獺祭の種類とおいしい飲み方。人気の理由や名前の由来も解説

2019.09.29

『獺祭』は日本酒を代表する純米大吟醸酒として進化し続けています。獺祭の人気の秘密と合わせ、魅力的な会長と社長が舵をとる蔵元『旭酒造』や、獺祭の由来、おいしい飲み方、またニューヨークで造られる新銘柄に注目しましょう。

獺祭とは?

『獺祭』(だっさい)は1990年の発売から現在に至るまで、誰もがおいしく飲める酒を目指して進化し続けています。

『純米大吟醸酒』の最高峰の一角であり、いまや日本酒業界を牽引する存在ともいえる獺祭の魅力を探っていきましょう。

山田錦だけを使った人気の日本酒

山口県の酒蔵・旭酒造が醸す『獺祭』は、『酒米の王者』として名高い最高級品種『山田錦』100%で作られた純米大吟醸酒です。

山田錦を精米歩合50%以下まで磨き上げた米と、米麹、天然水を原材料とし、山田錦の魅力を最大限に引き出しているのが特徴です。誰でも一口で「他の日本酒とは違う」と気付く味わいとなっています。

日本酒醸造の常識を覆すさまざまな試みがメディアで紹介されたこともあり、日本国内での消費は年々増加しており、2016年には年間売り上げ100億円の大台を突破しました。

さらに、欧米諸国を中心に30カ国以上にも及ぶ海外展開も盛んで、19年2月には海外売り上げが国内売り上げを逆転するほどの世界的人気を博しています。

過去には2~3倍の価格に高騰

広告でのPR戦略を一切行わない旭酒造ですが、2017年末に「お願いです。高く買わないでください」と大きく書かれた新聞広告を出しました。広告を通じ、獺祭を定価より高い価格で買わないように消費者にお願いしたのです。

獺祭はもともと「山口の山奥の小さな酒蔵」で作られていましたが、高まる需要に応えるため、15年に建て替えが完了した12階建の本社蔵で生産数を増やしています。

それでも需要過多が続く中、本来は正規取扱店だけに直接卸される獺祭が、ブローカーの手によって転売され、スーパーや百貨店などで定価の2〜3倍で売られる事態となったのです。

この状況を憂いた桜井一宏社長が、獺祭を「幻の酒」にしないために、TV出演までして適正価格で購入することを呼びかけたというエピソードがあります。

獺祭が人気の理由

獺祭の人気の理由は、伝統製法の常識を覆す革新的な製法と、徹底的に吟味された原材料から作り出される味が第一です。

獺祭を生み出し、2016年まで社長を務めた三代目蔵元『桜井博志会長』の魅力も外すことはできません。

飲みやすいすっきりとした味

獺祭は、華やかな吟醸香とフルーティーな味わい、それにフレッシュな口当たりを感じられる味が特徴です。一部の日本酒通だけが分かる味ではなく、誰もが「おいしい」と感じられるのを大切にしています。

旭酒造は適正価格で飲む、徹底して風味にこだわったおいしい酒造りを貫いています。ポリシーにも「酔うため 売るための酒ではなく 味わうための酒を求めて」とうたわれるほどです。

象徴的な例として、2011年頃では、供給が追いついていない中でも最高品質の山田錦と手間のかかる製造方法にこだわり、一部商品では原価割れを起こしていながらも低価格で販売を続けていました。

これは13年にやむなく値上げを行うという形がとられましたが、顧客志向のスタイルが表れた好エピソードといえるでしょう。

こだわりの製造方法

獺祭ブランドの全ての酒は、精米歩合50%以下で醸造アルコールは一切不使用という、最も手間のかかる純米大吟醸酒です。

20代、30代の社員が多い旭酒造では、日本酒醸造に必須と考えられてきた責任者・杜氏(とうじ)が不在で、経験と勘に頼らない『徹底したデータ管理と情報の視覚化』を行なっています。

精米には4〜7日をかけ、洗米の工程は『全て手作業』で0.3%以下の精度で水分調整し、全工程の厳密な温度管理を行った結果、『通年醸造』を可能にしているのです。

さらに、山田錦の安定生産のために富士通の食・農クラウド『Akisai』(秋彩)を導入するなど、ICTやAIを活用し、人間と機械の得意分野を統合させた独自の製造方法を構築しています。

