「ヴィーナスの誕生」で有名なボッティチェッリ。数奇な人生と代表作を紹介

2019.08.16

あの有名な絵画「ヴィーナスの誕生」を描いた画家サンドロ・ボッティチェッリとはどのような人物なのでしょうか。この記事では、ボッティチェッリの人生やその代表作、後世への影響までをご紹介します。

栄華から零落へ。ボッティチェッリの人生をたどる

ルネサンスを代表する画家ボッティチェッリは、メディチ家に庇護された栄光の時代からパトロンを失った晩年の零落まで、意外にも数奇な人生をたどりました。その生涯を3つの時期に分けてご紹介します。

初期:修行から個性の確立まで

ボッティチェッリは1445年にフィレンツェの皮なめし職人の家に生まれ、1464年から1467年頃に優美な聖母子像で知られるフィリッポ・リッピの下で修行しました。その後、ヴェロッキオやポライウオーロの絵画から学びながら、次第に師の影響から離れ、徐々に他の画家とは異なる個性を確立していきました。

熟年期:メディチ家による庇護

ボッティチェッリは1470年頃から公的な注文をいくつもこなすようになります。そして、1475年、メディチ家のメンバーをモデルに「東方三博士の巡礼」を描いた後は、同家の庇護の下で「春」や「ヴィーナスの誕生」など数々の代表作を生み出しました。また、1481~1482年頃には、教皇の注文を受けローマのシスティーナ礼拝堂の壁画を描いています。

晩年期:サヴォナローラへの心酔と零落

1492年にメディチ家の当主が亡くなると、狂信的なドメニコ会修道士サヴォナローラがフィレンツェの実権を握るようになります。

ボッティチェリも彼の厳格な教義に影響をうけ、それ以前のボッティチェッリの作風である華やかで優美な雰囲気は失われ、人気に陰りが見え始めます。パトロンも失ってしまったボッティチェッリは1500年代にはわずかな作品しか残さず、1510年に世を去りました。

ウフィツィ美術館で見られるボッティチェッリの代表作

日本ではほとんど見る機会のないボッティチェッリの作品。その作品を数多く所蔵するフィレンツェのウフィツィ美術館所蔵品から代表作3点を厳選してご紹介します。

各作品の解説下のリンクで、ウフィツィ美術館のオンラインコレクションから実物を確認することができます。

「春(プリマヴェーラ)」

15世紀に描かれた最も難解と言われる絵画「春」の解釈は、いまも議論が分かれたままです。絵の右側では、西風の神ゼピュロスと結ばれたニンフのクロリスが、花の神フローラへと変身し、左側では様々な美徳を司る三美神が舞い踊り、エルメスが冬の雲を追い払っています。中央では、愛を女神ヴィーナスが自らの王国の永遠の春を見守っています。

ウフィツィ美術館ウェブサイト:Primavera

「ヴィーナスの誕生」

誰もが知る名画ですが、実は、この作品は「ヴィーナスの誕生」を描いたものではなく、ギリシャのキプロス島に流れ着いた場面を描いたというのが正解です。絵の左側で風をおこしているのが「春」にも登場したゼピュロスとクロリス、右側でヴィーナスを迎えているのが季節の女神ホーラーです。

ウフィツィ美術館ウェブサイト:The Birth of Venus

「チェステッロの受胎告知」

処女であるマリアが神の子を宿したことを大天使ガブリエルに告げられる場面を描いた「受胎告知」。ボッティチェッリの作品は、数ある「受胎告知」をモチーフにした絵画のなかでもダイナミックな描写が特徴です。

ガブリエルはまさに天から降り立った様子で、ヴェールがまだ舞い上がっています。聖母マリアは、その登場に驚き身をよじりながらも、その落ち着いた顔立ちからは、お告げを受け入れる準備ができていることを予感させます。

ウフィツィ美術館ウェブサイト:The Cestello Annunciation

ボッティチェッリの後世への影響

優れた作品を残した画家ボッティチェッリは、後世の芸術にも大きな影響を残しました。

たとえば、ポップ・アートの巨匠として名高いアンディ・ウォーホルは、「ヴィーナスの誕生」をハリウッドセレブと同じようにサイケデリックな色彩に置き換えて表現したことがあります。

また20世紀前半のイタリアを代表するオットーリノ・レスピーギは、「ボッティチェッリの3枚の絵」と題した管弦楽曲を残しています。

さらに、近年公開されたダン・ブラウン原作の映画「インフェルノ」には、ボッティチェリが晩年に精力を傾け描いたというダンテ「神曲」の地獄絵図が登場します。

絵画の世界のみならず、音楽や映画の世界にまで幅広いアートの世界に影響を与え続けているボッティチェッリは、やはり巨匠といえるでしょう。

一度は忘れられた画家

いまや世界で最も有名な画家の一人であるボッティチェッリは、おそらく晩年の不人気が要因となって、長いあいだ忘れられた存在だったというから驚きです。

19世紀にイギリスのラファエル前派の画家たちが再評価したことで新たにスポットライトを浴びたとされています。忘却の時代を超えてボッティチェッリの芸術が現代まで残されたことに感謝したいものです。

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