芥川晩年の名著「河童」を読み解く。作者が込めた社会へのアイロニーとは

2019.09.19

日本文学界のビックネーム・芥川龍之介。若くして自らこの世を去った彼は、晩年に近づくにつれてその暗い影を作品にも落とし込んでいました。そんな彼がその胸の内を色濃く世間に提示した作品、それが「河童」です。この記事では河童の概要やストーリーの大筋について解説していきます。

河童の肖像

河童は芥川龍之介の数ある著作の中でも特に奇怪な内容を孕んだ作品です。その真意を知れば、作品を読むにあたって助けとなってくれることでしょう。そこでここからは、河童が執筆された背景や作品の概要について解説していきます。

芥川龍之介が晩年に発表した作品

「河童」は、芥川龍之介が晩年に当たる1927年に発表した作品です。掲載された雑誌は社会主義をメインに据えた大衆雑誌「改造」です。芥川龍之介は本作を発表した4ヶ月後に自殺を遂げています。

なお芥川龍之介最後の作品はその後発表された「歯車」とされていますが、これは芥川龍之介が自殺した後に遺作として発見されてから発表された作品のため、存命中に発表された作品は「河童」が最後となっています。そのため芥川龍之介の命日である7月24日は、作品名にちなんで「河童忌」と呼称されています。

ちなみに、芥川自身が設定した副題に「どうか Kappa と発音して下さい。」という謎の要求が付け加えられており、こちらも後の解釈の対象となることがあります。

河童のストーリー

非常に多くの名作を世に送り出してきた芥川龍之介。その集大成でもあり晩年の名著でもある「河童」は、他の有名作品と比べて特集や映像化なども少なく、近年においてその内容を知る人は少なくなっています。

しかし芥川龍之介生前最後の発表作ともなれば、気にせずにはいられないという方も多いはずです。そこでここからはそんな方のために、「河童」のストーリーの大筋や作者の意図などを解説していきます。

1人の患者が語った物語

「河童」のストーリーは、精神病患者として入院中の男が口にする奇妙なエピソードとして描かれています。作中における時代の3年前に、長野県の穂高山を登山していたところ、男は河童を目撃して後を追うにつれて河童たちの国に迷い込んでしまいます。

そこでは当時の日本とはまったく価値観や道徳観の転倒した社会が営まれています。たとえば女尊男卑的な文化や、中絶を全くいとわない文化、他にも様々な衝撃的風習を目にします。そうした中で生活するにつれ、男は社会の矛盾を思い知り、人間への不信感を強めてしまいます。そうして元の世界に戻った男は、いつしか人を恐れるようになってしまうのです。

当時の日本を風刺

河童に登場する河童たちの国で行われる衝撃的な風習の数々は、当時の日本に対する風刺だという解釈が一般的です。当時の日本社会で当たり前と考えられていた価値観を、あえて真逆の価値体系を提示することで、日本社会の矛盾を暴き出そうとする試みだったのです。

中には隠喩を超えて河童が直接的に日本の貧困問題について言及するシーンなどもあり、芥川自身が抱いていた想いの吐露とみることができるでしょう。

河童は人か物の怪か

「河童」は晩年の芥川龍之介が残した謎多き名著です。奇妙な副題が意味すること、河童の世界の不思議な価値観が示唆すること、日本社会の矛盾にまで踏み込む、多様な解釈が可能な名著だといえるでしょう。

芥川龍之介は母国のあり方に絶望し、人を恐れてしまった語り手の男そのものなのかもしれません。ぜひこの記事を参考にしながら、原著を手に取っていただき、芥川龍之介の想いを自分なりの解釈で感じ取ってみてください。

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