度重なるメディア進出

獺祭は、2011年に桜井博志会長(当時社長)がTV出演し、5種類の水から獺祭で使われる天然水を「香りだけで言い当てた」ことで一躍有名になりました。

13年には山口県出身の安倍晋三首相からプーチン大統領へ、14年にはオバマ大統領へ獺祭がプレゼントされたことで、国内のみならず『Japanese Sakeの代名詞』として海外でも人気に拍車をかけました。

さらに、18年の西日本豪雨の影響で旭酒造の品質基準に届かなかった獺祭を、売り上げの一部を義援金として寄付する『獺祭 島耕作』として発売した際には、65万本がほぼ即日完売するなど、話題に事欠きません。

獺祭の意味や生まれたきっかけ

獺祭の誕生に関しては、桜井博志会長の伝説的エピソードが有名です。十分すぎるほどに結実している『獺祭』に込められた想いと、『磨き二割三分』を生んだ革新の始まりをみてみましょう。

元々はかわうそに由来する言葉

旭酒造の本社蔵は『獺越』(おそごえ)という地域にあり、これは「川上村の古い獺(かわうそ)が、子供を化かして追い越してきた」ことに由来する名称だとされています。

また、獺越の1字を含む『獺祭』という言葉には、以下の二つの意味があるのです。

  • 獺が自分のとった魚を並べるさま。人が物を備えて先祖を祭るのに似ている
  • 詩文を作るとき、多くの参考書を周囲に広げておくこと。中国唐代の詩人・李商隠が、多くの書物を参照し自らを『獺祭魚』と号したことに由来する

獺祭に込められた思い

明治期の俳人・正岡子規は、李商隠のように高名な詩人を目指して自らを『獺祭書屋主人』と号して、1893(明治26)年には『獺祭書屋俳話』を連載し、俳句の革新運動を開始しました。

1980年代には倒産寸前だった旭酒造が、普通酒を捨て、ノウハウを持たない純米大吟醸酒を創ることを決めたとき、獺祭ブランド1本で勝負する右肩上がりの成長が始まったのです。

いまや『奇跡の酒蔵』とも呼ばれる旭酒造は、「酒造りは夢創り、拓こう日本酒新時代」をキャッチフレーズに、伝統に甘んじることなく、正岡子規のように変化と革新の中から優れた酒を創り出そうと邁進しています。

最後までこだわった精米歩合

『精米歩合』とは、精米機で米を磨き上げる際の、玄米重量に対する白米重量の割合を指します。

米の表面部分に含まれるタンパク質や脂肪は雑味や老香の原因となるため、おいしく香り高い酒を醸す基盤として精米歩合の低さが重要なのです。

旭酒造は1984年から純米大吟醸酒の研究開発を進め、90年には精米歩合50%と45%の獺祭を発売し、92年には業界随一の磨き『二割三分』(23%)の獺祭を売り出しました。

当時の最低値とされた27%を凌ぐ25%に磨く計画だったところを、桜井博志会長(当時社長) が「他社で24%もある」と聞くと23%に急遽変更し、2%を磨くためにさらに24時間(都合7日間)を費やしたという逸話が残されています。

獺祭の種類

ベーシックな『獺祭』は、以前は精米歩合50%だったものが現在は45%となっています。獺祭を特徴付ける『二割三分』をはじめ、よりおいしい獺祭を求めた高級酒の特徴もみていきましょう。

二割三分や三割九分などの磨き

獺祭は精米歩合によって、「45%」「39%(三割九分)」「23%(二割三分)」の3種類でグレード分けされます。

ベーシックな45%のものは『獺祭 純米大吟醸45』として販売され、1800mlの一升瓶で税込3240円と、山田錦100%の純米大吟醸酒としてはかなり低価格です。

三割九分と二割三分は『獺祭 磨き』シリーズとして販売されます。三割九分は華やかな上立ち香と蜂蜜のようなフルーティーな味わいを誇り、これぞ純米大吟醸酒という仕上がりです。

山田錦の大きな『心白』(しんぱく)を極限まで磨き上げた二割三分では、さらに豊かな香りと甘味に加え、後口のキレのよさと長く続く余韻が楽しめ、老若男女問わずおいしく味わえます。

遠心分離シリーズ

日本酒は通常、米麹を発酵させたもろみを機械的に絞って酒粕と原酒に分離します。この伝統製法では、原酒に残っている不純物をとり除くためのろ過が行われ、ろ過を行わないものは『無濾過』として販売されるのです。

