経験論と啓蒙哲学の父「ジョン・ロック」の思想を5分で解説。

2019.08.23

イギリスの哲学者ジョン・ロック(1632~1704年)は、アメリカ独立戦争やフランス革命に影響を与えた啓蒙哲学の祖であるとともに、イギリス経験論の父と言われています。この記事では、そのロックの思想について、哲学と政治学の二つの軸を中心にご紹介します。

ロックの哲学ーイギリス経験論

カント以降の近代哲学の源流の一つとされるイギリス経験論とはどのような思想なのでしょうか。ロックの主著の一つである『人間悟性論』とともにご紹介します。

『人間悟性論』とは

ロックの経験論は『人間悟性論』という書物において論じられています。ロックは、「生得的観念について」「観念について」「言語について」「知識について」の全4巻からなる大著を20年にわたってまとめ上げました。

そのなかでは、経験的な観念の獲得についてだけでなく、物事の実在論や、人格の同一性、言語の本性とは何かといった問題が論じられ、近世認識論の発端となったと言われています。

キーワードは「タブラ・ラサ」

ロックは、「理性や観念は生まれながらに神によって与えられている」とするデカルトやスピノザらの大陸合理論に対して、「観念は生まれつきではなく経験によって備わる」という考え方を提唱しイギリス経験論を確立しました。

ロックの経験論では、外部からの刺激による経験によって、人は観念を獲得するとされますが、それ以前のまっさらな魂の状態を「タブラ・ラサ」(拭い去られた石板)と呼んでいます。

彼の思想は、のちにバークリーやヒュームらによって展開され、フランス革命を思想的に準備し、ドイツではカント哲学を生み出すなど、後世に大きな影響を与えました。

ロックの政治学ー社会契約論

続いて、世界史の動きを大きく変えることとなる啓蒙哲学の端緒となったロックの政治学について、もう一つの主著である『統治論』とともにご紹介します。

『統治論』とは

ジョン・ロックのもう一つの主要著作『統治論』は、王権神授説を唱えるロバート・フィルマー卿に反論するために記されました。

主にフィルマーへの批判が記された第一論文と、政府のあり方や基本的人権について詳細に論じた第二論文によって構成されています。そこに記されたロックの思想は、アメリカの独立やフランス革命を理論的に支えるものとなりました。

自然権と自然法

人間が本来持つ権利として古代ギリシアの時代から議論されてきた自然権について、ロックはまず、個人が自分の身体を所有しているというところから議論をしていきます。

身体を所有しているということは、生命や自由を所有しているということであり、その身体を使って生み出した生産物も所有することができると結論づけました。その所有物に対する権利を所有権と呼びます。

さらにロックは、人間が、他人の権利を侵害したり、自由を奪ったりすることをお互いに禁じるために、理性によって作り出しているのが自然法であると考えました。

社会契約と抵抗権

人間の自由や権利の根拠となる大切な自然権。これを守るために自然法を適応する際、人は偏った判断を下す可能性があります。

そこで人々は立法権を中心とした政府を形成し、自然権を信託するという社会契約を結ぶことができます。

ロックにとっては自然権が最も上位に位置づけられるため、もし、政府が自然権を侵害するようなことがあれば、それに対して人々は、同じく自然権の一つでもある抵抗権、あるいは革命権を行使することができると論じました。

ロックの権力分立論

ロックは「三権分立」で知られるモンテスキューに先駆けて、権力分立を説きました。

政府は、自然権を保障するために人々が信託を結んだ社会契約によって成り立っているため、そこには「契約の条件」が必要であるとされました。

そのために、立法権と行政権を分離して、対内的な立法権を執行権、対外的な行政権を外交権と呼びました。ロックの権力分立論では、立法権が行政権よりも優位に置かれ、名誉革命後のイギリスにおける立憲君主制を擁護しています。

『教育論』からも後世に影響

このように哲学にも政治にも功績を残したロックは、1693年には『教育論』を出版し、子どもの教育には知識を押し付けるのではなく良い習慣を持たせることが重要であるという、現代にも通じる主張を行いました。ロックは、私たちの歴史や政治体制だけでなく、人生観や子育てにまで大きな影響を与えた重要な哲学者と言えるでしょう。

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