「高瀬舟」のストーリーとは?森鴎外の名著の内容を紹介

2019.09.12

人の世界にある様々な「悲劇」。明治の文豪「森鴎外」の名著「高瀬舟」が描くのもまた、そんな悲劇の1つです。この記事ではそんな高瀬舟のストーリーを解説するとともに、作品の魅力、執筆経緯などを紹介していきます。

高瀬舟の概要

まずは、「高瀬舟」の概要を紹介していきます。

森鴎外の後期作品

「高瀬舟」は森鴎外作品の中でも後期に執筆されたものです。出版されたのは元号が大正に移り変わって5年目の1916年です。なお前年には「舞姫」などと並んで彼の代表作と言われている「山椒大夫」を出版しています。

前期では現代的な世界観の作品を好んでいた森鴎外ですが、この頃になると時代小説的な世界観の作品を好むようになり、登場人物の言葉使いや全体的な構成なども大きく変化します。

テーマは江戸時代の随筆集から

「高瀬舟」は江戸時代中期の随筆家「神沢杜口(かんざわとこう)」によって製作された随筆集「翁草」の1説をテーマに執筆されています。

なお「高瀬舟」に登場する人々の中には、神沢杜口と同様の与力も登場し、作品が実話または似たエピソードが実際に起こった可能性も示唆されています。

高瀬舟のストーリー

ある事件をめぐる顛末を無常観と理不尽な人の有様を踏まえて描かれた「高瀬舟」。その内容は現代にも通ずるメッセージを含んでいます。

そこでここからは高瀬舟の大まかなストーリーや、注目ポイントなどをピックアップして紹介していきます。

一人の罪人、一人の船守

「高瀬舟」の始まりは罪を犯して島流しとなった罪人が、小舟に乗り込むシーンから始まります。しかしその罪人はどうも罪人らしくない立ち居振る舞いで、何よりも満足そうな顔をしているのです。

不思議に思った舟守の男は、興味本位で罪人にその訳を訪ねるます。すると彼の罪は、病気で長い間寝込んでいた弟の自殺幇助をした、殺人罪だと語るのです。

いくら弟が望んだとはいえ、世間からすればそれは立派な殺人であり、近所の人間の通報もあって罪人として捕らえられて島流しの判決を受けます。

形がどうであれ弟の最後の望みを叶えて苦しみから解放してやれた安堵が、自然と罪人の表情を緩めていたのでしょうか?

安楽死とは何なのかを問う

本作のポイントは「安楽死」とは何なのか、その手助けは殺人なのか、悪行なのかを読者全てに向けて問いを投げています。

江戸から明治の激動の時代に比べて体制が安定し、人々の暮らしも安全になり、「死」が遠のいていた大正時代の大衆に向けてのメッセージは、現代の日本人に対しても鋭く突き刺さるものとなっています。

高瀬舟は意外なところに

高瀬舟は一部過激な描写があるものの、その道徳的な示唆を多分に含む内容から教育現場などでも使用されています。

中学校の教科書にも採用

高瀬舟は意外なことに中学校の教科書に採用されています。短編ということもあり、その程よいボリュームは教材の1つとしてもぴったりです。

あまり時代小説に触れる機会がない子供達にとって、新鮮な世界観でみる「安楽死」という重いテーマは国語教育にも道徳教育にも優れたものとなっています。

高瀬舟は現代にも通じる問題を投げかける

高瀬舟は森鴎外が後期に全国区の雑誌で出版した作品です。そのテーマは当時の人間にとっても、現代の人間にとっても考えさせられるものでした。もしも本作を読んだことのないのであれば、ぜひこの記事を参考に「森鴎外作品は難しい」という先入観を取り払って1度読んでみてください。

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