靴などに使われ、エナメルとも呼ばれるパテントレザーには、どんな特徴があるのでしょうか。パテントレザーとは何かというところから、パテントレザーを扱う上での注意点やメンテナンス方法まで、一通りの基本を解説していきます。
パテントレザーとは?
パテントとは、英語で特許権や特許品を意味する言葉です。パテントレザーを直訳すると、特許革となってしまいよく分かりませんが、パテントレザーは何を指し示しているのでしょうか。
靴や財布などで使われるエナメル革
パテントレザーとは、エナメルなどとも呼ばれる『表面に光沢がある革』のことです。本革にウレタン樹脂などでコーティングし、本革と樹脂の2重構造を作ることで表面に光沢を与えた素材は、靴や財布の材料として使われています。
その製法のルーツは、1819年にアメリカの発明家セス・ボイデン氏によって改良された、亜麻仁(あまに)油を使ったもので、当初は水分や汚れ対策が主目的でした。その後、その光沢の良さから普及したという経緯があります。
当時の舞踏会では、靴墨で磨いた革靴を履くのが紳士の礼儀でしたが、ドレスを汚してしまう欠点も持っていました。ドレスの裾を汚さずマナーに反することもない、『ウィンウィンな商品』として、パテントレザーは広まったのです。
パテントレザーのメリット
上記のように、ウレタン樹脂によるコーティングで『水や汚れに強い』ことや、表面に光沢があり、『見た目が美しい』ことがパテントレザーの強みです。
通常の革製品と比較して、メンテナンスを頻繁にしなくても光沢を持ち、きれいな状態を保てることも利点として挙げられます。
またパテントレザーに加工すると、樹脂によるコーティングによって表面が覆われるので、通常のレザー製品としてはいまひとつの材料でも、商品として通用することも、メーカーにとってはメリットと言えるでしょう。
パテントレザーの取り扱いポイント
本革の製品に比べて、取り扱いやすいとも言えるパテントレザーですが、そんなパテントレザーにも本革とは異なる注意点があります。
温度や湿度の変化に弱い
まず言えるのは、『温度や湿度の変化に対して弱い』ことです。パテントレザーは、ウレタン樹脂によるコーティングの層と、本革による層の2つで構成されていますが、革と樹脂では性質が全く異なります。
両者の違いとは、温度・湿度の変化によって発生する伸び縮みの幅が異なる点です。この違いこそが、表面にひび割れが発生したり、樹脂の部分が熱によって溶けたり、2つの層が剥がれてしまう原因となっています。
ひび割れなどの修復が不可能
また、層が重なっていることで『皮の断面が厚くなっている』のも弱点です。分厚い断面によって、靴であれば履いたり脱いだりする際に皺が発生しやすくなっており、それが引き金となって表面にひびが入ることもあります。
パテントレザーの場合、一度ひび割れが入ってしまうと、修復が非常に困難、ほぼ不可能です。そのため、シューキーパーや新聞紙を活用して靴の形を整えるなど、適切に管理し、ひびが入らないようにしましょう。
保管方法や手入れに気をつけよう
上記のようなトラブルを防ぐためにも、パテントレザーを保管しておく際は、まず『温度と湿度』に対して気を配りましょう。保管方法によって、押入れに保管していたパテントレザーの表面が溶けてしまったというケースもありました。
現在は改良が行われているとはいえ、依然として環境の変化に弱いことは事実であり、長期間ほったらかしにしておくと、知らないうちにベタついたり、ひびが入ってしまうこともあります。
一度トラブルの起きたパテントレザーを修復することは難しいので、温度・湿度・風通しの良さなど、保管には細心の注意を払うのが原則です。
長期間保管しておく際には、定期的に外に出して『風に当てる』ことや、ひびの原因となる『皺をしっかり伸ばしておく』ことが、ポイントと言えるでしょう。
パテントレザーの手入れ方法
