シュルレアリスム文学の先駆者・カフカ。「変身」だけじゃない代表作とは?

2019.09.18

フランツ・カフカ(1883年~1924年)は、チェコ出身のドイツ語作家です。「シュルレアリスム文学」「不条理文学」などと呼ばれる独特な世界観の小説は、後の文学界に多大な影響を与えました。生前はごく数冊しか出版せず、大量の遺稿を燃やすように友人に遺言を残すなど、少し変人なエピソードでも知られています。そんなカフカのことをご紹介します。

カフカについて

カフカは、1883年、プラハで高級小間物商を営むユダヤ人の家系に生まれました。プラハ大学に入学し法学を専攻すると、大学時代に1歳年下のマックス・ブロートと知り合います。大学を卒業後、労働災害保険協会プラハ局に公務員として勤務しながら、数々の作品を書きました。

遺稿を燃やせなかった友人

あまり知られていませんが、カフカが生前に発表した作品は代表作「変身」を含むごくわずかでした。そんな彼が大量に残した遺作はのちに、生涯を通じてのカフカの一番の友人であり、作家・評論家・批評家といった多才の人でもあったマックス・ブロートによって世間に発表されました。

もっとも、カフカはこれらの遺作群を「自分の死後には燃やしてくれ」との遺言を残していたそうです。ブロートはカフカの作品を非常に高く評価していたため、カフカの遺志に反して作品を燃やさずに発表し、さらに全集を編集しました。

それを裏切り行為だという人もいますが、ブロートがいなければ私たちはカフカを知る術がなかったという意味では、ブロートは文学界に多大な貢献をしてくれたといえるでしょう。

死後の名声

皮肉なもので、カフカの名声は生前はささやかなもので、一部の批評家や少数のファン意外には殆ど無名のまま亡くなりました。しかし、先述の通り、彼の遺言を守らなかった親友のブロートが数々の遺作を発表したことが、カフカを有名にしました。

当時ナチス政権下だったドイツ国内では、表現の自由が制限されていました。そうした事情もあり、カフカの名声が高まったのは、母語であるドイツ語圏ではなく、まずフランス語圏においてでした。

カフカ独特の夢と現実が入り混じったような表現に次第に注目が集まり、当時画壇などで隆盛していたシュルレアリスムの流れと相まって、カフカはシュルレアリスム文学の先駆者と見なされるようになっていき、現代でも知られるような世界的作家という評価になっていきました。

遺稿をめぐって裁判?死後のスキャンダル

カフカの遺稿は先述の通りブロートに託されたのですが、のちにこの遺稿をめぐり裁判沙汰となっています。

遺稿を編纂しカフカの全集などを発表したブロートは、その後ナチスがチェコに攻め入った際、カフカの遺稿を持ってパレスチナに逃れました。ブロートは亡くなる時に、遺稿はエルサレム・ヘブライ大学に寄贈するように秘書に指示していましたが、秘書はその言いつけを守らず、遺稿を私的に所有し続けました。

既に秘書はカフカの傑作「審判」のオリジナル原稿を2億円ほどで売却したり、ほかの原稿をコレクターに売却していたりもしたといいます。人間の欲とは恐ろしいものですね。

こちらの法廷闘争は2016年に、イスラエルの最高裁により「遺稿の所有権はイスラエル国立図書館にある」との結論を下し、秘書側の敗訴という形で終結しています。傑作を遺したカフカの遺稿が、私利私欲のために用いられたのは悲しい事実です。

カフカの代表作

マックス・ブロートによって次々と世に出たカフカの作品。日記や詩・恋文など、非常な読書家であった彼の著作群はバラエティに富んでいます。カフカのもつ独特な世界観は、のちの多くの作家に多大な影響を与えました。そんなカフカの代表作をご紹介します。

「変身」1915年

「変身」は、押しも押されもせぬカフカ最大の代表作であり、不条理文学の傑作です。ドイツ語版は生前に発表されていましたが、現在のように世界的名著と目されるようになったのは、死後フランス語訳が出版されてからでした。

主人公は、ある朝ベッドの中で目が覚めると、自分が巨大な毒虫になっていることに気づきます。毒虫になった彼は、苦労しながらベッドから這い出て、意を決してドアを開けて虫の姿で家族と対面し、虫としての生活がはじまります。

何の脈絡もなく突然「主人公が毒虫に変身する」というインパクトのある冒頭に驚かれるのではないでしょうか。こうしたシュールでナンセンスな世界観こそ、カフカ最大の特徴であり魅力といえるでしょう。

  • タイトル:変身
  • 著者:フランツ・カフカ(著)、中井 正文 (訳)
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「審判」1914-1915年

いわれのない罪で突然逮捕される主人公。本人は何の罪で捕まったのかすら全くわかりません。不当逮捕のまま裁判にかけられ、最終的には死刑になってしまうという、なんともやりきれない「不条理」さが際立つ物語です。

しかしこうした「何とも説明しがたいナンセンスさ」は、ある意味では現実世界の本質をとらえているともいえるかもしれません。

  • タイトル:審判
  • 著者:フランツ・カフカ(著)、本野 亨一 (訳)
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「城」1922年

「変身」と同じような、説明のつかない不思議さが漂う、夢の中のような物語です。

主人公は城の測量士として雇われましたが、城へたどりつけないのです。作業する城へ行く道すら見つけることができません。測量士として彼が何をするのか読者には全く見えてきません。挙句の果てに測量士ではなく、学校での小使いとして雇われることになります。

親友のマックス・ブロートに冒頭部分を語って聞かせたカフカ。しかし、行き詰まって最終的に執筆を放棄し、未完成のままだったといわれています。この遺稿をブロートが再構築し、編集したというわけです。ちなみにタイトルもブロートが付けました。

  • タイトル:城
  • 著者:フランツ・カフカ(著)、前田 敬作(訳)
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「夢・アフォリズム・詩」1996年

日記、手紙、ノートなどから精選された、「小説ではないカフカ」が一冊にまとめられています。友人のマックス・ブロートと旅をしたことや、カフカという作家が日常どんなことを思って過ごしていたのかなどが垣間見れる興味深い内容です。

代表作の「変身」「城」は夢の中の物語ですが、カフカは夢で見たものを文章化する試みを行っていました。カフカにとって夢は日常であり現実。夢でみた記憶を素材に創作していることが想像できます。

  • タイトル:夢・アフォリズム・詩
  • 著者:フランツ・カフカ(著)、吉田 仙太郎(訳)
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カフカは文学好きの必読書

その奇妙でナンセンスな世界観で、「整合的なストーリー」「リアリティのある物語」といった既存の小説の枠組みに当てはまらない、新たな価値観を提示したカフカ。当時のシュルレアリストたちにまず注目され、今や20世紀を代表する作家と目されています。

彼の作品に影響を受けていない現代作家はあまりいないのではないかと思えるほどであり、例えば遠く離れた日本でも、安部公房・村上春樹など数々の著名な作家に大きな影響を与えました。

そんなカフカの作品群の中には、よく知られている「変身」だけでなく、親友ブロートによって広められた数々の名作があります。ぜひ、こちらの記事を参考に、文学好き必読ともいえるカフカの代表作を手に取ってみてくださいね。

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