軍艦島の世界遺産登録のいきさつ。過去の反対運動と今後の課題

2018.10.15

長崎県にある軍艦島が世界遺産に登録されるまでには、さまざまな紆余曲折がありました。軍艦島が世界遺産に登録された理由や経緯、今後の課題、軍艦島観光の方法などを知り、軍艦島についての理解を深めていきましょう。

軍艦島のあらまし

世界遺産にも登録されている軍艦島の名前は聞いたことがあるけれど、実際にどのような島かわからないという人も少なくないでしょう。軍艦島とはどういう場所で、どんな歴史を辿ったのかをご紹介します。

軍艦島とは

軍艦島は長崎県にある無人島で、正式には『端島』といいます。長崎港から船で30分ほどの場所にあり、連日多くの人が足を運ぶ人気観光地です。

端島が軍艦島と呼ばれるのは、島を遠くから見ると、シルエットが軍艦『土佐』と似ているためと言われています。

軍艦島は炭鉱として栄えた島でしたが、炭鉱の閉山により無人島になり、現在は廃墟です。

ところが近代産業の貴重な遺産として明治日本の産業革命遺産である製鉄・製鋼、造船、石炭産業の貴重な資料として注目を浴び、現在では世界文化遺産の構成資産の1つに数えられています。

軍艦島の歴史

軍艦島は明治23年に、本格的に炭鉱として開発されはじめました。そしてその後、炭鉱の関係者とその家族が軍艦島に住むようになります。

良質な軍艦島の石炭は、文明開化後に近代化への道を突き進む日本のエネルギーを支え、高度成長に貢献しました。

石炭の出炭量が増えるにつれて島の人口もどんどん増えていき、昭和35年には5000人以上が住み、世界一の人口密度となりました。

その後、エネルギー革命により石炭ではなく石油が主要エネルギーとして使われるようになったことで、昭和49年炭鉱は閉山されました。軍艦島は無人島になり廃墟と化します。しかし2001年に長崎市が所有することになり、2009年からは観光地として軍艦島上陸が可能になりました。

軍艦島の詳しい歴史については、以下の記事でさらに詳しく解説していますので、興味のある方は参考にしてみてください。

軍艦島の歴史について。文化や特徴を知り理解を深めよう

世界遺産とは、種類や登録までの流れ

世界遺産に登録されている場所は数多くありますが、そもそも、どのようにして世界遺産に登録されるのでしょうか。軍艦島が登録された世界遺産の概要や登録の流れなども押さえておきましょう。

世界遺産の定義と意味

世界遺産というのは、過去から受け継ぎ未来へと伝えていくべき『人類の共通の遺産』とされています。

世界遺産はもともと、1960年代、ナイル川流域のヌビア遺跡を水没から守るために遺跡を移築保存するための運動から派生しました。

その際に『人類共通の遺産』という考え方が注目され、その後の1972年に世界遺産条約が採択されることになったのです。

2016年12月の時点で、この条約を締結したのは191カ国にものぼります。

世界遺産登録の流れ

世界遺産には『人類共通の遺産』という性質があるため、世界遺産の登録にあたって『本当に受け継いでいくべきものなのか、それにふさわしい価値があるのか』という調査がなされます。

この調査により、ふさわしい価値があると認められたものだけが、世界遺産として登録されるのです。

登録までの流れは、まず条約を締結した国からの推薦で作られる候補物件リストが委員会に提出されます。その後専門機関が調査をして、世界遺産委員会が登録するかどうかを判断します。

軍艦島は文化遺産として登録

世界遺産には大きく分けて、3つの種類があるのをご存じでしょうか。

1つ目は『文化遺産』で、普遍的な価値を持った建物や遺跡景観などが当てはまります。2つ目は『自然遺産』で、普遍的な価値がある生態系や地形、特定の動植物の生息地などです。3つ目は、この2つを合わせた『複合遺産』となります。

軍艦島が登録されたのは、この『文化遺産』という項目です。日本ではほかに、姫路城や法隆寺、原爆ドームや富岡製糸場などが文化遺産として登録されています。

軍艦島はなぜ世界遺産に推薦されたのか

なぜ軍艦島は、世界遺産として登録されたのでしょうか。文化遺産に登録されるためには、『普遍的価値があり人類共通の遺産である』と認められなくてはいけません。つまり軍艦島は、その価値があると認められたことになります。

文化遺産に登録された軍艦島が『人類共通の遺産』である理由などを学んでいきましょう。

明治日本の産業革命遺産の一つ

軍艦島は2015年7月に、軍艦島単体ではなく、『明治日本の産業革命遺産である製鉄・製鋼、造船、石炭産業』という遺産の構成資産の1つとして世界文化遺産に登録されました。

長崎では軍艦島のほかに、高島炭鉱や三菱長崎造船所、旧グラバー住宅などが同時に登録されています。

ほかにも、山口県の萩にある松下村塾や鹿児島県の旧集成館、福岡県の三池炭鉱、佐賀県の三重津海軍所跡など、この世界遺産は8県に跨る23の資産によって構成されているのです。

