司馬遼太郎が大作『坂の上の雲』にこめた思いとは?

2019.09.15

日本を代表する歴史小説家の司馬遼太郎が、明治を理想の時代として活写した『坂の上の雲』。そこに込められた思いとは。この記事では、『坂の上の雲』の概要から、主役の魅力、そしてタイトルに込められた意味までをご説明します。

司馬遼太郎『坂の上の雲』とは

(写真はイメージ)

戦国や幕末の英雄たちをテーマにヒット作を飛ばした司馬遼太郎が満を辞して記した明治の物語、『坂の上の雲』の概要をご紹介します。

『坂の上の雲』刊行データ

『坂の上の雲』は、19684月~19728月まで『サンケイ新聞』に連載された後、1949年に文藝春秋より刊行されました。初版以来の累計発行部数は2000万部を越えていて、司馬遼太郎作品では『竜馬が行く』に次いで2番目に広く読まれている作品です。

『坂の上の雲』あらすじ

明治の勃興期、伊予松山出身の士族・秋山好古、真之兄弟と友人の正岡子規の若者時代から物語は始まります。やがて、好古は陸軍士官学校から騎兵を志願し、45歳のときに騎兵第1旅団長として、真之は、36歳にして海軍専任参謀として旅艦「三笠」に乗り込み、日露戦争を迎えます。

陸戦でクロパトキンと対峙する大山巌と児玉源三郎や、凄惨な二◯三高地を戦う乃木希典、バルチック艦隊を迎え撃つ東郷平八郎の連合艦隊。さらには、革命勢力と結んでロシアを揺さぶる明石元二郎、アメリカのルーズベルト大統領に工作を依頼する金子堅太郎など、様々な点景を重ねて、日露戦争の全景を描き切ります。

『坂の上の雲』の三人の主役

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『坂の上の雲』は、幕末には佐幕派であった松山藩出身の三人の若者の成長を軸に、明治という時代を描き出します。そんな主要登場人物の魅力をご紹介します。

秋山好古(あきやま よしふる)

伊予国松山藩の貧乏士族に生まれ、学費のかからない師範学校に進学しますが、教師の給料の安さでは弟を支えられないとして士官学校へ。陸軍大学在学中に騎兵研究を命ぜられてフランスへ留学し、日露戦争では自ら育成した騎兵第一旅団を率いて出征しました。度を越すほどの酒好きで、無口で無愛想ながら度量が広く大胆な行動にはときに愛嬌すら感じさせます。

秋山真之(あきやま さねゆき)

好古の10歳年下の弟で、文学を志して正岡子規の後を追い東大予備門に通いますが、好古の薦めで海軍兵学校に進学します。日清戦争出征後にアメリカへ留学し海戦を研究。その後、英国駐在武官を経て海軍大学の教官を務めました。日露戦争では連合艦隊参謀として日本海軍に勝利をもたらします。雑多な情報から要点のみを取り出し見事な戦術を展開する怜悧な性格ながら、戦場での死には人一倍心を痛めました。

正岡子規(まさおか しき)

真之の幼馴染で、明治を代表する俳人です。地元中学を中退して上京し、帝大に入って文学にのめり込みます。雑誌『ホトトギス』を創刊して、俳句や短歌を近代的に刷新し、伝統文学の再興を目指しました。肺結核による喀血を繰り返したことから、啼いて血を吐くような声を出す「子規(ホトトギス)」と名乗りました。人一倍寂しがりやの性格で、病床にあっても人を集めて句会を開き、人が集まると場の中心でいることを好みました。

『坂の上の雲』にこめられた思い

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司馬遼太郎は、大臣から参謀本部次長に自ら格下げとなって早期調停を目指した児玉源太郎から、バルチック艦隊の到来を知らせる宮古島島民の逸話まで、国家を挙げて戦った日本の勝利を描写する一方で、ロシア側の指揮官の専制気質や、イギリスによるロシアへの石炭補給妨害など背景となった要因も丁寧に取り上げています。

このように日露戦争が薄氷を踏むような勝利だったことは国民には知らされず、日本が太平洋戦争へと突き進みます。「坂の上の雲」というタイトルには、明治の人々が登りつめた坂の先には下り坂が、つまりは敗戦へと向かう昭和の時代が待っていることが仄めかされています。『坂の上の雲』は、決して軍国主義を称える書ではないのです。

冒頭の名言が沁みる、ドラマ版も必見 

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「登っていく坂の上の青い天に、もし一朶の白い雲が輝いているとすれば、それのみを見つめて、坂を登ってゆくであろう。」

そんな沁みる名言が冒頭のナレーションで流れるのは、『坂の上の雲』のテレビドラマ版です。2009年から2011年にかけてNHKが全13話を放送しました。大河ドラマを上回る制作費をかけて制作された大作は、DVDでも見ることができます。原作と合わせていかがでしょうか。

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