歌舞伎の女形俳優を紹介。研ぎ澄まされた芸と美しき姿を知る

2018.11.16

歌舞伎が他の演劇と異なる特徴として男性が女性を演じる女形がありますが、そもそもなぜ女形が歌舞伎に存在するのでしょうか?女形が歌舞伎に誕生した経緯や、歴史に残る名女形役者、これからの活躍が期待される若手女形などを紹介します。

歌舞伎の女形はなぜ必要なのか

歌舞伎の女形が生まれた背景には、歌舞伎の成立過程が大きく関係しています。歌舞伎における女形の歴史とその意味について見ていきましょう。

女優の代わりから始まった女形

もともと歌舞伎は女性が出演するものでしたが、その官能性が問題視され寛永6年(1629年)ごろに幕府によって女性の出演が禁止されます。

次に女性に代わり幼い男子が出演するようになるものの男色が広まったことが問題視され、男子の出演も禁止されます。

そして成人男性が出演し女性を演じるようになりました。これが女形という存在の始まりです。

まぼろしの世界に生きる夢の女性

女形では、男性がリアルな女性を演じるのではなく、女性らしさのエッセンスを取り出して『女らしさ』を誇張して見せます。時に現実に存在する女性よりも女性らしく感じられるのは、その技術が優れているからです。

その意味で女形が演じる女性は、舞台の上にしか存在することのない『まぼろしの女性』です。女性らしさのエッセンスを凝縮した夢の存在を、女形は表現するのです。

舞台をただ観るのではなく、このような女形の考えを意識して鑑賞すると、女形の優れた技術や工夫が見え、より深く歌舞伎を楽しむことができます。

昭和から平成を彩る女形俳優たち

これまで数々の役者が女形として活躍してきました。以下では著名な女形を紹介します。

四代目中村雀右衛門と七代目中村芝翫

四代目『中村雀右衛門』は人間国宝に認定された名役者です。子供時代から優れた演技を見せ、昭和25年(1950年)には映画『佐々木小次郎』に出演し大ヒットとなり、歌舞伎俳優が映画に出演するきっかけを作りました。

四代目『中村雀右衛門』襲名後は市川團十郎、尾上菊五郎などの相手役を務めながら数多くの舞台に出演します。

同時代に活躍した七代目『中村芝翫』は歌舞伎にとことんこだわった役者です。早くに父を亡くし頼った祖父もまたすぐに亡くなった七代目芝翫は、名優と名高い六代目尾上菊五郎の門を叩き『第三の父』と生涯慕い続けました。

歌舞伎俳優の映画出演が増えた時代にも歌舞伎以外には目もくれず芸を磨いた七代目芝翫は、舞踊の名手でもある優れた役者でした。

梨園外から頂点へ 五代目坂東玉三郎

五代目『坂東玉三郎』は現在最も有名な女形といっても過言ではない人間国宝の役者です。

料亭の息子として生まれ、幼い頃に小児麻痺のリハビリで舞踏を習い始めたことがきっかけで歌舞伎界入りした五代目玉三郎は、梨園(りえん)の出身ではない上に170cmオーバーの身長ということもあり、多くの確執を苦労しながら乗り越えてきました。

市川海老蔵(後に十二代目市川團十郎)との『海老玉コンビ』など、その美しさで若手時代から圧倒的な人気を集めます。また早いうちから歌舞伎以外のジャンルにも興味を示し、新派作品への出演や映画監督としても活動しました。

変幻自在の演技 五代目中村雀右衛門

五代目『中村雀右衛門』は、先ほど紹介した人間国宝・四代目中村雀右衛門の息子で、おっとりとした上品な若女形です。

その優れた演技には定評があり、幅広い役を演じることができます。現在の歌舞伎界を牽引する女形の一人です。

歌舞伎のこれからを担う女形俳優たち

次はこれからの活躍が期待される若手の女形を見ていきましょう。

平成の三之助 五代目尾上菊之助

女優・寺島しのぶの弟でもある五代目『尾上菊之助』は、七代目『市川新之助』(現十一代目市川海老蔵)、二代目『尾上辰之助』(四代目尾上松綠)と合わせて『平成の三之助』と呼ばれ歌舞伎界に新風を巻き起こしました。

テレビドラマ、映画に加え、蜷川幸雄が演出を務める舞台に出演するなど幅広く活動しています。

殺陣のできる女形 二代目中村七之助

二代目『中村七之助』は六代目『中村勘九郎』の弟で、2人で平成中村座やコクーン歌舞伎を盛り上げています。

また映画『ラストサムライ』の明治天皇役や宮藤官九郎が監督を務めた映画『真夜中の弥次さん喜多さん』への出演などで一般的な人気も高いです。

女形としては珍しく殺陣の技術が優れており、歌舞伎NEXT『阿弖流為』(アテルイ)での大立ち回りは話題を呼びました。

若手の注目株 五代目中村米吉

五代目『中村米吉』は先ほど紹介した人間国宝・坂東玉三郎も一目おく若手注目株の女形です。化粧をすると本当に女性と間違われることもあるというその美しさが人気を集めています。

歌舞伎の華、女形俳優に会いに行こう

ただ男性が女性を演じるだけではない女形を理解することで、より深く歌舞伎を楽しむことができるでしょう。ここで紹介した女形が出演する舞台へぜひ足を運んでみてください。

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