川端康成の『古都』とは?小説を読んで古き良き京都を堪能しよう

2019.09.14

近年新たに映画化された川端康成の『古都』とは、どのような小説なのでしょうか。この記事では、京都好きにはぜひ読んでほしい名作『古都』について、あらすじや映画化作品などをご紹介します。

川端康成の『古都』とは

『古都』は川端康成が62歳であった1961年から62年にかけて『朝日新聞』に連載された作品です。

この年、川端は小説の舞台となった京都に邸宅を借りて、京言葉や町屋の生活を取材しました。京都の四季の移り変わりを背景に、年中行事や市電の廃止といった出来事を織り交ぜながら物語は展開していきます。「古い都の中でも次第になくなってゆくもの」を書きたいという川端自身の言葉通り、伝統産業の衰退や街の近代化など、変わりゆく京都の風俗や生活が描写され、市中の寺や植物園、あるいは北山杉の里を彩る美しい自然が丁寧に描かれています。

川端康成『古都』のあらすじ

『古都』は全9章で構成されていて、「春の花」「尼寺と格子」「きものの町」は春、「北山杉」「祇園祭」は夏、「秋の色」「松のみどり」「秋深い姉妹」は秋、「冬の花」は冬、というように、京都の四季とともに物語が進行します。ここでは、その物語のあらすじを季節ごとにご紹介します。

春 ー「春の花」「尼寺と格子」「きものの町」ー

呉服問屋の娘・千重子は、スミレの花や鈴虫の生命と自分を重ね、物思いにふける感受性の強いところがあります。平安神宮の花見に出かけた帰り道、幼馴染の真一に実は自分は捨て子であることを打ち明けました。千重子の育ての親・太吉郎は、問屋の仕事を従業員に任せて尼寺にこもり、着物の図案描きに明け暮れていましたが、ある日、千重子が寄越した画集をもとに描いた帯の図案を、西陣織の工房へ持ち込み跡取り息子の秀男に製作を依頼します。後日、千重子と太吉郎、その妻・シゲの家族は、見物に出かけた植物園で秀男たち家族と遭遇し、秀男は千重子と熱心に話し込むのでした。

夏 ー「北山杉」「祇園祭」ー

初夏、千重子は、友人とともに紅葉の若葉見学に出かけた高雄から足を伸ばして、北山杉の里を訪れました。そこで千重子は自分にそっくりな娘が働いているのを見かけます。鞍馬寺の竹刈り会の頃、秀男が、太吉郎が図案を描いた帯を織り上げて持って来ると、千重子に胸に当ててみるよう促します。やがて祇園祭の季節、千重子が一人で街へ見学へ出かけると、北山杉の里で見かけた娘に遭遇し、自分の生き別れの双子の姉妹・苗子であることを知ります。やがて苗子は道端で秀男に千重子と取り違えられ、再び千重子に帯を織りたいと約束を交わされます。狼狽した様子の千重子は、真一とその兄・龍助に出会い、家まで送り届けられました。

秋 ー「秋の色」「松のみどり」「秋深い姉妹」ー

帯の図案を持ってきた秀男に、千重子は苗子の存在を明かし、苗子のために帯を織るように頼みます。千重子は、北山杉の里へ出かけ、雨に降られながら苗子に帯のことを話します。後日、千重子親子は青蓮院の楠や南禅寺界隈を訪れた後、龍村織の店先で龍助に出会います。龍助は千重子に店の経営を学ぶよう諭されました。帯を織り上げた秀男は北山杉の里へ出向き、時代祭に苗子を誘います。時代祭での苗子と秀男を目撃し、問屋を訪ねて来た龍助に、千重子は双子の存在を明かしました。

冬「冬の花」

苗子から「話がある」と電話を受けた千重子は、北山杉の里へ出向き、秀男が苗子にプロポーズしたことを知らされます。秀男は千重子への叶わぬ想いのため、苗子を身代わりにするつもりだと苗子は信じ、結婚に踏み切れない様子です。一方で、龍助は実家の大問屋を出て、千重子の家に婿養子に来る算段でいます。そんなある日、苗子が千重子の家を訪れ、別々の人生を歩む姉妹が初めて一夜をともに過ごしたのでした。

映画版『古都』とは。原作との違いもチェック

美しい京都を舞台にした小説『古都』は、過去に3回映画化され、6回もテレビドラマ化されています。ここでは、繰り返し映像化された『古都』のなかでも、とりわけ話題となった映画化2作品についてご紹介します。

山口百恵最後の主演映画『古都』(1980年)

『犬神家の一族』や『木枯らし紋次郎』などで知られる名監督・市川崑がメガホンを取り、引退が決まった山口百恵が主演、一人二役をつとめたのが1980年の映画版『古都』です。本作が原作と大きく異なるのは、山口百恵が引退後に結婚を表明していた三浦友和を出演させるため、原作にはない木こりの清作という役柄が登場する点です。山口百恵は、おしとやかながら芯の強さを感じさせる千重子/苗子役にはハマり役ではないでしょうか。

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舞台を現代に移した『古都』(2016年)

近年新たに映画化され主演に松雪泰子を迎えた『古都』は、言わば原作の後日談です。呉服屋を継いだ千重子には将来に悩みながら就職活動をする大学生の娘・舞が、経営難の林業を営む苗子には芸術を学ぶためにパリへ留学中の娘・結衣がいます。やがて2組の親子の人生がパリで交差します。原作と同様に京都の美しさや伝統文化、その移り変わりが感じられるとともに、パリの洗練された雰囲気にも触れられる映画に仕上がっています。

『古都』は京都好きなら読むべき一冊

生き別れの姉妹の偶然の出会いを描いた小説『古都』は、物語の魅力もさることながら、祭りや生活にまつわる風俗や、桜や紅葉、北山杉などの自然の描写が本当に美しく、季節ごとの京都の魅力がしみじみと伝わってきます。京都好きにはたまらない魅力がつまった小説ではないでしょうか。

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