名画『夜警』の鑑賞ポイントとは?光の魔術師と呼ばれたレンブラントの挑戦

2019.08.28

アムステルダム国立美術館に所蔵される、レンブラント作の『夜警』のタイトルは、実は通称。本当のタイトルは『フランス・バニング・コック隊長とウィレム・ファン・ライテンブルフ副隊長の市民隊』といいます。誰もが知る名作に秘められた、レンブラントの制作意図を紹介しましょう。

レンブラントの『夜警』の全図を見たい方は、以下オリジナルサイトからご確認ください。

夜警|アムステルダム国立美術館

とにかく大きい!その理由は?

1642年に製作された「夜警」は、363×437㎝とかなり大型の絵画となっています。そこまで大きな絵画は、当時でも珍しいものでした。この大きさの秘密に迫ります。

オーダー主は富裕層の市民団体

「夜警」をレンブラントに注文したのは、火縄銃手による市民自警団体で、火縄銃種組合集会所の壁にかけるための絵画が欲しい、ということでした。

当時のオランダでは、貿易によって富を得た市民たちが各団体をつくり、どこかの団体に属していることが富裕層の証とされました。その記念絵画を、集会所に飾りたい、という、いわば現代でいうところの集合写真のような依頼だったのです。

集団肖像画として発注

ルネサンス期に、治世者や教会がキリスト教の教えを表現するために美術品をオーダーするのと違い、16世紀後半~18世紀は、富裕層の市民が、肖像画や市民生活を描くようオーダーをしていました。

この「夜警」も、自警団たちが、ふだんの自分たちの活躍を描いてくれるよう発注しています。レンブラントはこれに応じ、巨大な集団肖像画を描くことを決意します。

光と影のコントラスト

ルネサンス期の画面全体が明るい絵画と違い、レンブラントをはじめ当時のオランダ絵画は、太陽の光を使った陰影ある絵画が特長です。「夜警」の場合は、どうなっているのか、観ていきましょう。

じつは夜ではない!夜警の謎

「夜警」は、長年、一部分に光があたっている夜の場面と考えられていました。ところが、実はこれはニスの変色で暗くなっていることが後年の研究でわかり、昼間の自警団の姿ということが解明されています。

それでも、光の当たる人物とあたらない人物が混在し、まるで映画の一場面のような劇的効果を演出しています。

スポットライト効果のある人物

画面左上からは、中央の男性二人(自警団の会長と副会長とされる)と左奥の少女(自警団のマスコットとして寵愛された)に、光が当たっています。古典レンブラントは、自警のために準備をする自警団たちのリアルさや臨場感を演出するために、わざと光を強調して描いたのです。

ところが、ルネサンス期の隅々まで明るく美しい絵画に慣れていたモデルたちは、人物によっては、自分の顔が暗くてよく見えない、もっと美しく描いていくれ、などの不平不満も出たという記録が残っています。

今にも動きそうな人物たち

レンブラントの挑戦は、登場人物の視線の動きにもあります。集団の動的エネルギーをより強調するため、視線を交差させたり外したりと、いわゆる記念写真らしい正面へ向けた視線(鑑賞者を意識した視線)を、ほとんど描かなったのです。

リアルさのある人物の動き

ドラムをたたこうとする鼓手の目線はドラムに、火薬をつめようとする銃手の視線は銃の先端に向けられています。普段の生活でも、私たちは集団でいるとき、必ず誰かと視線を交差させているわけではありません。

現代では当たり前ですが、記念碑的な肖像画が多かった当時では、交錯する視線は新しい挑戦でした。

新しい肖像画としての評判は?

登場人物を均等に描かず、強弱をつけた表現をした本作品は、当時の発注主には不評を買ったそうです。また、権力を握っていた中央のふたり(会長と副会長)は、自分の身長をもっと高く、顔を正面に…などと 細かな注文を付けたという記録も残っています。

西洋絵画の鑑賞方法が学べる

レンブラントの最も有名な作品『夜警』は、彼にとっても新たな挑戦をした作品ともいえます。オランダ絵画の最高傑作ともいわれる本作は、現在もアムステルダム国立美術館の見どころの筆頭に挙げられます。現代に通じる近代絵画の表現方法を試している、美術史に残るマスターピースといえるでしょう。

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