哲学と心理学の違いとは何か?両者の歴史と「科学」の意味から紐解く本質

2019.09.06

現代の哲学は何を研究しているのか、心理学とはどこがどう違うのか。わかりやすくまとめました。大学の学部選びのみならず、現代の知の最新情報を知りたいすべての方の参考にしてください。哲学と心理学、両者をつなぐカギは「科学」にあります。

いま大学で、哲学は何を研究しているの?

「哲学」と言われて浮かぶイメージは、人それぞれ違います。まず哲学とは何か、現代の哲学はどんなことをする学問なのか、その歴史と現状を共有しましょう。

哲学から科学が生まれ、巨大化する

もともと哲学とは、古代ギリシアの時代から18世紀まで、今日的な「学問」とほぼ同じ意味でした。哲学の語源はフィロソフィア、「知を愛する」という態度です。よって自然の研究も歴史も言語も人間心理も、広い意味では哲学の守備範囲でした。

ところが17世紀に哲学のなかから近代科学が生まれ、しだいに巨大になり、やがて19世紀には哲学から独立します。これによって、「この世界の探求」といういちばん大事なテーマを科学に持っていかれました。科学の隆盛をみて、歴史学も言語学も、科学の方法をマネていきます。

哲学に残されたテーマとは

結果として、哲学に残されたテーマは3つ。「時間や存在といった抽象的概念」「人間の心」「知識の探求にはどんな方法があるのかという方法論」だけになったといわれています。

しかしこのうち「人間の心」も、後述するように、心理学に取られてしまいます。また「時間や存在」といったテーマも20世紀になって、相対性理論や量子力学・素粒子物理学が扱うようになりました。

このようにして、現代哲学に残されたテーマは方法論の話がメインとなったのです。21世紀の現代、日本の大学で学ぶ哲学はこの方法論の話(つまり思考のトレーニング)と、もうひとつは哲学の歴史です。

哲学から分かれた科学、その本質とは?

では、なぜ科学は産みの親である哲学を食ってしまったのか。その理由はまさに科学の方法論にありました。

「なぜ」を保留する科学

近代科学が登場するまで、知識の探求とは「なぜそうなのか、原因は何か」と問うのが一般的でした。そして原因を究極まで突き詰めていって、水だ、イデアだ、神だ、コギト(自己)だ…等と答えるのがいわゆる哲学でした。

しかし近代科学は「なぜ」という疑問をいったん保留にします。そして現象を量的に把握して数学で記述するという、まったく新しい方法を採用しました。たとえば「なぜモノは地面に落ちるのか」という問題に、モノの本性とか運動の目的とかを持ち出すのではなく、ただ落ちるという現象を速度・加速度・質量といった新しい概念で測る、そして関数式で表す。こんな方法を採ったのです。

そして心理学が生まれる

一見するとまわりくどいこの方法が、じつに強力でした。なぜなら、実験・検証に耐えた数式はひとつの仮説となり、そこからあらゆるテクノロジーが生まれたからです。こうして近代科学はわたしたちの生活を、社会を、劇的に変えてゆきました。

科学がめざましい成功を収めるのを見て、「じゃあ人間の心の研究にも科学的な方法を取り入れよう」、こう考える人が出てくるのも当然です。ここから現代につながる心理学が生まれます。つまり心理学とは、兄(科学)の仕事のやり方をまねて、父親(哲学)の実家の仕事を半ば奪ってしまった弟に当たるのです。

心理学の歴史と哲学の反応

このように捉えると、哲学と心理学の違いもわかりやすいでしょう。最後に、心理学の歴史と、次男坊(心理学)の活躍を見た父親(哲学)の反応に触れておきます。

心理学の歴史

現代につながる心理学は19世紀末に誕生しました。ヴィルヘルム・ヴントやウィリアム・ジェームズといった哲学者が科学の方法を取り入れはじめたことに端を発します。

その後、フロイトの精神分析やアドラーの個人心理学など、精神医の立場から個人の生をふかく見つめた心理学がひろく注目されるようになりました。

二度の世界大戦前後には、パブロフやローレンツなどの行動主義的心理学、つまり動物実験などの知見を人間にも生かす心理学が台頭します。しかし1960年代以降は、人間の複雑な思考や認知そのものに焦点を当てた認知心理学が主流となりました。

現代哲学は科学的方法にどう対応したか

統計的手法やコンピュータも駆使して人間の心に迫ろうとする現代心理学は、今日まで多くの成果をあげています。心理学だけでなく、経済学や言語学などでも、科学の方法を取り入れて一定の成果を残しています。

こうした現状を見て、哲学のなかでは科学に接近しようとする動きと反発しようとする動き、両方が起こりました。批判を承知であえて分ければ、前者はプラグマティズム、分析哲学、構造主義など。後者は現象学、生の哲学、実存主義などになるでしょう。

哲学と心理学、心を楽にしてくれるのは?

以上、哲学と心理学の違いをわかりやすくまとめました。最後にひとつだけ。わたしたちがつらく苦しいとき、どちらがより役に立つのでしょうか。

これは人それぞれです。ただ心理学の本を読み漁っても心が楽にならない、そんなときには、哲学の本を紐解いてもいいかもしれません。なぜなら哲学の知見は過去2500年以上におよび、はるかに多くの、生きることに悩みぬいた人々の真剣な回答がそこにはあるからです。

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