「伊豆の踊子」のあらすじは?ノーベル賞作家・川端康成の代表作

2019.09.11

川端康成の「伊豆の踊子」は過去に有名アイドル歌手が主演の映画も作られており、古典的青春小説の定番のようになっています。おそらく中高生の時にさらっと読んだ記憶があるという人がほとんどだと思われますが、川端康成という少し屈折した人の心の原点を描いた作品でもあるといわれています。今更感の強い小説ですが、十分な大人になった今、作者の心理背景などを探りながら再度読んでみましょう。

伊豆の踊子 あらすじを追ってみよう

傷心の旅での出会い

二十歳の主人公の青年は自分の「孤児根性(これが作者の根底にある負の性質だと思われます)」に嫌気がさし、自分を見つめるため伊豆へ一人旅をします。

旅の途中で家族で一座を組む旅芸人と知り合い、その中にいた踊子の娘にひそかに心惹かれます。

下田へと旅芸人達と一緒に旅をしている青年は、天城峠の茶屋のおばあさんの口から旅芸人を蔑む言葉を聞き、踊子の娘が旅先の宿で見知らぬ男客に辱められるのではないかと心配します。

娘の無邪気さと純粋さと切なさと。

翌朝、川向の湯場から青年に向かって裸で無邪気に手を振る娘に「まだ子供なのだ」と安堵します。

それと同時に、娘の真っすぐな純粋さに自分の中にある自分の生い立ちからくる卑屈さも消えてゆくような気持ちになるのでした。

東京に戻ると決めた前日、青年は踊子達を映画に誘いますが、踊子以外の人の都合がつかなくなり、踊子の母親は娘だけを行かせることはしませんでした。

青年は一人映画に出かけますが、失望感と寂しさと切なさに涙します。

別れは新しい旅のはじまり

別れの日の朝、踊子の兄だけが青年を乗船場まで送りに来ましたが、乗船場の波打ち際に踊子がうずくまって青年を待っていました。

踊子は青年の問いかけの言葉にも一言も言葉を返さず、船に乗り込むときもさよならの言葉を飲み込むようにうなずいただけでした。

青年は船中で涙を流しますが、泣いている自分をやさしく見過ごしてくれる隣の少年の優しさを素直に受け入れることのできる、新しい自分になっていることを知ります。

「伊豆の踊子」の裏にある川端康成の生い立ちと屈折した心理

「伊豆の踊子」は川端康成が19歳のときに伊豆に旅をしたときの実体験を元に書かれたものです。

生前に川端康成は「伊豆の踊子」についてこう言っています。

「伊豆の踊子はすべて書いた通りであつた。事実そのままで虚構はない。あるとすれば省略だけであり、私の旅の小説の幼い出発点である」

川端康成には1歳7か月で父親、2歳7か月で母親、7歳で祖母、10歳で姉、15歳で祖父を失い孤児となった辛い生い立ちがあります。

作中に出てくる〈孤児根性〉という言葉はここからきたものであり、乞食と蔑まれる旅芸人と孤児であるという自分を卑下する心とが共鳴したのでしょう。

「伊豆の踊子」が生まれた真実とは

伊豆の旅から4年後に伊豆の旅の思い出と、大阪府立茨木中学校(現・大阪府立茨木高等学校)の寄宿舎での下級生・小笠原義人との幼い同性愛体験を「湯ヶ島での思ひ出」という素稿にまとめ、その素稿が元となり「伊豆の踊子」と「少年」が生まれました。

この素稿である「湯ヶ島での思ひ出」はカフェ・エランの元女給であった伊藤初代との婚約破棄事件で傷ついた川端康成が、無垢で純真な踊子(実名・加藤たみ)や小笠原義人を思い出し、失恋の悲しみを癒すために書かれたといわれています。

こうした背景を知ったうえで「伊豆の踊子」を読み返してみると、川端康成という人はとても傷つきやすい繊細な人であったのだろうと思われます。

最後はやはり自殺という何とも悲しい幕引きをしたのも、やはりの屈折した自分の影からは逃れられなかったのでしょうか。

川端康成「伊豆の踊子」のしおり

「伊豆の踊子」英文版

ノーベル文学賞を受賞した川端康成の「伊豆の踊子」を含む作品の多くは英語で翻訳されています。

  • タイトル:The Izu Dancer(伊豆の踊子)
  • 訳者:エドワード・G・サイデンステッカー)
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映画

古くは美空ひばりや吉永小百合などが主演し多くの映画が製作されています。

その中でも当時人気絶頂だった山口百恵が主演した1974年「伊豆の踊子」は山口百恵の初主演映画であり、後に恋人を経て夫となる三浦友和との共演も大きな話題となりました。

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大人にになってから読む「伊豆の踊子」

若い学生のころに読んだ「伊豆の踊子」は、ただただ初々しい踊子の娘と学生の淡い恋物語としか受け取れなかった人も多いのはないでしょうか。

川端康成の厳しい生い立ちや、繊細で傷つきやすい屈折した心理を知ってから読む「伊豆の踊子」は、また違った読感が得られます。

現実に失望しながらも、純粋さに憧れ続けた作者の心の叫びが底に流れているような気がします。

 

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