パテントレザーは、コーティングによって汚れにくいこともあり、そこまで手入れは必要ありませんが、いざ手入れをする際には、気をつけたほうが良い点もあります。どんな注意点があるのでしょうか。
防水スプレーの使用はNG
パテントレザーに対して、通常の防水スプレーの使用はおすすめできません。『光沢が損なわれる』可能性があるためです。
防水スプレーには、フッ素系と、シリコン系があります。このうち、革靴などに対しては普通、通気性などを理由にフッ素系の防水スプレーが推奨されます。
しかし、パテントレザーの場合には、コーティングされた樹脂の上にフッ素が付着することで、持ち味である光沢が損なわれてしまいます。何も考えずに防水スプレーを使うと、魅力が失われてしまうことになりかねないのです。
もともと水や汚れに強い性質を持っていますが、どうしても防水スプレーを使いたい場合には、エナメル用やパテントレザー用と表記された専用の防水スプレーを使うと良いでしょう。
表面のホコリを落とす
パテントレザーの通常時の手入れとしては、表面の『ホコリや汚れなどを落とすだけ』です。タオルや専用のクロスなど、目が細かく柔らかい素材の布を使って優しくホコリを落とします。
布だけでは汚れが落ちない場合には、エナメル用やパテントレザー用として『専用のクリーナー』が販売されていますので、そういった商品を使って汚れを落としていきましょう。
専用のクリーナーには、ツヤ出しも兼ねたものがありますが、そうしたクリーナーを使った場合には、乾いた後に柔らかい布を使って磨くと、よりきれいな仕上がりになります。
雨の日などは専用クリームでケア
雨の日に使うなどして、水分を吸ってしまったパテントレザーは、しっかりケアしてあげましょう。ポイントは『水分をしっかり拭き取り、乾かす』ことです。
まずは濡れたままのパテントレザーから、柔らかい布を使って水分を拭き取り、十分に水気が取れたら自然乾燥で乾かすようにします。
ツヤが気になる場合には、追加で専用のクリームなどを表面に塗っておくと、ひびが入りづらくなります。
手入れに便利なケアアイテム
どんなに気を配っていても、パテントレザーの表面がベタついてしまうことがあるかもしれません。そんな時のために、メンテナンス用のケアアイテムとして、クリームを紹介します。
コロンブス エナメルクリーナー
コロンブスの『エナメルクリーナー』は、創業から100年以上の歴史を誇り、靴用品を手がけているコロンブスが販売する、エナメル・パテントレザー用の日本製クリーナーです。
柔らかい布を使って薄く伸ばして塗ることで、ホコリなどの汚れがしっかり落ち、くすんでいたパテントレザーの表面に輝きが戻ってきます。
ローションタイプの製品なので、布へ垂らして塗り、乾いてきたら乾燥した布で軽く磨くなど、使い方も簡単です。エナメル・パテントレザー専用に作られているため、他の革製品などには使わないようにしてください。
- 商品名:コロンブス エナメルクリーナー
- 価格:1080円(税込)
- Amazon:商品ページ
コロンブス オーバルエナメルクリーム
『オーバルエナメルクリーム』は、同じくコロンブスから発売されているエナメル・パテントレザー用の手入れクリームです。
特殊なシリコンを材料にしていることで、表面がベタつかず、パテントレザーの持つ特有の光沢を保ってくれます。
容器には塗布器付きのチューブを採用し、コンパクトで扱いやすい製品になっています。クリーム自体は透明なゼリー状なので、幅広いカラーのエナメル・パテントレザーで使用可能です。
- 商品名:コロンブス オーバルエナメルクリーム
- 価格:802円(税込)
- Amazon:商品ページ
基本を押さえて光沢感をいつまでも
雨や汚れにも強く、特に手入れをしなくても長いあいだ輝きを放ち、礼装として使えるパテントレザーですが、一度傷ついてしまうと修復が難しいことが分かりました。
管理にしっかり気を配り、時にはメンテナンスもしていれば、光沢を保ったままパテントレザーを長く使えるでしょう。