ドイツ観念論を知るならシェリングも。彼の哲学を2000字で紹介

2019.10.09

ドイツ観念論の系譜のひとり、哲学者シェリング。しかし彼の哲学はカントやフィヒテ、ヘーゲルとくらべてあまり知られていません。シェリングはどんな人物だったのか、そしてどんな哲学を説いたのか、短くまとめました。

シェリングの経歴

まずはシェリングの経歴をかんたんに見ていきましょう。

神学校でヘーゲルと同室になる

フリードリヒ・ヴィルヘルム・ヨーゼフ・フォン・シェリング(1775-1854)はドイツ観念論の系譜につらなる哲学者のひとりです。年齢的にはフィヒテより13歳、ヘーゲルより5歳年下になります。

シェリングは早熟の天才だったようで、20歳以上の年齢制限のある神学校に、特例で15歳で入学しています。この神学校の寮で同室になったのが、のちの詩人ヘルダーリンと、そしてヘーゲルでした。かれら3人はすぐに意気投合し、厳しい寮生活のなか、神学よりも哲学や文学や自然科学などについて闊達な意見を交わしました。

共有された古代思想

こうした交友のなか3人は古代ギリシア思想についても精通し、やがて「一即全」という考え方を共有していきます。つまり主観と客観の対立をこえた絶対的な何かが真実の存在であり、世界はその現れであるという、古代から連綿とつづく思想です。

この思想をもとに、やがてシェリングもヘーゲルもドイツ観念論を体系化していくことになります。ただ現実において二人が違っていたのは、シェリングのほうが出世が早かったことでした。1798年、シェリングはフィヒテも在籍するイェーナ大学の助教授となり、翌年には24歳にして哲学科の正教授となります。

シェリングの「同一哲学」

次に、シェリングの哲学を見ていきましょう。

フィヒテの自我への批判

シェリングは当初、フィヒテの思想に傾倒し、フィヒテ哲学の紹介者として世に出ました。しかしフィヒテの去った後釜としてイェーナ大学の正教授になったころから、徐々にシェリングは独自の思想を展開していきます。

フィヒテによれば、この世界を一元的に説明する原理は「自我」でした。この個々人の自我は、現実にあるさまざまな障害(=非我)を乗り越えて「絶対我」に到達しようとします。よって、フィヒテ哲学における究極の存在は「絶対我」ということになります。

しかし絶対と名のつくからには、障害に邪魔されるのはおかしい。シェリングはこう批判したのです。

精神も自然も根は同一だ

シェリングは言います。絶対的な存在であるからには、それはもはや自我とは呼べず、絶対者である。絶対者は人間の精神とこの自然と、両方の根底にある。フィヒテが自我・非我と区別したのはあくまで見かけのことであって、両者とも本質は同じ、絶対者の自己展開なのだ、と。

つまりシェリングは、精神と自然とを差別せず、同一のものから生じるとしたのです。これが「同一哲学」と呼ばれる所以です。

同一哲学からの面白い帰結

しかし実際のところ、このわたしの精神と身の回りの物体とは、ずいぶん違って見えます。シェリングはこの違いを、要素の量で説明します。

自然にも精神がある

人の精神には精神の要素が多くあって、逆に自然には、自然の要素が多く精神の要素は少ない。シェリングはこのような量的な違いで、精神と自然との区別を説明しました。

こうしたシェリングの考えによれば、自然にも微量ながら精神の要素があるということになります。つまりシェリングはこの段階で、デカルト以来の機械論的自然観と決別するのです。実際、シェリングは自然にも精神性の段階があって、物質から有機体へと展開すると考えました。

芸術によって絶対者を直観する

またシェリングは、精神にも精神性の段階があると説き、理論哲学・実践哲学・芸術哲学へと昇っていくと捉えました。そして芸術家が絶対者を直観し、それを作品で表現しようとすることこそ精神のもっとも高いところだ、と唱えました。

このような芸術に高い地位を与えるシェリングの哲学は、当時のロマン派から共感を得てひろく支持されました。一方で、直観というあやふやな方法はヘーゲルから痛切に批判され、ふたりの友情はやがて壊れていきました。

シェリングが晩年に提唱した積極哲学

ヘーゲル哲学が主流になると、シェリングの哲学は人気がなくなり、晩年の彼の講義は出席者がずいぶん少なかったようです。そして21世紀の現在でも、フィヒテやヘーゲルに比べるとシェリングはあまり名を知られていません。

しかしシェリングは晩年、本質や存在の可能性といった議論ではなく、実際の現実存在を議論の中心にしようという「積極哲学」を提唱しています。当時は人気のなかった講義ですが、いま彼の後期哲学は、実存主義との関連から注目を集めています。

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