星月夜は、ゴッホにしか描けない異彩を放つ絵画。その独自性を紹介

2019.09.02

「星月夜」(ほしつきよ)は、オランダの画家・フィンセント・ファン・ゴッホによって1889年に描かれた油彩画です。後期印象派の作品としても有名ですが、ゴッホの描いた絵画は誰にも真似できない、その独自性が特徴です。何がどう違うのか?ご紹介します。

渦巻く空と瞬く星、本当にそう見えた?

約73×92㎝のそれほど大きくない画面のほとんどは、渦巻く夜空とまるで太陽のような星。手前にある大きな樹木や街も含めて、これは、実在の風景なのか想像の世界なのか長年研究されていました。

星月夜の意味

ニューヨーク近代美術館の永久コレクションとして所蔵されている「星月夜」は、世界中の人がこの作品を目当てに訪れるほど著名な作品です。

星月夜とは、月がなく星がまたたいて明るい夜空のこと。ところが、この絵の右上には月がまたたいています。そして、その月の輝きに負けないように、いくつもの星がまるで太陽のように光を放っています。

夜空の真ん中には、実際には見えないはずの、うねった大きい雲のようなものが存在し、その夜空の迫力には圧倒されるほど。遠景には、青黒い山が見えています。

実際の風景?それとも想像?

印象派の画家たちは、実際に見た風景を、自分の感性に即して描くようにして作品を生み出していました。ところがゴッホは、実際の風景をモチーフにするものの、自分の内面や感情をそこに込めて表現しようとします。

つまり、「星月夜」は、実際に見た風景を元にしたものの、ゴッホが表現しようとした自分の感情〜不安や自己矛盾、もどかしさなど〜を表したものともいえます。

実際、当時のスケッチなどからモチーフは見つかっていますが、そのままの風景は実在していないようです。

宗教的神秘を自然のモチーフで表す

若い頃に牧師を目指したゴッホは、独学で絵を学び、当時の印象派の絵画を吸収しながらも、自分なりの表現を目指していました。

ゴッホが夢見た国・日本

オランダからベルギーに移ったゴッホは、そこで見た日本の浮世絵に感銘をうけます。

当時、パリを中心とするヨーロッパ美術界では、今まで見たこともない浮世絵のデフォルメされた構図、鮮やかな色使いなどが話題になり、ゴッホは、ついに日本を光あふれる理想の国として夢見ます。そして、光をもとめて南フランスのアルルに向かったのです。

耳切事件をきっかけに精神病の発作

ところがそこで待ち受けていたのは、孤独でした。仲間の画家も来ず、親友の画家・ゴーガンともケンカ別れをし、激情にかられたゴッホは、自分の耳を切り落とします。それ以来、精神病の発作を発症するようになり、療養所のあるサン・レミへ移り住みます。

ゴッホならではの色彩と、筆のタッチ

それでもゴッホは、苦しい発作の合間に、絵を描き続けます。この時代に描かれた作品のひとつが「星月夜」です。それまでの光輝く穏やかな画風から、より筆のタッチを生かした激しい画風に変わります。

素早く荒々しい筆触

印象派の特徴として、点描を描くように細かな筆のタッチで色をつけていく筆触分割があげられますが、ゴッホの筆のタッチは、たっぶり絵の具をつけた状態で素早く動かされています。そのため絵を見る人には、画面に動きがはっきり見え、激しく泡立った風景のように見えるのです。

そびえたつ糸杉とうねる空

また、数々の作品で、糸杉と呼ばれる細長い樹木が登場します。時には炎のようなうねる姿でそびえたつ糸杉は、牧師をめざしたこともあるゴッホにとってオベリスク(記念柱)のような神聖さを表すものでした。また、うずまきのような空は、抽象画のように彼の内面を表すものとして描かれています。

生前に認められなかった画家の傑作

ゴッホは、画商をしていた弟・テオに向けた手紙が多数残っており、当時の彼の気持ちや意図などが詳しく現代にも伝わっています。今日、近代西洋絵画の代表としても、人々の気持ちを掴む名作としても有名ですが、生前に売れた作品は、一点だけでした。そんな壮絶な孤独と激しい焦燥感を感じる作品だからこそ、今なお人々の心を打つのかもしれません。

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