20世紀最大の話題作と呼ばれた「ゲルニカ」を読み解く。ピカソの込めた想いとは

2019.08.27

「ゲルニカ」は、パブロ・ピカソが1937年に描いた巨大な油彩画です。すでにキュビズム(3次元のモチーフを幾何学的で単純な形に還元し二次元に表現する手法)の創始者として地位を確立していた彼が描いた、20世紀最大の話題作。その内容を詳しく紹介します。

ゲルニカの全図を見たい方は、以下オリジナルサイトからご確認ください。

ゲルニカ|ソフィア王妃美術センター

ゲルニカとは爆撃された都市の名前

この絵が描かれる発端になったのは、1937年4月のことです。

当時スペインでは、国内を2分する内戦が起きていました。もと成立していた共和制に対し、フランコ将軍という人物を中心とする極右派が反乱を起こしたのです。

この戦争のさなか、フランコを支持しファシズムの拡大を狙うナチス・ドイツは、スペイン・バスク地方のある小都市を爆撃します。その小都市こそが「ゲルニカ」でした。

ゲルニカは、史上初の焼夷弾による無差別爆撃を受けました。被害者のほとんどは軍隊とは何の関係もない一般市民であり、明確な国際法違反であったといえます。その悲劇を知ったピカソは、直後の5月に入るとすぐに描く準備を開始します。

349×777㎝の巨大な油彩画

「ゲルニカ」は、当時のピカソの恋人、カメラマンのドラ・マールが克明に写真を残し、習作(練習の作品)段階から完成までの記録が残っています。

右側には両手をあげて叫ぶ女性と窓から顔を出し長い手で灯火を差し出す女性、そして、それを見上げる女性が描かれています。中央には槍のささった馬と折れた剣を持って横たわる兵士、左側には死んだ子供を抱え嘆き悲しむ女性と背後に牝牛。

ピカソ特有の単純化されたフォルムで構成されていますが、その阿鼻叫喚の世界は、見るものにも十分伝わってくる傑作です。

1ヶ月足らずで描きあげた

もともと当時のスペイン共和国政府から、プラド美術館の名誉館長に任命され大作を依頼されていたピカソですが、自分の作品が政治利用されることをおそれ、手をつけていませんでした。

ところが、ゲルニカ爆撃のニュースを聞くと、憤然と巨大キャンパスに向かいます。そして習作を含め、この巨大な作品を1ヶ月足らずで完成させます。この作品は、完成後すぐパリ国際博覧会のスペイン館で展示されました。

20世紀最大の芸術家・ピカソ

すでに世界中で有名になっていたピカソは、どんな作品を制作するか、常に注目の的でした。特に、当時のヨーロッパは第2次世界大戦の嵐が吹き荒れ、故郷・スペインも国内政情が安定していませんでした。

キュビズムの創始者

ピカソといえば、誰もが思い浮かべる奇妙な絵。人の顔の目鼻の位置が、見た目と全く違う表現がされています。これは、一つの視点ではなく、複数の視点をひとつにまとめて描いたキュビズムという手法。これは現代にも通じる手法で、革命的な絵画手法ともいえます。

ジョルジュ・ブラックという画家とともに、これを確立したといわれるのがピカソです。しかし、そのあともこの手法に飽き足らず、様々な作品を残しています。

旺盛な制作意欲

彼は絵画の他にも、版画、さし絵、彫刻、素描(スケッチ)なども残しています。その数はなんと10万点以上。もっとも多作なアーティストとしてギネスブックに記されているほどです。そのため世界各国の主要美術館で、ピカソの作品は所蔵されています。

各国の政治に翻弄される大作

「ゲルニカ」は完成後、数奇な運命を辿ります。当時の世界に吹き荒れていたファシズムの嵐の中で、ナチス・ドイツが行った残虐行為を告発する「ゲルニカ」は、大きなセンセーションを巻き起こしました。

そしてその背景から、この作品はいわば反ファシズム・反戦の象徴として扱われることになります。

アメリカに亡命する作品

「ゲルニカ」はヨーロッパ各国で展示されたあと、1939年アメリカに渡り、各地で展示されます。このとき、内戦後のスペインを統治していたのはフランコ将軍による独裁ファシズム政権になっていたため、作品の行く末を危惧したピカソは、「ゲルニカ」がスペインへ返還されるのを断ります。

そのため、この作品は、結局40年に渡ってニューヨーク近代美術館に貸与され続けます。「ゲルニカ」はいわば、反ファシズム、反枢軸国の象徴的作品として政治的意味を付与されてしまったのでした。

死後にスペインに戻る

その後も、反戦のシンボルやバスク地方の独立運動のシンボルとして、この絵は政治的影響力を持ち、ひとり歩きしてしまいます。そのため、数々のテロリストに狙われたり、作品自体が傷つけられたりと受難の道が続きますが、ついに、1981年スペインに返還されました。

プラド美術館に展示された後に、現在は、マドリードのソフィア王妃美術センターにて展示されています。スペインに戻ってきたのは、42年ぶりのことでした。

人に影響を与える大作だからこその流転の運命

20世紀最大のアーティスト、ピカソの大作「ゲルニカ」は、その偉大な表現力と影響力によって注目され続けました。一時は、展示されながらも厳しい警備下でしか鑑賞できなかった本作品。機会があれば、その偉大さを感じられる現物を鑑賞したい傑作です。

その他のテーマ

ART

CULTURE

CRAFT

FOOD

TIME