芥川龍之介の名作短編『羅生門』。あらすじでは分からない味わいとは?

2019.10.05

教科書にも繰り返し掲載されてきた芥川龍之介の名作短編『羅生門』は、短いストーリーの中に、あらすじでは語りきれない魅力が詰まっています。この記事では、そんな『羅生門』の深い魅力を味わうために、漫画化作品や映画化作品をご紹介します。

芥川の初期名作短編『羅生門』とは

『羅生門』は芥川龍之介が帝国大学在学中の1915年に発表され、当初は評価されませんでしたが、芥川の名声の高まりとともに文学的価値が見直されました。ここでは、『羅生門』あらすじと、あらすじだけでは分からない文学的魅力をご紹介します。

『羅生門』のあらすじ

飢饉や疫病が蔓延していた平安時代のある日、主人から暇を出され、盗みでもしようかと決めあぐねている男が、羅生門の下で雨宿りをしていました。

とにかく夜を越そうと楼上を登っていくと、女の死体から髪を抜く老婆に遭遇し、悪事を働く相手に怒りの念を抱きます。刀を抜き老婆を抑えつけると、老婆は自分の行為を正当化するのでした。

老婆の自己弁護に勇気を持った男は、自分が生きるためには仕方がないのだと老婆の着物を剥ぎ取り、夜の闇に消えて行きました。

あらすじだけでは分からない『羅生門』の魅力

このように短いあらすじで伝えられる単純な筋書きの『羅生門』が、名作短編として読み継がれてきたのは何故でしょうか。

その理由の1つは、飢饉や疫病にあえぐ都の荒廃した雰囲気を巧みに伝える濃密な描写です。屍肉をついばみに飛びまわる鴉すらおらず、その糞の跡だけが残る暗く閑散とした雰囲気や、死人の頭から老婆が一本ずつ髪抜き取る様子など、読み手の臨場感と恐怖感を煽るように書かれています。

『羅生門』のもう1つの面白さは、徐々に転換していく主人公の心理表現が巧みさです。冒頭では頰に出来たニキビを気にしながらぼんやりと身の振り方を考えていた男が、身も凍るような恐怖や激しい憎悪、そして大胆な勇気へと心持ちを変化させる様子が、巧みな状況描写の助けを借りて見事に描き出されています。

『羅生門』は、原稿用紙で十数枚の短編ですので、ぜひ濃密な状況描写と登場人物の心情表現を原文で味わってみてください。

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『羅生門』を漫画で味わう

短文のあらすじでは分からない羅生門の面白さを味わう方法には、原文に当たるほか、要点を押さえた翻案に触れることが挙げられるでしょう。ここでは、手軽に楽しめる翻案として漫画で描かれた『羅生門』の作品をご紹介します。

短編間に繋がり?『まんがで読破』シリーズ

数々の名作文学を漫画化してきたバラエティワークス企画の『まんがで読破』シリーズで読む『羅生門』です。他に、芥川の王朝物と呼ばれる『藪の中』と『偸盗』が収められています。『羅生門』の男と『藪の中』の盗賊、『羅生門』の老婆と『偸盗』のお婆が同じ人物のように描かれていて、登場人物の繋がりを推測させます。

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現代向けにこだわった『マンガで BUNGAKU』シリーズ

2018年より刊行されている三栄書房の『マンガで BUNGAKU』シリーズでは、芥川の別の短編『地獄変』をメインに、『羅生門』『藪の中』が一冊に収められています。現代向けにこだわったというシリーズで、少女漫画のようなきれいな線と躍動感のある作画で、オリジナルの漫画作品のように楽しめます。

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エッセンスがぎゅっ。『有名すぎる文学作品をだいたい10ページの漫画で読む。』

又吉直樹がテレビ番組で勧めて以来、反響の大きいドリヤス工場が描く「史上最も肩肘張らない文学入門書」です。ドリヤス工場は、水木シゲルにそっくりな絵柄でオリジナル作品や文学作品のマンガ化を手がける移植の漫画家です。『藪の中』はわずか6ページと言う短さにまとめられていますが、読後の衝撃は原作にも劣らない力強さを感じさせます。

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『羅生門』を映画で味わう

『羅生門』の翻案として最も知られている作品は、黒澤明監督による映画作品でしょう。1950年に公開され、ヴェネチア国際映画祭で日本人初の金獅子賞を受賞したあまりにも有名な作品です。

しかし、この映画『羅生門』の大筋ストーリーは、一人の男の殺害をめぐって食い違う3つの証言を記した『藪の中』を典拠としています。『今昔物語集』の2つの説話を原案として『羅生門』を執筆した芥川同様に、黒澤も芥川の2つの短編を基に映画を構成。結末に、事の顛末を杣売りから聞いた男が羅生門に置き去りにされた赤子から着物を奪って逃げるが、杣売りはその赤子を自らの子とすべく連れて帰るという、わずかな希望が感じられるエピソードが加えられました。

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名作『羅生門』には舞台版翻案も

漫画化、映画化の対象となってきた名作『羅生門』は、2017年の『百鬼オペラ「羅生門」』や、2019年春の六本木歌舞伎など、近年の舞台でも魅力的な翻案作品が生み出されています。教科書で広く読まれ時代を超えた名作の魅力を多方面から楽しんでみるのも新たな発見があるかもしれません。

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