サルトルの実存主義とは?5分で簡単に解説します

2019.08.18

第二次世界大戦後、思想界のオピニオンリーダーとしてフランスのみならず世界中に影響をあたえた知の巨人サルトル。彼の実存主義とはどんなものだったのか?その生涯や著作、名言とともに分かりやすく振り返ります。

実存主義者サルトルとその時代

まずサルトルの略歴と彼の登場した時代から見ておきましょう。

サルトルと恋人ボーヴォワール

ジャン=ポール・シャルル・エマール・サルトル(1905-1980)はフランスの哲学者・作家です。1930年代から『嘔吐』『存在と無』『実存主義とは何か』などの本でベストセラーを連発、戦後フランス界を代表する思想家と呼ばれました。

また大学時代に知り合ったボーヴォワールと、パートナーでありながら互いに偶然的な自由恋愛を楽しむという関係を生涯つづけたことでも知られています。ノーベル文学賞を辞退したり、莫大な印税収入がありながら財産を持たなかったりと、サルトルは既存の価値観に縛られない人生を送った人でした。

大人不信、人間不信の時代

サルトルが登場した第二次大戦前後のフランスは、「人間はすばらしい」という価値観が一挙に崩れた時代でした。若者たちの間で、大人や人間への不信が募ったこの時期に、サルトルは実存主義という思想を提唱します。1945年に行われた「実存主義とは何か」と題した講演は大人気を博し、一気にサルトルの実存主義はブームとなります。

『嘔吐』で描かれる、存在の無意味さ

サルトルの実存主義とはどんなものか?代表作のひとつである『嘔吐』という小説から紐解いてみましょう。

何者でもない主人公が感じる「吐き気」

1938年に発表された『嘔吐』は日記形式の小説です。アントワーヌ・ロカンタンという30歳の主人公は親の遺産で暮らしており、趣味の研究をする以外は家と図書館とカフェを往復するだけの毎日です。結婚もしておらず、社会的にみれば彼は何者でもありません。

そんなロカンタンに、あるときから不思議な感覚が襲いはじめます。拾った小石に、ウェイターのサスペンダーに、自分の手のひらに、なんともいえない嫌悪感と「物の存在そのもの」に襲われるような感覚を感じはじめるのです。ロカンタンはそれを「吐き気」と呼びました。

意味も必然性もなく、ただここにある

そして公園にある木の根っこを見たとき、ロカンタンは強い吐き気とともに実存(現実存在)にぶちあたります。

突然、実存のヴェールがはがれた。それは、抽象的な範疇としての無害な見かけをなくしていた。(中略)物の多様性、物の個別性といったものは、単なる見かけ、うわべのニスにすぎなかった。そのニスは溶けてしまい、あとには奇怪な、ぶよぶよの、無秩序の塊だけが残っていた。 サルトル『嘔吐』

つまりロカンタンは存在そのもの、名前をつけられ区別され概念化される前の現実存在そのものを見て、その無意味さ・偶然さ、無秩序ぶりに強烈な不安を感じたのです。

20世紀思想界の巨人サルトルの名言

小説『嘔吐』でサルトルが言いたかったこととは、実存がまず先立ってあるということ、そして人間の本質は人間ひとりひとりが決めていくものだということでした。

「実存は本質に先立つ」

「人間は神に似せてつくられたものである」「人間は理性的な動物である」……。西欧の哲学はつねに、人間とは○○だと、人間の本質を述べることをメインにしてきました。しかしサルトルはそうではない、逆だと主張します。

まず現実に、何者でもない人間がここにいる。彼/彼女は人生のなかで、あらゆる場面で、いろんな選択を自分で行う。そうして初めて「彼は医者である」「彼女は強く優しい人である」といった本質が生まれる。これがサルトルの言う「実存は本質に先立つ」という言葉の意味です。

「人間の運命は人間の手中にある」

つまり人間がどういう存在か決めるのはその人自身であるということです。これは圧倒的な自由を意味するのと同時に、たえまない不安も意味します。なぜなら自分の選択の結果には、常に自分自身が責任を負わなければいけないからです。

この不安から逃れるため、みんなと同じ行動をしたり、他人のまなざし通りの自分を演じたりすることもよくあります。でもそうじゃない、どうせ何かに拘束されるなら、こうなりたいという未来の自分の姿にこそ拘束されよう。これがサルトルの言う「アンガージュマン」であり、「人間の運命は人間の手中にある」などの言葉に含まれる積極的な意味なのでした。

サルトルは忘れ去られた哲学者なのか?

戦後の約20年間、サルトルはフランスのみならず日本でも絶大な影響力をほこるオピニオンリーダーでした。ことあるごとにサルトルは意見を求められ、たとえばアルジェリア戦争やキューバ革命の際には第三世界の独立を積極的に支持したりもしています。

ところが、マルクス主義と結びついた後期の思想が構造主義から批判されたのを機に、サルトルは急速に影響力を失います。思想史的には、1960年代以降は構造主義の時代と言われています。

サルトルの実存主義はすでに時代遅れの、忘れ去られた哲学なのでしょうか。その答えはぜひ、サルトルの著作を読んで、読者自身が決めていただきたいと思います。

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