現在使われている施設、いわゆる『稼働遺産』を含む世界遺産は、これが日本で初めてとなりました。

日本の産業発展の基礎を作った貴重な遺産

軍艦島がこの世界遺産の構成資産の1つに選ばれたのは、日本の近代化に多大な貢献をしたことが認められたからです。

軍艦島で採掘される良質な石炭は、明治23年から昭和49年の84年間で1500万トン以上にもなり、製鉄の原料や船の燃料として使われました。

この大量で良質な石炭があったからこそ、日本の近代化が推し進められたと言えます。その功績が認められた結果、世界遺産に登録されたのです。

政府は推薦枠は1つしかなく、文化庁は長崎の教会群とキリスト教関連遺産を、内閣官房はこの明治日本の産業革命遺産を推薦していました。

この2つの候補はずっと競り合っていましたが、日本産業の基礎を作ったという功績を評価され、見事推薦を勝ち取り登録に至りました。

反対運動と今後の課題

軍艦島が世界遺産に登録されるまでには、さまざまな紆余曲折がありました。そして、世界遺産に1度登録された後は、その価値を維持し続けるための補修や保存を続けていかなくてはいけません。

世界遺産に登録されるまでの歩みと、これから課題になっていくことを紹介します。

世界遺産登録に対する反対運動

見事に政府からの推薦枠を勝ち取った軍艦島ですが、その後、予期せぬ問題が発生しました。

『軍艦島の炭鉱では、日本人だけでなく朝鮮半島から強制徴用された韓国人が働いていた』として、韓国が登録に反対したのです。

これは、慰安婦問題を含めた歴史認識に日本と韓国のあいだで相違があり、日韓の関係が悪化していたという背景もあります。この徴用をどのように表記するかという点で日韓の協議が進められましたが、なかなか妥協点は見つかりませんでした。

結果として、韓国側が希望する『強制労働』という表現は使わなかったまでも、労働を強いられた人がいたということを明記することになりました。

設備や建物の補修・保存が今後の課題

軍艦島は30年以上の長きにわたり無人島だったため、廃墟となっていました。建築から100年ほど経っている建物もあり、軍艦島の建物は老朽化が進んでいるのです。しかし廃墟の軍艦島を完全に綺麗に修復しては、その価値が損なわれてしまいます。

つまり、軍艦島は廃墟のままを維持するというむずかしい修復と保存が求められているのです。

また、建物だけではなく護岸も古くなっており、大きく割れていたり穴が開いている部分があります。こちらも修繕が必要ですが、全容を把握するのは簡単なことではありません。

現状をしっかりと把握したうえで景観を損ねず、なおかつ崩壊を回避するということが、今後の軍艦島の課題となります。

世界遺産になった軍艦島へ行ってみよう

現在観光地化されている軍艦島へは、船で行くことができるのです。いくつかの運行会社からクルーズツアーが運営されており、それぞれのツアーに特徴があります。

ツアーの特徴や軍艦島の見どころを知って、訪問前の準備を進めていきましょう。

軍艦島上陸クルーズが人気

世界遺産として登録されたこと、廃墟ブームが注目されたことで、軍艦島のクルーズツアーが人気となっています。

軍艦島は島なので、ツアーに参加しない限り行くことはできません。軍艦島に行ってみたい人は、ぜひツアーに参加してみましょう。

ただし、軍艦島へは気象条件によっては上陸できない場合もあります。天候をチェックし、上陸できなかったときのことも考えておくと安心です。

軍艦島コンシェルジュ

軍艦島へは、天候によっては船が出ずに上陸できないことがあります。そんななかでも平均上陸率が94.7%と高い水準を誇っているのが、この『軍艦島コンシェルジュ』のツアーです。

ここで使われているジュピターとマーキュリーという船には、ジャイロスタビライザーという横揺れ防止の装置がつけられているため、船酔いを70%以上軽減できるとされています。

また、軍艦島の上陸周遊プランは大人1人4000円ですが、8000円のプレミアムチケットを買うと、ミュージアムを見れたり2階の特等席に座れたりノベルティがもらえたりと、より軍艦島を楽しむことができます。

やまさ海運株式会社

初めて軍艦島上陸クルーズを行ったことでも知られているのが、やまさ海運による『軍艦島クルーズ』です。

このグループを利用した観光客は50万人を超えており、軍艦島に上陸した人の4割程度がこの周遊クルーズを利用しているという高いシェア率と実績を誇ります。

インターネットで1ヶ月前に予約すれば、通常大人1人4200円の乗船料が20%オフになり、3300円とお得に観光することができるので、ツアーを考えているのであれば利用してみてください。

軍艦島のおすすめ観光スポット

軍艦島は、上陸したからといってどこでも好きに歩けるわけではありません。観光スポットはもうすでに決まっています。主な見学スポットは、第1見学広場、第2見学広場、第3見学広場です。

第1見学広場は従業員の住宅や第2立坑跡を見学することができ、第2見学場では煉瓦造りの総合事務所や炭鉱で働いていた人たちが汗を流した共同浴場の跡があります。

第3見学場では、日本最古の鉄筋コンクリート高層アパートの30号棟アパートを見学することが可能です。

歴史の事実を伝える世界遺産・軍艦島

日本の近代化を支えた炭鉱を持つ軍艦島は、世界遺産に認められるほどの価値を持った大切な遺産です。

登録までには紆余曲折があり、今後むずかしい保存作業を継続しなくてはいけないものの、日本が誇る世界遺産の1つには変わりありません。興味がある人は、ぜひ行ってみましょう。

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