20世紀文学界の巨星「ゴーゴリ」。その生涯や代表作のあらすじを紹介

2019.09.24

ニコライ・ゴーゴリ(1809年~1852年)はロシアの小説家、劇作家です。ロシア・ロアリズム文学の祖といわれたゴーゴリ。日本文学にも強い影響を与えた彼の幻想性に富んだ代表作や、どのような人物だったのかご紹介します。

ニコライ・ゴーゴリについて

生い立ち

小ロシア、ポルタバ近郊ソロンツイの小地主にして、ウクライナ語で書く素人劇作家であった父親のもとに生まれます。父の影響もあり、中学生のころから文学、演劇に興味をもつ一方で、将来は国家に貢献したいという強い志をもっていたと言われています。

卒業後は、ぺテルスブルクで官職を得ようとするものの得ることができず、在学中に書いた田園詩「ガンツ・キュヘリガルテン」を自費出版しますが、こちらも酷評を受け、残った部数を書店から回収して焼却してしまいます。生活のために下級官史となって新聞や雑誌にエッセーなどを投稿する日々が続きます。

プーシキンとの出会い

雑誌に無署名で発表した中編がきっかけになって、ロシアの詩人であり作家のプーシキンらと親しい付き合いをするようになります。その後、ウクライナの民俗や伝説を取材した物語集が好評を得て、一躍有名作家の仲間入りを果たします。プーシキンからも「明るくユーモアに満ちたロマン的色彩のある物語で、細部までリアルに描写され独特なファンタジーも持ち合わせている」と賞賛されました。

作品の特徴

ゴーゴリ作品の魅力は、あり得ない荒唐無稽な話を上手に書くセンスやユーモアに長けているところです。作者自身の顔をさらけ出したり、同情心を示す作家ではありませんでした。シュールな世界観を描きながら、日常のリアルを表現する描写が見事です。

ゴーゴリの代表作のあらすじ

「鼻」1836年

理髪師のイワン・ヤーコウレヴィッチが朝食をとっていると、パンの中から人の鼻が出てきました。その鼻には見覚えがあり、常連客の小役人コワリョフのものだと気が付きます。鼻をネヴァ川へ捨てようとしたヤーコウレヴィッチは警察官に見つかってしまいます。

一方、コワリョフは目を覚ますと鼻がなくなって、のっぺらぼうになっていて仰天しました。鼻は見つかり、鼻を持って病院へ行きますが治療を断られます。ある日、鼻は元に戻りコワリョフはご機嫌な日々を過ごすようになったといいます。

「外套」1842年

我々はみなゴーゴリの「外套(がいとう)」から生まれ出た。とドストエフスキーが語ったというのは有名なエピソードです。ドストエフスキーの「貧しき人びと」の背景と同じ、ロシアの貧しい人々の生活が描かれています。

下級役人のアカーキイ・アカーキエウィッチは、修繕に修繕を重ねた外套がもはや修繕不可能となってしまい、外套を新調しますが、その費用は大変なものでした。ようやく新しい外套を着たその日の帰りに、大切な外套を盗賊に奪われてします。外套を取り戻そうと必死に警察や有権者に頼みますが相手にされず、熱に倒れて死んでしまいます。

アカーキイが死んでから夜な夜な官吏の職員の幽霊が外套を探して、道行く人から外套を剥ぎ取るという噂が流れます。有力者は幽霊になったアカーキイに外套を奪われ、それからアカーキイの幽霊は見られなくなりました。

「死せる魂」1842年

ゴーゴリの長編小説です。ロシア版のダンテ「神曲」を自らの手で書くつもりだったゴーゴリですが、プーシキンの死の知らせにショックを受け、何も書く気力が無くなりました。イタリアで少しずつ執筆を再開し書かれた作品ですが、ゴーゴリは最晩年に発狂し第2部を焼き捨ててしまいました。

詐欺師のチチコフは、大地主になるために死んだ農奴を買い集める悪巧みを計画していました。広大なロシアを旅しながら死んだ農奴を安値で買い集め、生きた農奴として登録し国からお金を受け取ろうとします。チチコフの行いを通して、ロシアの腐敗した農奴制を描写しています。

映画化されたゴーゴリのホラー小説

ゴーゴリは「外套」「ヴィイ」などの優れた怪談作品を書き遺しました。「ヴィイ」とは東スラブ神話における地下世界に棲む妖怪です。吸血鬼ともいわれています。

「妖婆死棺の呪い」1967年

制作はロシア。ゴーゴリの短編小説「ヴィイ」を基に映画化されました。「ヴィイ」は最後に登場する美少女の妖怪。人間の生き血を吸います。お金持ちの娘が死に、キエフの神学生ホマーが3日間祈祷します。すると、死んだ娘が魔女になり目覚めるのです。彼女は仲間の魔物を呼び集めます。

映画タイトルの妖婆のイメージとはかなり違いますが、最初は老婆の姿をしていたことから付けられたタイトルなのでしょう。

奇妙な天才作家ゴーゴリの最後はまるで彼の最終章のよう

完成直後の「死せる魂」第2部の原稿を書いて焼いてしまったゴーゴリ。ゴーゴリの文学経歴は作品の焼却に始まって焼却で幕を閉じました。神聖な断食を開始したゴーゴリは肉体的にも精神的にも破綻状態に陥り、43歳で亡くなったゴーゴリの死因は飢餓でした。自らの死さえも題材になりそうな、まるで彼の最終章かとも言えるかもしれません。

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