縦横に交差させて『みつごろう』と読ませた『三津五郎縞』などがあります。

現代の人気歌舞伎役者一覧

現代の人気歌舞伎役者にはどういった人たちがいるのでしょうか。名跡と共に代々受け継がれる『屋号』別に、見ていきましょう。

成田屋

『成田屋』は市川團十郎家の屋号で、現在は十一代目の市川海老蔵が有名です。伊藤園「おーいお茶」のイメージキャラクターを務めたり、2013年の映画『利休にたずねよ』にて主役を演じたりと、歌舞伎以外にも幅広い活躍を見せています。

成田屋は歌舞伎の世界で最も格が高いとされる屋号です。特に成田屋の『市川團十郎』という名跡は別格のものとされています。

中村屋

『中村屋』は、幕末に途絶えていた『中村勘三郎』という重要な名跡を復活させたいという思いから、十七代目中村勘三郎が襲名後に用いた屋号です。

世界的に有名な歌舞伎役者として『十八代目中村勘三郎』がいましたが、2012年に亡くなってからは、二人の息子、六代目『中村勘九郎』と二代目『中村七之助』が先頭に立って中村屋を引っ張っています。

中村屋は屋号としての歴史はそこまで深くありませんが、近年大変人気のある役者を多く輩出する名跡になっています。中村屋についてもっと深く知りたい方はこちらの記事も見てみてください。

歌舞伎の名門中村屋を家系図から解説。中村屋の歴史と若手役者も紹介

高麗屋

高麗屋(こうらいや)は成田屋の弟子筋に当たる屋号で、松たか子の父親である九代目松本幸四郎(現・二代目松本白鸚)が有名です。

松本と市川で苗字が異なっていますが、これは成田屋で跡取りに恵まれなかった場合に高麗屋から養子を入れる風習があるからです。そのため、松本幸四郎を名乗る前に市川染五郎と襲名するスタイルが確立されることになりました。

実際、十一代目『市川團十郎』は、もとは高麗屋の七代目松本幸四郎の息子であり、成田屋には養子として入っています。

近年の関係で見ても、十二代目市川團十郎と九代目松本幸四郎はいとこ同士で、縁が深いです。

音羽屋

音羽屋(おとわや)は江戸時代から続く名門の屋号で、NHK大河ドラマ『おんな城主直虎』で今川家のプリンス・今川氏真を演じた尾上松也(おのえ まつや)が有名です。

また七代目尾上菊五郎とその息子、五代目尾上菊之助も歌舞伎役者として人気を集めています。五代目菊之助は寺島しのぶを姉に持つことでも有名です。顔立ちがよく、女形・立役(男役)の両方を演じることができます。

澤瀉屋

澤瀉屋(おもだかや)は、初代『市川猿之助』によって立ち上げられた屋号です。現在はNHK大河ドラマ『風林火山』や『龍馬伝』に出演していた四代目『市川猿之助』が有名でしょう。

成田屋などと比較すると歴史は浅いものの、『市川猿之助』と『市川段四郎』という2つの名跡を看板に現代まで力を伸ばしてきました。

松嶋屋

松嶋屋は関西方面を中心にしている屋号です。現在では大河ドラマ『真田丸』や『半沢直樹』にも出演した六代目『片岡愛之助』が人気を集めています。

六代目愛之助はもとは一般人でしたが、1981年に十三代目『片岡仁左衛門』の部屋子になり、1992年に二代目『片岡秀太郎』の養子となりました。

歌舞伎以外にも幅広く活動しており、上方舞の名門『楳茂都流』(うめもとりゅう)の四代目としての活躍も期待されています。

萬屋

萬屋(よろずや)は、二代目『中村吉右衛門』を中心とする屋号『播磨屋』から独立する形で誕生した屋号です。1971年誕生とまだ歴史は浅いですが、二代目『中村獅童』や初代『中村隼人』ら実力派の若手がそろっています。

特に二代目中村獅童は昭和の名女形と言われた三代目『中村時蔵』を祖父に持つ、歌舞伎の名門出身です。大河ドラマや映画、TVのバラエティ番組など、歌舞伎以外にも目覚ましい活躍を見せています。

舞台以外での歌舞伎役者の活躍

舞台では実に見事に役を演じる歌舞伎役者ですが、戦後から現在に至るまでTVドラマやCMといったメディアでも目覚ましい活躍を見せています。具体的にどんなドラマやCMに出演してきたのか、代表的な作品をチェックしてみましょう。

ドラマ

歌舞伎役者が出演したドラマのうち、六代目片岡愛之助が出演した『半沢直樹』、四代目市川猿之助が出演した『ブラックペアン』などはまだ記憶に新しいところです。

大河ドラマは1963年に第1作目『花の生涯』が放映されましたが、その時には二代目尾上松緑(おのえ しょうろく)という歌舞伎役者が主役の井伊直弼役を務めています。

その後も六代目市川染五郎(九代目松本幸四郎)が『山河燃ゆ』と『黄金の日日』の大河ドラマで主演を務めていますし、『風林火山』では二代目市川亀治郎(現 四代目猿之助)が武田信玄役に抜擢されました。

また、六代目片岡愛之助は正月時代劇『新選組!!~土方歳三 最期の一日』に、二代目中村獅童は大河ドラマ『新選組!』に、十一代目市川海老蔵は『武蔵 MUSASHI』と2017年の『おんな城主 直虎』に出演しています。

