世界有数の印象派コレクション『コートールド美術館』で観るべき名画

2019.09.14

ロンドンにあるコートールド美術館をご存知でしょうか。パリのオルセー美術館や同じくロンドンのナショナル・ギャラリーに作品数では及びませんが、世界有数の質を誇る印象派コレクションのなかには、一度は図録で見たことのあるような有名作品が目白押しです。この記事では、知る人ぞ知る印象派の殿堂、コートールド美術館についてご紹介します。

コートールド美術館の歴史と現在

コートールド美術館は、ロンドン中心部のテムズ川沿いにある元貴族の邸宅、サマセット・ハウス内に位置しています。

イギリスにおける美術史や保存科学の研究を発展させるべく1932年に創設されたコートールド研究所の付属ギャラリーとしてオープンしました。

創立者の1人である実業家サミュエル・コートールドが収集した印象派とポスト印象派の作品がコレクションの中心で、その後も多くの優れた寄贈作品を受け入れ、現在では、中世から近代までの多様な美術品を所蔵しています。

2018年より大規模な改修工事に入っていて、あと数年は現地で作品を見ることが出来ません。しかし、うれしいことに2019年秋~2020年初夏にかけて、その名画の多くが日本を巡回する予定です。

いつか見たい!コートールド美術館の名画【印象派以外】

(写真はイメージ)

コートールド美術館にはどのような作品が所蔵されているのでしょうか。まず、日本での巡回展ではお目にかかることができない、印象派以外の名画について一部をご紹介したいと思います。

ロベルト・カンピンあるいは工房作『キリストの埋葬』(14151420年頃)

『キリストの埋葬』は、初期フランドル派の最初の偉大な画家と呼ばれるロベルト・カンピンか、その工房によって描かれた多翼祭壇画です。左翼パネルには十字架と祈る寄進者の姿が、中央には、天使やマリア達に囲まれて埋葬されるキリストが、右翼パネルには復活するキリストが描かれています。本作は、著名なコレクターで美術史家でもあったアントワン・サイレーンよりの寄贈品であり、初期オランダ絵画の最高傑作の一つと称されています。

The Seilern Triptych

ピーテル・パウル・ルーベンス作『ヤン・ブリューゲル(父)の家族』(16131615年頃)

コートールド美術館は、17世紀のフランドルのバロック芸術を代表する画家であるルーベンスの作品を、29点所蔵しています。なかでも重要なのが、ルーベンスの友人であり共同制作者でもあったヤン・ブリューゲルとその家族を描いた肖像画です。ルーベンスが人物を、ブリューゲルが動物を担当し、二人は多くの絵をともに仕上げました。公的な注文も数多く制作したルーベンスですが、これほど親しみを感じさせる肖像画は、画家自身の家族を描いたものをおいて他にありません。

The Family of Jan Brueghel the Elder

トマス・ゲインズバラ作『マーガレット・ゲインズバラの肖像』(1778年頃)

18世紀のイギリスを代表する肖像画家トマス・ゲインズバラが、妻の50歳の誕生日を記念して描いた肖像画で、サミュエル・コートールドによる最初期の収集作品のうちの一点です。ゲインズバラは毎年、結婚記念日には妻に肖像画をプレゼントしていたそうです。繊細な微笑みやポーズ、柔らかな筆使いに、モデルと画家の親しげな関係が反映されているようです。

Portrait of Margaret Gainsborough

日本で会える!コートールド美術館の名画【印象派編】

(写真はイメージ)

2019年秋より日本を巡回するコートールド美術館展には、美術館のコレクションの核である印象派とポスト印象派の名画が多数出品されます。ここではその出品作のなかから最も注目すべき作品をご紹介します。

エドゥアール・マネ作『フォリー=ベルジェールのバー』(1882年作)

印象派の画家達とも交流しながらサロン出品を続けた近代絵画の父エドゥアール・マネの晩年の傑作で、ダンスホール「フォリー=ベルジェール」のバーカウンターに立つ女給の姿を描いています。女給の背後には大きな鏡があり、彼女自身の後姿やバーを訪れた客、曲芸のショーなどともに、ホール全体が描かれるという複雑な空間構成となっています。鏡の中では接客中のはずの女給は、虚ろな顔で正面を見据え、謎めいた雰囲気を作品に与えています。

A Bar at the Folies-Bergère

ピエール=オーギュスト・ルノワール『桟敷席』(1874年)

華やかなで豊満な女性像を多く描いたことで知られるルノワールが、記念すべき第一回印象派展に出品した作品です。劇場の桟敷席に座る男女に扮しているのは画家の弟エドモンドとお気に入りのモデルであったニニ。男性はオペラグラスを使って舞台ではなく他の客席を覗き見している様子です。流行の衣装と豪華な装飾品を身につけた女性もまた誰かから覗き見される存在と言えますが、その瞳はまっすぐこちらを見返しています。

Theatre box

ポール・セザンヌ『大きな松のあるサント=ヴィクトワール山』(1887年頃)

コートールド美術館が誇る印象派・ポスト印象派のコレクションの中でも、質・量ともに群を抜いているのがセザンヌの作品です。セザンヌが繰り返し描いた故郷の山をモチーフとした作品のなかでも、とりわけ完成度が高いのが本作品です。大きな松が視線を遮る構図には日本の浮世絵からの影響が感じられる一方で、大正期より複製図版が日本に紹介され、多くの画家に感銘を与えたことでも知られます。

Montagne Sainte-Victoire with Large Pine

コートールド美術館展は東京・名古屋・神戸を巡回

コートールド美術館展は、東京の後、名古屋、そして神戸へと巡回します。世界有数の印象派コレクションを日本でまとめてみることができるのは、美術館が改修中の今だけかもしれません。どうぞお見逃しなく。

  • 東京都美術館 2019910()1215()
  • 愛知県美術館 202013()315()
  • 神戸市博物館 2020328()621()

展覧会公式サイト:こちら

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