『獺祭 遠心分離』シリーズでは、もろみを遠心分離機にかけて無加圧で分離した原酒と、伝統的な圧搾法の原酒をブレンドし、嫌味のない香りやふくらみにパンチを加え、繊細かつ複雑な味を表現しています。

遠心分離シリーズには磨き三割九分と二割三分があり、二割三分のものは後述の『その先へ』に次ぐ高級酒です。

最高級ランクのその先へ

2012年末に発売された『獺祭 磨き その先へ』は、二割三分で高精米日本酒における一つの理想形を創り上げた旭酒造が、二割三分を超える酒を目指して創り出した最高級ランクの酒です。

不当な価格吊り上げを嫌う旭酒造が、海外展開を行う上で衝突する壁は、高価格帯のワインとの競合でした。

ワインは一本数十万円もするものもあり、『Japanese Sake』を本気で売り込むためには、価格に見合った最高品質の高級日本酒を創る必要があったのです。

『獺祭 磨き その先へ』は10年以上の構想・開発期間を経て発売された酒で、05年に海外展開を始める以前から練り込まれていたことになります。『獺祭 磨き 二割三分』と飲み比べることで、その魅力を確かめられるでしょう。

獺祭のおいしい飲み方

おいしい獺祭を余すことなく堪能するには、獺祭向きの飲み方を考えることが重要です。細部にまでこだわり抜く旭酒造がおすすめする温度やグラス、品質を保つための保存方法について紹介します。

獺祭を適温で飲もう

獺祭は香り豊かで非常に軽やかな酒であるため、燗酒よりも冷酒か『冷や』(常温)で飲むのがおすすめです。

冷蔵庫から出して10分ほど経った約10℃の『花冷え』(はなびえ)で飲むと、飲み始めは冷たく爽快で、口の中で温められ華やかな香りが広がります。

旭酒造おすすめの適温は10〜12℃です。約5℃の雪冷え(ゆきびえ)では香味を感じにくいので、冷えすぎには注意しましょう。

上立ち香(うわだちか)や甘味を楽しむなら冷やがおすすめです。複雑な味わいの『獺祭 磨き その先へ』では、12℃から約15℃の涼冷え(すずびえ)を経過していく香りと旨味の変化を楽しむことが推奨されています。

グラスにもこだわると良い

日本酒らしくない飲み方と思われるかもしれませんが、獺祭の豊かな上立ち香を楽しむなら小ぶりなワイングラスで飲むのがおすすめです。

飲む前に鼻の前で軽く揺らしてから口に注ぎましょう。このとき、薄めのグラスの方が口当たりよく飲むことができます。

適当なグラスが見つからなければ、旭酒造が販売する『獺祭 星付きグラス』がおすすめです。これは90mlの位置に星印がついたグラスで、2杯飲めば1合と分かりやすく、上品に獺祭を味わえる仕様になっています。

保存方法にも気を付ける

獺祭は繊細な純米大吟醸酒であるため、冷蔵庫で保存するのが基本です。生酒(なまざけ)や後述の発泡日本酒でなければ、酒を劣化させる直射日光を避けた冷暗所で保存することもできます。

生酒は殺菌のための火入れ(加熱処理)を行っていないため、開封しなくても保存期間は1週間ほど、その他の獺祭でも1〜2カ月内に消費するのが基本です。

また、どんな酒でも開封すれば酸化が進み品質が劣化するだけでなく、雑菌の混入で日持ちしにくくなります。開封後は2、3日内ほどを目安に早めに消費しましょう。

獺祭は日本酒以外にもある

旭酒造は獺祭ブランド1本で勝負する酒蔵ですが、発泡日本酒・甘酒・焼酎といった、『獺祭 磨き』シリーズの変則的バリエーションともいえるような商品展開も行なっています。

獺祭 純米大吟醸 スパークリング

『獺祭 純米大吟醸 スパークリング45』は、平成以降注目を集めている『発泡日本酒』の1種で、シャンパンと同様の製法で作られる、スパークリングワインのような酒です。

『獺祭 純米大吟醸45』をベースとして、もろみを火入れせずに酵母が生きた状態で瓶詰めする『瓶内二次発酵方式』を採用し、消費者の手元に届くまでに自然に炭酸ガスが生成されます。

