銀河鉄道の夜を徹底解説。謎に満ちた宮沢賢治の童話小説の秘密

2019.09.08

「銀河鉄道の夜」は、大正時代の詩人・童話作家である宮沢賢治の代表作のひとつです。主人公の名前が日本名でなかったり、銀河を旅する設定であったり、童話ならではの不思議な設定で読む者を魅了しますが、よく理解できないところもあることでしょう。その謎をこの記事では解説していきます。

少年2人の銀河鉄道の旅

1924年に描かれ始めた「銀河鉄道の夜」は、家が貧しく孤独な少年・ジョバンニと、彼の親友カムパネルラが、鉄道列車に乗って銀河を旅する物語です。これは夢なのか?空想なのか?いつのまにか、現実離れした旅がはじまっています。

透き通るような美しさ

誰も実際に見たことがない風景を、賢治はわかりやすい言葉を使いつつ、見事に表現します。

例えば、天の川を、銀河鉄道の窓から間近にみるシーンでは

そのきれいな水は、ガラスよりも水素よりもすきとおって、ときどき目の加減か、ちらちら紫いろのこまかな波をたてたり、虹のようにぎらっと光ったりしながら(以下中略)

出典:「新編・銀河鉄道の夜」

と、具体的に目に浮かぶように描いています。 他にも、実際に見たことのない、銀河の河底や天の川の横にある天の野原、そこに立つ波などや、鉄道のレール、停車場などを見事に描写しています。

死の気配が帯びてくる

ふたりは、停車場や鉄道の中で、様々な人物に出会います。最初は、ごく普通に会話をしていますが、そのうち、皆どこか不思議な雰囲気を持っている、死の気配を帯びていることに気づきます。 そして、旅の終わりのころ、気がつくとカムパネムラの姿は消えていて、ジョバンニは、ひとりぼっちになってしまった自分おののき、

窓の外へからだを乗り出して力いっぱい激しく胸をうって叫びそれからもう咽喉いっぱい泣き出しました

出展:「新編・銀河鉄道の夜」

宮澤賢治という詩人の凄さ

この作品は1924年から晩年の31年まで何度も推敲され、とうとう未完成のまま賢治は死去してしまいます。そのため、死後に出版されたものも、最後の下書きのものを利用しています。

幻想的な言葉をつむぐ

賢治は、わかりやすい言葉を使う反面、不思議な言葉の使い方をします。例えば「水晶細工のように見える銀杏の木」「水素よりももっとすきとおっている」「銀や貝殻でこさえたようなすすき」などです。このような不思議な言葉を組み合わせることで、幻想的な銀河の世界を表現しています。

多くの造語を多用

一方で、賢治は、多くのオリジナルの言葉を使用しています。実際にある星や植物の名前に呼応するかのように「天気輪の柱」「プリオシン海岸」などが、使われています。 言葉にこだわる詩を作り続けた賢治だったからこそ、童話の世界観にぴったりの言葉を使って、銀河の様子を表現したのかもしれません。

人生の孤独と、本当の幸せを探す物語

ジョバンニが目を開くと、もとの丘の草の中でした。旅の最後でカムパネルラと話していた「ほんとうのさいわい」(幸せ)とはなんだろうと話していたことを思い出します。 最初は、わからないといいながらも、何度もこの課題がふたりの間で話しあわれるのです。

蠍の火の寓話

旅の途中で、蠍(さそり)の火についての話をふたりは聞きます。さそりは、他の生命の幸せのために自分の体に火をつける、という話を聞いて、ジョバンニは「僕はもうあの蠍のように本当にみんなの幸のためならば僕の体なんか百ぺん灼いてもかまわない」というのです。 そして「僕はもうあんな大きな暗の中だって怖くない。きっとみんなの本当のさいわいを探しに行く。どこまでもどこまでも僕たち一緒に進んでいこう」とカムパネルラと話し合うのです。

消えてしまった親友はどこへ?

そして、消えたジョバンニを思って号泣していたジョバンニはいつのまにか目覚めて、親友・カンパネルラが現実には溺れた友達を助けて、命を落としたことを知ってしまいます。 つまり、鉄道列車から消える(降りる)人は、皆亡くなっていたことに気づくのです。銀河鉄道の旅は、生と死をつなぐ旅だったのでした。

読むたびに味わいが変わる幻想的な世界

実は亡くなっていた人と旅をしたり、天上には亡くなった人が過ごしていたり。あの世を銀河と仮定すると、一気に話が分かりやすくなるのです。

ただ、賢治はあくまで、つじつまの合う話や説法のような道徳的なお話を描くというより、美しい言葉で幻想的な世界の中、孤独な少年が『本当の幸せ』に気づくことに重点を置きたかったのではないでしょうか?

ぜひ味わって読んでみてください。

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