川端康成の名作『雪国』を映画で。映像化を誘う魅力とは?

2019.10.13

日本人で初めてノーベル文学賞を受賞した川端康成の代表作『雪国』は、過去に二度、映画化されています。この記事では、映画化された『雪国』について、登場人物やあらすじ、映像化したくなる魅力などをご紹介します。

川端康成の『雪国』とは

『雪国』は、1935年から1947年にかけて様々な雑誌に断続的に掲載された連作が、1948年に一冊にまとめられて完成しました。そんな『雪国』の登場人物とあらすじをご紹介します。

『雪国』の登場人物

島村 (しまむら)

親の遺産で生活し、細々と翻訳などをする悠々自適な文筆家。小太りで色白、旅と登山が趣味で、東京に妻子がいますが、駒子を訪ねて雪国の温泉町を訪れます。

駒子

故郷の港町から東京へ売られた後に受け出してくれた旦那に先立たれ、港町に戻って結ばれた旦那とも折り合いがつかず、温泉町の踊りの師匠の家に身を寄せています。幼馴染の行男の治療費のために芸者として座敷に立つようになりました。

葉子

温泉町出身の娘で、国鉄で働く弟が一人います。東京で看護師を目指しましたが、行男の看病のために温泉町へ戻ります。美しい声の持ち主で、どこか狂気の兆しを感じさせる張りつめた雰囲気が漂います。

行男

駒子の踊りの師匠の息子で幼馴染です。東京で夜学に通っていたが、腸結核にかかって母の故郷である温泉町に葉子とともに帰ってきますが、物語中盤で亡くなります。

『雪国』のあらすじ

年の暮れ、雪国へ向かう汽車の中、島村は病気の男(行男)を看病する美しい少女(葉子)に出会います。三人が汽車を降りた温泉町で、島村は、昨夏、登山の帰りに立ち寄った際に関係を結んだ芸者・駒子と再会。昼間、島村が駒子の住む踊りの師匠宅を訪れると、行男と葉子が身を寄せていました。やがて島村が帰京する日、駒子は、行男の危篤を知らせる葉子を振り切って、島村を駅に見送りに出るのでした。

翌秋、島村が温泉町に戻ると、行男も踊りの師匠も亡くなり、駒子は駄菓子屋に間借りした置屋に住んでいました。島村は、行男の墓所で葉子に遭遇し、後日、お座敷で忙しい駒子のために伝言を持ってきた葉子と言葉を交わします。その夜、駒子は島村にかけられた「いい女」という言葉を誤解し、心を乱します。

冬までの長逗留を続けた島村は、帰京のはずみにと温泉町を離れ絣作りの村を訪れます。宿への帰り道、駒子と遭遇した島村は、映画を上映していた繭倉が火事になったという現場へ駆けつけます。失神した葉子が二階から落下し、駒子は駆け寄って抱きかかえると「この子、気がちがうわ」と叫ぶのでした。

小説『雪国』の映画的要素とは

『雪国』には、映像化したくなるような美しい情景が、川端の巧みな文体で描き出されています。ここでは原作『雪国』が持つ映画的要素についてご紹介します。

映画体験をなぞる冒頭の名文

「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」という誰もが知る『雪国』冒頭の文章には、「夜の底が白くなった。」という一文が続きます。トンネル内の暗闇から一転、白い雪に覆われた世界へと切り替わるイメージは、まさに暗転した映画館の銀幕に光が照射され、映画世界へと引き込まれる体験になぞらえることができるでしょう。

日本初のアヴァンギャルド映画『狂った一頁』のシナリオを若い頃に手がけたことは、川端康成が映像的感覚を文章化するきっかけとなったと言われています。

美しく鮮烈な映像的表現

『雪国』の文章には、川端の映像的感覚が散りばめられていると言われます。例えば、冒頭の名文に続いて、島村が曇った車窓を指でなぞると、葉子の涼やかな眼差しが映り込み、窓の底には燃えるような夕景色が流れているという印象的な場面が登場します。

これは、本文中にも「写るものと写す鏡とが、映画の二重写しのように動く」と説明されています。さらに、物語の最後には、燃え上がる繭倉の前に横たわる葉子と、頭上に広がる澄み渡る天の河が鮮烈なコントラストと読後の余韻を生み出しています。

『雪国』の名作映画を紹介

映像的な魅力のつまった『雪国』は、どのように映画化されたのでしょうか。過去2回の映画化作品をご紹介します。

豊田四郎監督の『雪国』(東宝/1957年)

『雪国』を最初に映画化したのは、「文芸映画の巨匠」と言われる豊田四郎でした。島村を池部良、駒子を岸恵子、葉子を八千草薫が演じたモノクロ映画です。

ほぼ原作に忠実に描かれ、鏡とガラスを巧みに使った演出シーンにも原作の影響を見ることができます。映画のラストは、原作にはない島村が去った後の駒子と葉子が描かれており、二人の女性の運命により哀愁が感じられる演出となっています。

大庭秀雄監督の『雪国』(松竹/1965年)

『雪国』は、『君の名は』三部作でも知られる大庭秀雄監督によって再び映画化されています。島村を木村功、駒子を岩下志麻、葉子を加賀まりこが演じたカラー映画です。原作では回想シーンとして描かれる駒子と島村の出会いから、時系列通りに物語は進みます。モノクロ版には出せない雪国の美しい風情や岩下志麻の演技が評価されていますが、映画ファンのあいだでは東宝版の第一作に軍配が上がっているようです。

原作小説『雪国』を読むと映画も見たくなる

小説『雪国』を読むと、随所に散りばめられた自然描写や色彩のコントラストが想像力を刺激し、ぜひ映画で見てみたいという気持ちに。冒頭の一文しか知らない、という方には是非一読をお勧めします。

  • 商品名:雪国 (新潮文庫) 
  • 参考価格:389円(税込)
  • Amazon参考ページ:こちら

 

関連記事:雪国は、川端康成の最長恋愛小説。透徹した大人の恋愛を味わえる

関連記事:日本近代文学の巨匠『川端康成』。絶対に読んでおきたい代表作を紹介

関連記事:「伊豆の踊子」のあらすじは?ノーベル賞作家・川端康成の代表作

関連記事:川端康成の『古都』とは?小説を読んで古き良き京都を堪能しよう

関連記事:短編『抒情歌』に見る川端康成の死生観とは。自死にいたる文豪の思想にせまる

「小説」のその他の記事
その他のテーマ

ART

CULTURE

CRAFT

FOOD

TIME