甘味と炭酸の爽快さを味わえる、フランス流に『食前酒』(アペリティフ)として飲むのに適した酒です。

常温保存したり開栓前に瓶を揺らしたりすると栓が飛ぶ危険があり、炭酸も抜けて味わいが損なわれるため、冷蔵保存して静かに開栓しましょう。

獺祭 甘酒

『獺祭 甘酒』は山田錦の『等外米』を原料とした、無添加・ノンアルコールのヘルシーな麹仕立ての甘酒です。

等外米とは、粒揃いの悪さなどから酒米に向かないとして格付けされない米で、甘酒の原料としては品質的に問題ありませんが、これを使うと純米大吟醸酒と名乗ることができません。

どんなに優れた農家が作った山田錦にも5〜10%ほどは等外米が含まれるとされ、農家の経営を助けるためにも旭酒造はこれを買いとり、甘酒として活用しているのです。

健康志向の影響で注目を浴びる甘酒ですが、山田錦100%の、旭酒造の技術で作られるものは抜群の品質といえるでしょう。

獺祭 焼酎

『獺祭 焼酎』は知る人ぞ知る獺祭ブランドの焼酎です。獺祭の酒粕から作られた吟醸香の豊かな粕取り焼酎で、精米歩合50%以下の山田錦由来の酒粕をそのまま蒸留して作られます。

焼酎業界では、酒税の低いアルコール度数20度や25度に加水して瓶詰めされるものが主流ですが、『獺祭 焼酎』は39度というかなり強い酒です。

生産数が少ないため入手する経路は限られますが、焼酎らしい非常に強い辛味と、獺祭らしいフルーティーな甘みと芳醇な香りが楽しめる逸品となっています。

アメリカのニューヨークに進出

2005年から海外展開を始め、現在は30カ国以上で獺祭を販売している旭酒造ですが、特に力を入れているのがニューヨークです。

日本だけには止まらない獺祭の挑戦の一端を紹介します。

ニューヨーク郊外に大規模な酒蔵を新設

旭酒造はニューヨークの料理学校『CIA』(カリナリー・インスティテュート・オブ・アメリカ)と提携し、CIAと道路を挟んだ約6万2000平方メートルの広大な土地に酒蔵新設を進めています。

2020年に完成予定の新酒蔵では、現地調達した市販米を使った、純米大吟醸酒に特化した酒造を進める計画です。

現在のアメリカで流通する日本酒は、現地生産のチープなものと、日本から輸入した高級日本酒に二分化されており、低コストで味が一流の新ブランドを創ることが目指されています。

アメリカにおける日本酒ブーム

日本酒の国内出荷量は減少の一途をたどっています。一方で、2018年の輸出量は出荷量全体の5%にも満たないものの、輸出額は200億円台から年々上昇しています。

獺祭の国内・海外での消費の伸びをみれば、海外での『日本酒ブーム』に説得力が増すようにも思えますが、桜井一宏社長によれば、まだまだ日本酒は「分かる人には分かる酒」の域を出ていないといいます。

獺祭が飲める店はニューヨークだけで約40件あり、SAKEの認知度は高まっているとはいえ、あくまでブレイク直前であり、ここからブレイクするかどうかの分かれ道にあるのです。

打倒獺祭を目指して

CIAと提携するニューヨークの新酒蔵では、獺祭という名を使わない新しいブランドとして展開していくことが計画されています。

現在、ニューヨークでは桜井博志会長が『打倒獺祭』を掲げて新銘柄の開発を行っており、獺祭と新銘柄が競い合って海外市場に浸透していくことが目指されているのです。

海外での本当のSAKEブームが起こるときには、日本に伝わる情報のインパクトと新銘柄を逆輸入する声の高まりで、国内での日本酒が元気をとり戻し、メジャーな酒として広く飲まれるようになるかもしれません。

人気の獺祭を飲んでみよう

「山口の山奥の小さな酒蔵」から始まった獺祭は、いまや日本を代表する日本酒として、国内外で確固たる地位を築いています。

獺祭を創り出した三代目蔵元の『桜井博志会長』と、獺祭を進化させ続ける四代目蔵元の『桜井一宏社長』が織りなす熱いドラマからも目が離せません。

これからも日本酒業界を牽引していくであろう獺祭と、ニューヨークで生み出される新銘柄を、飲み比べられる日も近いでしょう。

日本の『国酒』である日本酒の魅力を、先端を行き続ける『獺祭』で味わってみてはいかがでしょうか。

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