CM

昔から歌舞伎役者はCMにも多く起用されてきました。揖保乃糸には中村隼人、iPad Air や『花粉を水に変えるマスク』には十一代目市川海老蔵、肺炎予防のCMには五代目坂東玉三郎など、近年でもさまざまな歌舞伎役者がCMに登場しています。

また、メンズブランド『五大陸』のアンバサダーとして、片岡愛之助・尾上松也・中村歌昇・中村壱太郎・中村隼人の5人が起用されたのも記憶に新しいところです。

若手歌舞伎役者が大活躍中

歌舞伎の世界には近年次々と注目の若手が現れており、舞台の内外でも素晴らしい活躍を見せています。今注目の若手歌舞伎役者についてはこちらの記事でもチェックしてみてください。

今注目の若手歌舞伎役者を7人厳選。屋号別にその魅力を紹介

有名歌舞伎役者に会いたい

市川海老蔵や片岡愛之助をはじめ、国民的に有名な歌舞伎役者を一目見たいのなら、実際に歌舞伎公演に足を運ぶのが確実です。お気に入りの役者の公演情報はどうやって調べればいいのでしょうか。

役者ごとの公演情報の調べ方

役者ごとの公演情報は、歌舞伎公式総合サイト『歌舞伎美人』(かぶきびと)から調べることができます。公演場所別に出演者名や公演詳細、チラシなどの情報が記載されているので、ぜひチェックしてみてください。

また人気役者はブログやSNSをやっていることも多いので、お気に入りの役者がいる場合にはそちらをチェックするのも良いでしょう。

歌舞伎公式サイト | 歌舞伎美人(かぶきびと)

出待ちやプレゼントはOK?

「お気に入りの役者をもっと近くで見たい!」という場合、歌舞伎の世界でも『出待ち』は許されているのでしょうか。

結論から言うと歌舞伎の世界にも出待ちはあり、実際に舞台を終えた役者を出待ちしているファンの人もたくさんいます。

遠くから見るだけだったり、思い切って挨拶したりと、歌舞伎の世界でも出待ちの形式はさまざまです。どれも禁止されていることではありませんが、なるべく通行人や役者の迷惑にならないように心がけましょう。

プレゼントに関しても基本的には禁止されていません。ご祝儀や花、役者の好物、芝居にちなんだ差し入れなどが一般的です。

直接本人に手渡しができないことが多いので、番頭に預けるか、劇場にプレゼント用のコーナーがあればそちらに預けるようにしましょう。また劇場近くの花屋やお菓子屋では、楽屋への配送を受け付けている場合もあります。

初心者にオススメの歌舞伎演目

重要無形文化財にも指定されている伝統芸能の歌舞伎は、初心者にとってはハードルが高く感じるかもしれません。とはいえ歌舞伎はそれほど敷居の高いものではありません。

「歌舞伎は初心者でまだ手探り状態…」という人に向けて、オススメの歌舞伎演目を2つ紹介します。

スーパー歌舞伎

スーパー歌舞伎は、三代目市川猿之助が1986年に始めた新作歌舞伎の一形式です。古典芸能に最新の舞台機構や照明設備などを取り入れた、一般的な人でも親しみやすい現代的な歌舞伎となっています。

2015年からは大人気漫画『ワンピース』を題材にした演目もはじまり、全世代向けエンターテインメントとしての評価も高まりました。

プロジェクションマッピングを舞台だけでなく観客席の壁にまで映すなど、舞台と観客が一体感を得られるような演出が特徴です。

また演出を支える『歌舞伎』の底力もポイントです。役者たちがワンピースのキャラを演じつつも、『名乗り』『宙乗り』『飛び六法』『見得』『早替わり』など、歌舞伎ならではの迫力ある立ち居振る舞いもしっかり観ることができます。

一幕見席

一幕見席(ひとまくみせき)は、ある演目のすべての幕を観るのではなく、好きな幕だけを自由に観ることのできる席です。東京の歌舞伎座4階にあり、すべて先着順の自由席となっています。椅子席は約90名、立ち見は約60名、合計約150人の定員です。

歌舞伎を初めて観る人をはじめ、節約のために一幕だけ観る人や、人気演目でチケットの取れない歌舞伎会の会員など、幅広い客層から人気を集めています。

一幕見席用のチケットは当日券のみです。販売開始時間が決められており、混雑の程度にもよりますが、チケット販売開始の30~90分ほど前から並ぶ必要があります。

価格は一幕につき1000~2000円ほどです。一幕見席以外の席は4000~2万円ほどの価格ですので、大変リーズナブルに歌舞伎を楽しめます。

通しで観ることも可能で、その場合は3階B席と同じくらいの価格(4000円ほど)になります。

有名歌舞伎役者を舞台で見てみよう

古くから日本の伝統芸能として人気の『歌舞伎』ですが、戦後の歌舞伎役者たちはCMや映画、ドラマなど、歌舞伎以外にも幅広い活躍を見せています。

歌舞伎役者について興味を持ったら、まずは本業である歌舞伎の舞台に足を運ぶのが良いでしょう。最近では『スーパー歌舞伎』など初心者でも楽しめる舞台づくりが行われています。

一幕1000~2000円ほどの『一幕見席』などもあるので、ぜひ気軽に歌舞伎の演目を堪能してみてください。

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