夏目漱石の名著「門」を読み解く。前期三部作の集大成に込められた想い

2019.09.03

人生の道のりの先にある門。夏目漱石が執筆した青春小説「三四郎」から始まる3部作、その最終章が「門」です。都会で生きる若者の生涯を追った本作は、最終的にどのような結末へとたどり着いたのでしょうか?この記事ではそんな門のあらすじを紹介するとともに、最終章までの経過などを解説していきます。

門とは

かつて日本の千円札にも顔が載り、「吾輩は猫である」や「坊っちゃん」など数々の有名な小説でその名が知れ渡っている夏目漱石。そんな彼が満を辞して世に送り出した「門」とはどのような作品なのでしょう。

ここからは門の概要や魅力について解説していきます。

夏目漱石による三部作の最終章

「門」は、夏目漱石による「前期三部作」と呼ばれる3つの青春小説の最終章にあたります。一作目の「三四郎」は1908年、二作目の「それから」は1910年、そして「門」は1911年にそれぞれ朝日新聞の小説欄で連載されました。

本作は当時急速に成長を遂げていた日本において、地方から上京してくる若者たちを見て描かれたとされており、当時の日本社会や政治などについても触れる描写が多くあります。

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門までのあらすじ

もちろん「門」だけを読んでも十分に面白い小説なのですが、せっかくの三部作の最終章ですから、それまでのシリーズの内容を把握していたほうがより漱石の言いたかったことが分かりやすくなるでしょう。

そこでここからは、「門」へと続く2つの物語、「三四郎」と「それから」のそれぞれの大まかな内容を紹介していきます。

三四郎

三四郎は題名の通り「三四郎」という青年を主人公に据えた物語です。

日露戦争が終わったすぐ後に、進学のため九州から上京した三四郎は、数々の友人、教師、そして美女と出会います。三四郎はそんな都会の空気、雑踏に翻弄されながらも恋をして、少しづつ成長していくのです。

漱石作品の中でも、奥手でうぶな主人公の美しく淡い恋愛にフォーカスが当たっており、全体に漂うふんわりとした空気感が魅力の青春小説です。

それから

前期三部作の第二部にあたる「それから」ですが、「三四郎」から直接続くエピソードというわけではありません。主人公の代助は青年と呼ぶにはもう遅い29歳の男です。恵まれた家柄に生まれた代助は、親からの仕送りのみで生活を送り、世捨て人のような暮らしをしています。

しかし自分の紹介で親友と結婚した女性「三千代」を徐々に愛していってしまい、ついには親友から三千代を奪ってしまいます。そのことが原因で実家からも絶縁されてしまい、お金もないまま愛する人と2人だけになってしまうのです。

淡く切ない恋心を描いた「三四郎」とはうって変わって、愛が生み出す人間のエゴと悲哀の現実を描いた、生々しい作品となっています。

門のあらすじ

「三四郎」「それから」のあらすじでわかる通り、前期三部作は物語としての直接的な連続性をもっているわけではなく、いわば「構造的なつながり」を持った作品です。

登場人物や背景などは違うものの、立場や人間関係に共通点を持ち、一種の群像劇のような形で物語が展開されていきます。ここからついに、そんな三部作の最終章「門」のあらすじを紹介していきます。

逃亡者か世捨て人か

主人公の宗助は、かつて親友だった安井から奪った妻「御米」と崖下にある家でひっそり暮らしています。そのただならぬ馴れ初めから宗助には罪悪感があり、他の人間とはあまり交流を持たずにいますが、なけなしの善意で引き取った弟「小六」によって少しづつ生活に変化がもたらされてゆくのです。

前作の「それから」に通じる設定ですが、そこからさらに一歩踏み込んだ、罪の意識や人間の弱さを描く作品になっています。

作風の変化

夏目漱石の前期三部作に共通しているのは、いわば「恋愛をテーマにした、一人の青年の成長物語」と表現することができるでしょう。

あえて前期三部作を一つのストーリーとしてとらえるならば、「純朴な田舎の青年が上京し、都会の荒波にもまれながら淡く美しい恋と苦い失恋を覚える(三四郎)。そんな彼もやがて成熟した大人となったが、やがて人間の欲望のもつ業に抗うことができず、親友の妻を略奪してしまう(それから)。そんな彼は、罪の意識にさいなまれ、苦しみながらも愛する人とともに生きていく(門)」といったところでしょうか。

こうしたテーマの一貫性、物語の構造的つながりから、これら3作品はまとめて扱われるのです。

ちなみに、夏目漱石は「門」を境に恋愛的なテーマをメインに据えることは少なくなり、以後の作品の主題は主に「罪の意識」「エゴイズム」といった内省的なテーマへと移行していきます。これは漱石が「門」の執筆終盤に体調を大きく崩したことがきっかけとされており、いわば「門」は漱石の作風のターニングポイントになったという意味でも重要な作品なのです。

その後書かれた、よく知られている「こころ」を含む三作品(「彼岸過迄」1912年、「行人」1913年、「こころ」1914年)は、こうした内省的テーマがよく表れており、これらはまとめて「後期三部作」と呼ばれます。

その門の先には

 

「門」は「三四郎」から続く前期三部作の最終章です。3つの作品に直接的なつながりはなく、人間関係の1部分だけを切り取った形で続いていきます。まさに人生という道を歩いている人々の群像劇とも言える作品です。

果たしてたどり着いた門の先には何が待ち受けているのでしょうか?気になる方はこの記事を参考に、ぜひ本作を手に取ってみてください。内容をより深く理解したい方は、まずは「三四郎」から手にとってみることをおすすめします。

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