芥川龍之介の遺作「歯車」を考察。最晩年の芥川が見ていた世界とは

2019.09.20

日本が世界に誇る昭和の文豪「芥川龍之介」。彼は多くの作品を執筆していく中で、徐々にその気高き知性を先鋭化させていきました。その知性がついに限界を超えた時、彼は1作の小説を残しこの世を去りました。その作品こそ芥川龍之介の作家人生最終作「歯車」です。この記事ではそんな歯車の内容について考察していきます。

歯車とは

羅生門、鼻、蜘蛛の糸、河童などありとあらゆる世界観で人々の内面を描写していた芥川龍之介。それらの作品はどれも高い完成度を誇り、数多くの知識人たちを魅力しています。

しかし彼は作品を発表していく中で、人々への不信感を募らせすぎた結果、初期作品とは全く違う独特な雰囲気の作品「歯車」を生み出すこととなりました。ここから歯車という作品がどのような経緯で出版されたのかを解説していきます。

芥川龍之介の死後に発見された作品

歯車は芥川龍之介が自殺したのちに仕事部屋から発見された作品です。作品としては死亡する数ヶ月前に脱稿しており、作品の第1章はすでに世に送り出されていました。

死亡したのちに作品が出回ることはよくあることですが、すでに発表されたもの、書き終えていたものを発表せず残したまま作者がこの世を去るケースは稀であり、芥川龍之介には悟られたくない何らかの意図があったのかもしれません。

発表は死後の3ヶ月後

「歯車」が正式に発表されたのは、芥川龍之介の死から3ヶ月後の10月です。当時芥川龍之介の熱心なファンはあまりのショックに後追い自殺をしてしまうなど危険な状態が続いており、遺作としての発表はそんな人々に1つのピリオドを打つ役割を果たしたことでしょう。

また同年の12月には書籍としても出版されており、挿絵を芥川龍之介の親友であった画家「小穴隆一」が担当しています。

歯車のストーリー解説

その特殊な内容からか、いまいち大衆に認知されていない歯車。しかしそのストーリーを把握すれば、生前の芥川龍之介がどのような思想を持ち「死」へと向かっていったのかを知ることができます。そこでここからは歯車のストーリーを紹介するとともに、重要なポイントをピックアップしていきます。

予知夢や白昼夢

まず大前提として、歯車は芥川龍之介自身を主人公に据えた小説です。そのためストーリーにはリアリティある描写が盛り込まれており、晩年の芥川龍之介の体験をうかがい知ることができます。

主人公である「僕」は友人の結婚式に向かう途中、幽霊の噂を聞きます。その後には噂と同様の格好をした存在が現れ、ついには幽霊と同じ格好をしていた妻の兄が事故で死亡してしまいます。そしてその直後から超常的な現象、錯覚、幻聴に襲われ、「次は自分が死んでしまうのではないか」と強迫観念に襲われてしまうのです。

現れる歯車

死の恐怖に怯える中、夜の街に繰り出した「僕」の視界に新たな幻視が見えました。それが「歯車」だったのです。歯車が回るに連れて死を予感する僕は具合が悪くなり、帰宅したところで今度は妻が「僕」の死を予感したと告げて物語は終了します。

本作に登場する幻視や幻聴は、後年の研究で芥川龍之介を悩ませていた病気などが原因だとされており、同様の病気を罹患している患者にも似通った症状が確認されています。

歯車の評価

芥川龍之介最後の作品として出版された歯車。ここからは補足事項として、本作が出版された際の評価について紹介していきます。当時の同業者、知識人はどのような反応を示したのでしょうか?

最高傑作と呼び声高い

歯車は芥川龍之介の最高傑作であるという意見が多数寄せられました。特に川端康成や佐藤春夫などの作家たちからはストレートに「最高傑作」の評価を受けており、最後の最後まで芥川龍之介が偉大な文豪であったかを知ることができます。

遺作はどこまでが真実なのか

歯車は芥川龍之介が最後に残した作品です。その内容は自身のが体験した不可解な現象を記したものとなっており、晩年の苦悩や苦痛を感じ取ることができます。もしも気になった方はこの記事を参考に、書籍を手に入れてみてください。

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