名作『羅生門』は映画もおすすめ。芥川の2作品を合わせた異色の映画

2019.09.16

芥川龍之介の有名作品のひとつである「羅生門」は映画作品としてもリメイクされています。黒澤明監督が作り上げた映画版羅生門には、原作の羅生門にはなかった描写が多く存在します。この記事では羅生門の映画版の見どころについてご紹介します。

羅生門の映画版のあらすじは?

映画版の羅生門は原作と異なる仕上がりになっています。まずは映画版の羅生門のあらすじを簡単に紐解いていきましょう。

3人の男たちの雨宿りから始まる

戦いと疫病で荒廃を続ける京都。そこにある羅生門が映画の舞台です。ここでまず揃うのは下人と杣売り(そまうり)、旅法師の3人。なお、杣売りとは焚火に使う木材を売る人のことを指します。

ただの雨宿りのはずが、ここで杣売りと旅法師は下人に対して話をし始めます。その話とは、検非違使(現在の警察のような存在)に受けた殺人事件の取り調べについてでした。

犯人は誰か?さまざまな疑心暗鬼

亡くなったのは武士の金沢。彼を殺したのは誰なのか、というところを論点として話は進んでいきます。

金沢と行動を共にしていた妻や、下手人として連れてこられた多襄丸、そして金沢の霊を体に移した巫女が犯罪を読み解いていきます。

しかしそれぞれで食い違っていく証言のせいで、場は一向にまとまりません。真実がわからないまま、そこに残るのは自己擁護を続ける人間の姿のみ。誰を信じればいいのかがわからないまま話は収束します。

人間の善の心への希望は残る

そこで突然聞こえてきた赤ちゃんの泣き声。下人はすかさず赤ちゃんから衣服をはぎ取りますが、それを責めることができる善なる人間はこの場にはいません。

しかし杣売りは赤ちゃんに手を差し出すと、そのまま優しく抱きかかえます。そして「自分の子として育てる」という言葉を残すのです。旅法師は人間の善の心がまだ残っているのだと安堵するのでした。

羅生門の映画版のキャスト一覧

怪演ともとれる三船敏郎をはじめ、名役者が映画版羅生門を演じています。

  • 多襄丸役……三船敏郎
  • 金沢武弘役……森雅之
  • 真砂役……京マチ子
  • 杣売り役……志村喬
  • 旅法師役……千秋実
  • 下人役……上田吉二郎
  • 巫女(霊媒師)役……本間文子
  • 放免役……加東大介

映画版羅生門と原作の羅生門との違いは?

映画版羅生門は、小説の羅生門をそのまま映画にしたものではありません。そのため小説の羅生門を読んだ人でも理解しにくい展開があるかもしれません。

構成も考察も異なる

小説版の羅生門では、羅生門を舞台として下人と老婆のやりとりを主題としています。そこでは殺人事件に関する話し合いは行われず、人が生きるうえでの善悪をテーマにストーリーが展開されます。

シンプルで短い小説なので、人によって解釈の仕方が異なる『解釈の余地』が多く残っているところが魅力的な作品と言えます。

一方の映画版羅生門では、犯人探しを通して、人間の偽りの心を浮き彫りにしていく疑心暗鬼に着目した作品です。

2つの作品を合わせた作品なので、小説版羅生門の映画リメイクだと思って鑑賞すると疑問を抱いてしまうかもしれません。

映画版羅生門を観るなら「藪の中」も読もう

映画版の羅生門は「羅生門」のほかに芥川の「藪の中」という作品も元になっています。「藪の中」のストーリーは、まさに映画版の羅生門のストーリーと符合し、映画版の羅生門は小説「羅生門」よりも「藪の中」に近い内容となっています。

そのため、映画版羅生門を観る際は、まず「藪の中」を読んでから視聴するのがおすすめです。そのほうがきっと話の流れを理解しやすく、自分なりの解釈に頭を使う余地が生まれるでしょう。

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鬼才黒澤明の映画・羅生門を観てみよう

「藪の中」も「羅生門」も、どちらも「人間とは何か」という問いに繋がる作品です。綺麗ごとではない、人間誰しもが内に秘める善悪や疑心について、考えさせられることでしょう。芥川龍之介の原作が好きな方には、ぜひ一度観てみてほしい映画作品です。

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