『人間失格』のアニメ版、名作を大胆リメイクした『HUMAN LOST』が近日公開

2019.10.27

太宰治の生誕110年を迎える今年2019年は、小栗旬主演の映画公開など太宰文学再評価の機運が高まっています。そんな中、近日公開予定のアニメ映画が『HUMAN LOST』です。この記事では、原作をSFアニメとして大胆にリメイクした映画『HUMAN LOST』についてご紹介します。

人間失格のアニメ版『HUMAN LOST』とは

太宰の名作を原案にしつつ、近未来を舞台としたHUMAN LOST 人間失格』とは、どのようなアニメ作品なのでしょうか。ここでは、あらすじとともに、時代設定やキーワードをご紹介します。

HUMAN LOST』のあらすじ

舞台は近未来の日本。医療革命によって誰もが120年は病気もせずに生きられるようになった社会では、経済格差や倫理観の崩壊、環境破壊に加えて、人間が突如異形化する「ヒューマン・ロスト」現象といった様々な歪みが見られるようになっていました。

薬物に溺れ退廃的な生活を送る画家志望の青年、大庭葉蔵は、ある日、暴走集団と行動する謎の男、堀木正雄とともに特権階級の住む街へ突入、戦いに巻き込まれます。そこで葉蔵は、「ヒューマン・ロスト」した異形体の極秘対策機関ヒラメに属する少女、柊美子に助けられ、自分が特別な能力を持つことを知ることになります。

HUMAN LOST』時代設定やキーワード

本作の時代設定は、昭和111年、西暦に直すと2036年となるので今から十数年後の未来ということになります。

この社会では、健康長寿の優位性を達成している300人ほどの「合格者」と他の国民の体内に埋め込まれたナノマシン「GRMP(グランプ)」がネットワークで繋がり、病気や怪我が瞬時に治療されるという、「SHELL(シェル)」と呼ばれる体制によって無病長寿が達成されています。

東京は、首都圏を取り巻く環状道路によってエリアが区分され、特権階級が住む環状線の内部「インサイド」からは、貧困層が住む外部「アウトサイド」へと汚染空気が排出されています。

人間失格のアニメ版『HUMAN LOST』の豪華スタッフと音楽

HUMAN LOST』は、様々なアニメの作画監督として活躍し、監督作『バジリスク ~甲賀忍法帖~が国内外で高く評価されてた木崎文智が監督を、ベストセラー小説『天地明察』の作者で、『攻殻機動隊 新劇場版』にもシナリオを寄せた冲方丁が脚本を担当しています。その他にも、キャラクターデザインを『Pokemon GO』のコザキユースケが、アニメーション制作はスター・ウォーズ:クローン・ウォーズ他数々の作品で受賞歴のあるポリゴン・ピクチュアズが手がけています。

そして、主題歌を、昨年オリジナルメンバーのLisaが復帰したばかりのm-floが担当。グラミー賞にたびたびノミネートされている世界的ミュージシャンのJ.バルヴィンと楽曲を共作しました。主人公・葉蔵の声は、アニメ版『文豪ストレイドッグ』で太宰治役も務めた人気声優の宮野真守が担当するなど、キャスト陣も実力派ぞろいとなっています。

原作の人間失格とアニメ『HUMAN LOST』はどう交わる?

SFアニメ映画『HUMAN LOST』は、原案とする太宰の『人間失格』とどのように異なり、どのように交わっているのでしょうか。ここでは、登場人物の設定の違いや重なり合うテーマ設定について解説します。

原作とどう違う?『HUMAN LOST』の登場人物

  • 大庭葉蔵

主人公の大庭葉蔵が、薬毒中毒を患い自殺未遂を犯す点は原作と同じ。無病長寿を実現した社会で生きる意味を見出せずにいます。

  • 竹一

原作同様に葉蔵を絵描きの道へと導く友人として登場。貧困エリアの暴走集団のリーダーとして、インサイドへの突貫を試みています。

  • 堀木正雄

原作では、葉蔵を酒と薬物と女遊びの放蕩へと誘い込む画塾の先輩として登場する堀木は、竹一の暴走集団に出入りし薬物を撒く謎の男として登場します。

  • 渋田

原作では葉蔵の身元保証人である渋田は、ヒューマン・ロストに対抗する組織のリーダーとして登場します。ちなみにこの組織は、原作版渋田のニックネームと同じ「ヒラメ」と呼ばれています。

  • 柊美子

原作では疑うことを知らない純粋さで葉蔵を癒す存在として登場するヨシ子。アニメ版ではヒューマン・ロストに対抗する秘密組織の一員として登場します。その他、原作と同名の女性登場人物としては、葉蔵が寄宿するバアのマダムと、バアで働く女性の恒子(原作ではツネ子)が登場します。

HUMAN LOST』が問う「人間」「生きる」とは何か

HUMAN LOST』の世界では、人類の長年の夢であった無病長寿が達成される一方で、健康状態が徹底的に管理され、格差や汚染が蔓延する典型的なディストピアとして描かれています。ここでは、具体的にヒューマン・ロストしたモンスター達が登場する一方、寿命を前に自ら死ぬことすら許されない人間たちの有り様からも、「人間とは何か」「生きるとは何か」という問いが突きつけられているのではないでしょうか。

太宰治は、人間失格のレッテルを自ら貼った葉蔵のことを最後に「神様みたいないい子」と評し、代表作『斜陽』では「人間には生きる権利があると同様に、死ぬ権利もあるはずです」と記しています。原作も映画版も、時代背景や設定を異にしながら、「人間性」や「生」の本質について問いを投げかけていると言えるでしょう。

人間失格のアニメ版は「青い文学シリーズ」にもある

2009年に、俳優の堺雅人が各主役を演じた文学アニメ「青い文学シリーズ」でも『人間失格』は取り上げられています。こちらはDVDが発売済みですので、SFアニメ版の公開前に観てみては。『HUMAN LOST』は20191129日(金)より全国公開です。

HUMAN LOST』公式サイトは こちら

  • 商品名:青い文学シリーズ 人間失格 第1巻 [DVD]
  • 参考価格:3,670円(税込)
  • Amazon参考ページ:こちら
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