ショーペンハウアーの哲学を名言とともに2000字で紹介。

2019.10.12

ショーペンハウアー(またはショーペンハウエル)は哲学史の流れのなかで位置づけることが難しい人物です。それは彼の哲学が、西洋哲学だけでなくインド哲学や仏教からも影響を受けているからです。独特のその思想を、名言とともに紐解いてみましょう。

ショーペンハウアーの生涯と主要な本

まずショーペンハウアーの生涯と、彼の主要な著作から見てみましょう。

晩年にようやく認められた在野の哲学者

アルトゥル・ショーペンハウアー(1788-1860)は19世紀のドイツの哲学者です。若い頃は哲学講師として研究や講義を行いましたが、当時のドイツはヘーゲル哲学が主流だったため受け入れられず、45歳で隠遁生活に入りました。

56歳のとき主著『意志と表象としての世界』が再版されると、徐々に名が知られはじめます。そして63歳のときに主著の注釈書『余録と補遺』を発表、これがベストセラーとなり、ショーペンハウアーは晩年にようやく有名となりました。

ショーペンハウアーの本にある厭世観

ショーペンハウアーの書いた本は、日本語訳でいくつも出版されています。上述の主著に加え、『余録と補遺』は分冊されて『幸福について』『読書について』『自殺について』などとして読むことができます。

本の題名からもわかるとおり、ショーペンハウアーはさまざまなテーマを考察した哲学者でした。しかしあえて彼の哲学の主題を挙げるならば、それはペシミズムつまり厭世観です。生きにくいこの世界でどう生きるか、ショーペンハウアーの本からはそんな達観と知恵が読み取れます。

悲しみのほぼすべては他人との関係から生まれる。

まざりあう東西の哲学

ショーペンハウアーの業績は、ただこの世を憂うのではなく、生きにくさの正体を世界の構造から解き起こし、さらにその解決方法まで提示した点にあります。その哲学には、古今東西さまざまな思想が取り入れられています。

西洋哲学からの影響

まずショーペンハウアーは、わたしたちが感じるこの世界と、世界そのものとを区別しました。これは「現象」と「物自体」とを区別したカントの思想をそのまま受け継いだ形です。わたしたちは世界そのものを知覚できない、知れるのはただその表象だとしたのです。

次にショーペンハウアーは、世界そのもののほうが真実の存在であるとします。これは古代ギリシアのプラトンの「イデア」と同様の考え方です。

ただプラトンがイデアを真実であり理想の世界と捉えたのに対して、ショーペンハウアーは真実は最悪であると捉えました。

インド哲学からの影響

なぜショーペンハウアーはこの世界の真実は最悪と捉えたのか、ここには、古代インドのウパニシャッド哲学が関係してきます。

最古の哲学であるウパニシャッド哲学では、宇宙の根本原理ブラーフマナ(梵)と、人間の根本原理アートマン(我)は本来ひとつであると説きます。この梵我一如を成立させる鍵として、ショーペンハウアーは「意志」を置きました。

わたしたちは日々、生存するという盲目的な意志のもと行動する。自然の行動原理も同じである。だとすればこの世界は生存競争の意志のるつぼで、しかもその意志は永遠に満たされることがない。だからこの世界は不完全で最悪だ、ショーペンハウアーはそう考えたのです。

富は海水のようなものだ。飲めば飲むほどに渇きをおぼえる。名声についても同じである。

仏教からの啓示、そしてニーチェへ

この世は永遠に満たされることのない苦しみである。こうした見方は仏教と同じです。そして仏教がこの苦しみからの解脱を目指すように、ショーペンハウアーもまた、解脱の方法を提示しました。

音楽によって解脱する

まずショーペンハウアーが提示したのは、芸術です。なぜなら芸術はこの生存意志にうずまく醜悪な世界から抜け出て、真に理想的な、それこそプラトンの言うイデアを直観することができるからです。

とくにショーペンハウアーが推したのは音楽でした。彼は同時代の音楽家ワーグナーとも手紙のやりとりをしていたことが知られています。ただ、音楽による解脱は一時的なものにすぎないともショーペンハウアーは言いました。

音楽とは、世界がその歌詞であるような旋律である。

意志の否定によって解脱する

そこで最終的にショーペンハウアーが提示したのが、意志の否定でした。生きたい、満足したい、もっとよくなりたいと思うから苦しみも続く、人生において大事なことは意志を放棄した諦観である、という考えです。これも仏教における「煩悩の火を消す」こととよく似ています。

これを突き詰めると、人間にとって最も良いこととは生まれてこないことです。こうしたペシミズムを多量にふくんだショーペンハウアーの哲学が、のちにニーチェに衝撃を与え、そしてその克服から超人思想が生まれてくることになります。

あきらめを十分に用意することが、人生の旅支度をする際に何よりも重要だ。

幸福について考えるきっかけになる哲学

1848年革命がドイツで失敗し、保守的な政治に後戻りしたころから、ショーペンハウアーは人気を博しました。それは社会の行き詰まりを、彼の哲学が代弁しているように思えたからです。

先が見えず、生きにくい世の中で、どのようにしたら幸せになれるのか。そんな時代にこそ、ショーペンハウアーの哲学と著作はわたしたちになんらかのヒントを与えてくれるのかもしれません。

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