映画でも、舞台でも。谷崎潤一郎の代表作『細雪』を味わいつくそう。

2019.09.26

谷崎潤一郎の代表作にして昭和日本文学の金字塔とも言える『細雪』は、これまで3度映画化され、毎年のように舞台が上演されています。この記事では、そんな『細雪』の映画化作品と舞台化作品についてご紹介します。

谷崎潤一郎の原作『細雪』について

『細雪』は、1943年に『中央公論』に連載を開始しましたが、時局にそぐわないとして掲載中止となりました。ようやく全巻が出版されたのは1949年です。ここでは、その後ベストセラーとなった小説『細雪』について、概要をご紹介します。

小説『細雪』とは

『細雪』は、1936年春から1941年の秋までの期間、大阪の旧家の日常生活やその変化を綴った、上・中・下巻にわたる長編小説です。

旧家の格式を重んじ本宅を守る長女の鶴子、分家の奥様として妹たちと本家との板挟みに悩む次女の幸子、縁談を断り続けて三十路に差し掛かった三女の雪子、自由奔放でスキャンダルを巻き起こす四女の妙子の4姉妹が主人公で、三女の雪子の見合い話の進展と四女妙子の奔放な男関係を主軸に物語は展開します。

『細雪』には、明治以降、独自の近代的な文化が発展し、阪神間モダニズムと称された頃の大阪や芦屋で繰り広げられる上流階級の豪華絢爛な生活が、生き生きと表現されています。と同時に、江戸時代から続く大阪船場文化の衰退も描かれています。

そこに見出される美や時代の流れが、姉妹の行く末と重ねられ、多くの読者を惹きつけました。

『細雪』のあらすじ

やや傾きかけた旧家・薪岡家の三女・雪子は、縁談がうまくいかず30歳にして未婚でしたが、四女・妙子の駆け落ちの汚名を、誤って着せられてしまいます。

その後誤解は解け、雪子に新しい縁談が持ち込まれますが、家族に精神病患者がいたり、無神経さが鼻についたり、先方から断られたりとなかなか上手くいきません。

一方、妙子は、人形作りや洋裁に熱中する一方、身分の低い男と恋に落ちたり、バーテンダーやかつての駆け落ち相手と付き合ったりして、本家の鶴子から絶縁されてしまいます。

やがて、雪子は子爵の庶子である男との縁談がまとまり、妙子は子どもを内密に死産した後、バーテンダーと所帯を持つことになります。雪子はようやく決まった縁談にも明るい顔をせず、下痢が止まらないのでした。

『細雪』の映画化3作品を比較

上流階級の淡々とした日常生活を描く小説『細雪』はこれまでどのように映画化されてきたのでしょうか。過去の映画版3作を比較してみましょう。

1950年、看板女優を起用した新東宝版『細雪』

『細雪』は、全巻が刊行された翌年の1950年に早くも映画化されています。

長女の鶴子を花井蘭子が、次女の幸子を轟夕起子が、雪子山根寿子が演じています。末娘の妙子を演じた高峰秀子は、戦前より名子役として数々の映画に出演してきた新東宝のトップスターで、原作者の谷崎とも亡くなるまで交流があったそうです。

製作費3,800万円を投じた大作で、セットは細部までこだわりを見せ、妙子が遭遇する洪水のシーンでは特撮が使用されています。阿部豊監督による本作が最も原作に忠実だと評されています。

1959年、京マチ子を起用した大映版『細雪』

当時の大映の看板女優を起用し、時代設定を発表時の1959年に置き換えて制作されたのが、島耕二監督による大映版『細雪』です。

10年前の1949年に『痴人の愛』で妖艶なナオミを演じた京マチ子が次女の幸子を演じ、雪子を演じた山本富士子とともに関西出身らしい見事な船場言葉を操っています。

3作のなかで最も大胆にストーリーを改変しているとされますが、雪子や妙子の人物像は原作よりも感情移入しやすくなっています。

島耕二監督らしいメロドラマ調の演出とカラー版ならではの華麗な映像も見どころです。

1983年、吉永小百合出演・市川崑監督の『細雪』

『犬神家の一族』などで知られる名映画監督の市川崑が、前作から20年以上経って『細雪』を再映画化しました。

内気でミステリアスかつ思わせぶりな雪子という役を見事に演じた吉永小百合は、その後3本の市川作品に出演しています。

長女・鶴子を岸恵子、次女を佐久間良子、三女を古手川祐子と、いずれも関西にゆかりのない女優たちが演じているにも関わらず、歯切れの良い船場言葉を操り、豪華な着物を隙なく着こなしています。

カット割りが細かくテンポも早い市川作品なので、他愛のない会話の続く2時間半もあっという間です。

名女優と元タカラジェンヌの共演が楽しめる舞台版『細雪』

映画版でもそれぞれに魅力ある女優が演じてきた薪岡姉妹ですが、『細雪』は1984年以降毎年のように舞台化されていて、通算公演回数は1500回を越えています。

八千草薫や南野陽子など名女優たちとともに元タカラジェンヌたちがキャスティングされることが多く、2019年の明治座公演は、キャストを一新して、鶴子を浅野ゆう子、幸子を一路真輝が演じています。

おそらく来年以降も見ることができますので、映画での『細雪』とあわせて見比べてみてはいかがでしょうか。

不朽の名作『細雪』はドラマにも

繰り返し映画化、舞台化されてきた『細雪』はもちろんテレビドラマ化も過去6回を数えます。2018年には、中山美穂が鶴子を演じ舞台をバブル崩壊期に置き換えた『平成細雪』が制作されました。次はどんな女優たちが4姉妹を演じてくれるのか楽しみですね。

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