旧約聖書のあらすじを紹介。キリスト教美術を読み解く指南書に

2019.08.27

旧約聖書は、キリスト教とユダヤ教の聖典です。神が人間を作り、人間(イスラエルの民)の歴史と神の教えをまとめています。そのハイライトシーンは数々のキリスト教美術にも描かれているので、読んでおくとより絵が理解できる手助けになるでしょう。

神から律法を与えられる「モーセ五書」

旧約聖書の最初の5章は、モーセが書いたという伝承から「モーセ五書」と呼ばれます。

まず最初に、神が世界を作り始める物語「創世記」があり、次いでエジプトで迫害される人間(イスラエルの民)をモーセが導く「出エジプト記」、その後「レビ記」「民数記」「申命記」と続き、これら5つの書がまとめて「モーセ五書」とされています。

アダムとイブやバベルの塔が登場する創世記

「創世記」は、神がこの世界を創造し、人間を創造する様を描くことで、この世界の成り立ちを説明する章です。

神はまず1日目で天(宇宙)と地(地球)の2つと、光を作ります。2日目には空を作り、3日目には大地・海・植物を、4日目には太陽と月を…といったように世界のすべてを創造していくのです。

そして6日目にして、「神に似たるもの」として、人間が作られたのです。この時最初に作られたのが、かの有名な「アダム」であり、さらに後になってアダムの肋骨から作り出されたのが「イブ」です。余談ですが、世界を作り終えた神は7日目には休息を取ったとされており、これが「日曜日=休日」の始まりとなったと言われています。

この「アダムとイブ」の話のほかにも、人類初めての殺人と嘘が語られる「カインとアベル」の兄弟の話や、神の怒りを買って大洪水が起こる「ノアの方舟」、天まで届く塔を作ろうとして神の怒りを買う「バベルの塔」などのお話は、全て「創世記」に描かれています。

モーセが登場する出エジプト記

創世記に描かれた人間たち=「イスラエルの民」たちはやがてエジプトに移り住むことになりますが、やがて王朝から迫害されるようになります。これを救うために、神が選んだのがモーセ。モーセは数々の奇跡でエジプト軍の追及をかわし、民をつれてエジプトを脱出します。

海がふたつに別れて、海底を歩いて逃げる民のシーンは特に有名です。そのほか、「モーセの十戒」といわれる人間への10個の戒めもこの章に描かれており、ユダヤ教・キリスト教の原型として現在にも影響がある教えとなっています。

ここまでが、旧約聖書の中でもいわゆる物語調の章となっており、この世界の歴史や成り立ちを説明するものとなっています。以下につづく「レビ記」「民数記」「申命記」は、当時の律法に関する規定集や、倫理に関する説話となっており、当時の倫理観や社会情勢がうかがい知ることができます。

部族間の抗争を描いた「歴史書」

「モーセ五書」のあとは、モーセ亡き後のイスラエルの民の歴史が描かれています。士師と呼ばれる軍事指導者が民をおさめ、部族間の抗争を経たのち国をつくる姿をまとめています。

モーセの後継者ヨシュアが活躍するヨシュア記

ヨシュアは、モーセの後継者として任命された後、ヨルダン川を渡ってイスラエルの民の国をつくるよう神に命じられます。そのため、現在のパレスチナの民と争いが起こり、その後、土地の分配をするところまで描かれています。

ヨシュアは、モーセ同様、太陽と月を丸1日とめる、という奇跡を起こし、勝利をおさめました。

国の興起と没落が描かれる「列王伝」

その後、数々の国の勃興の物語が「列王伝」として描かれます。中でも、ソロモン王、ダビデ、シバの女王などは、聞き馴染みのある名前で、現在も、数々の彫刻や壁画に残されている姿を見ることもできます。

その後、教派によりますが、「知恵文学」(哲学的な会話話のヨブ記など)や「予言書」など、いくつかのパートに分かれて教義が明記されています。

旧約聖書を表現した有名美術作品とは?

中世では、文字を読めない民にキリスト教の教義を教える手段は、教会の祭壇画や彫刻、壁画などでした。それでは、旧約聖書の世界をわかりやすく伝えてくれる代表作を紹介しましょう。

システィーナ礼拝堂の天井画

バチカン市国のシスティーナ礼拝堂の天井画は、ミケランジェロによって「アダムの創造」「イブの創造」「アダムとイブの楽園追放」「大洪水とノアの方舟」などが描かれています。

また、ボッティチェリなどに描かれた南側の壁画は、モーセの生涯を「モーセのエジプト脱出」「シナイ山からの下山」「モーセの試練」などハイライトシーンをまとめて紹介しています。

ルネサンス期を代表するダビデ像

ミケランジェロの名彫刻「ダビデ像」も、旧約聖書の重要な登場人物です。ダビデは、初代イスラエル王サウルに仕えて戦果をあげ、民にも神にも愛され、その後イスラエルの王となる英雄です。

数々の絵画に描かれているダビデですが、一番有名なダビデは、やはりイタリア・フィレンツェのアカデミア美術館にいる「ダビデ像」でしょう。

キリスト以前のイスラエルの民の物語

キリスト教では、キリスト生誕後の話は「新約聖書」としてまとめています。それに対する「旧約聖書」は、ユダヤ教の唯一の聖典であり、イスラム教もその一部を聖典としています。いずれにしろ、人類誕生ヒストリーとして読むと、かなり興味深いストーリー。教派によって書物の呼び方が変わったり、とても長く複雑な物語ですが、少しずつ読んでいく楽しみを味わってください。

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