時を超えて忍者がマンガの世界を翔ける。魅力いっぱいの作品を紹介

2018.10.12

忍者漫画の人気は国内にとどまらず、海外も含めて花盛りの活況です。昔のダークなイメージから、今や大衆を魅了する人気キャラクターのカテゴリーになっています。そんな忍者漫画の今と昔の違いや話題の名作をまとめてみました。

忍者の魅力は多くの人を惹きつける

忍者という存在は、どうやら現代人を惹きつける魅力を備えているようです。そんな忍者像の今と昔を見ていきましょう。

歴史上の忍びと漫画の中の忍者

忍術を駆使して高い身体能力で闘う「忍者像」は後世に形成されました。『忍者』という呼称も1950年代後半以降に定着したもので、古くは『忍び』と呼ばれていました。隠密行動が本分のため、当然史料は少なく、謎のヴェールに包まれていました。

研究が進んできた昨今では、徐々に実態が明らかにされつつあるということです。黎明期の忍者漫画の忍者像は、後世に伝説化されて小説や映画になったものがベースにあります。

しかしゼロ年代以降の「NARUTO」に代表される現代の忍者漫画は、過去の要素をリスペクトしつつも、現代感覚も巧みに取り入れたり、タイムスリップと掛け合わせたりのダイナミックなものに変わってきています。

現代社会に通じる忍者の世界

映画や漫画の中の忍者と実際のそれは、多少の違いがあるようです。派手な忍術を使って格闘したりではないのです。文献によれば、どちらかといえば地味な潜入捜査や心理戦的なアプローチで敵方の情報を得るような仕事をしていたようです。

一例を挙げますと、『五車の術』というのがあります。名称はそれっぽくてかっこいい響きですね。ところがこれは、スパイとしてして潜入した相手方の人間から重要な情報を自然と聞き出すための会話法を指南したマニュアルなのです。

コミュニケーション力を鍛えるハンドブックと言えそうです。喜怒哀楽恐の5感情を巧みに使い分け、人間の心を動かすというもので、現代で言えば営業マンの心得を学ぶような感じです。時代は変わっても人の心の仕組みは変わっていないのでしょう。

忍者漫画の黎明期 昭和の作家達

昭和30~40年代はまさに忍者漫画の黎明期と呼べる時代でした。どんな作家がどのような作品を生み出したのでしょうか?

忍者といえば 白土三平

忍者漫画と言えば巨匠・白土三平(しらと さんぺい)が筆頭にきます。それぐらい代名詞的に忍者漫画を浸透させました。『カムイ伝』や『サスケ』は敵だけでなく苦悩と闘う姿が赤裸々で、青年読者も共鳴しました。

彼の作品では忍術について一応の科学的説明がなされます。その説明が妥当かどうか、実現可能な理屈かどうかは別として、荒唐無稽な術ではなく根拠を示したのです。

その手法はそれ以前の単なる冒険活劇的の枠を超え、現代感覚をいちはやく取り入れた忍者モノだったと言えるでしょう。漫画の神様・手塚治虫をして「白土作品以降は少年向けとは言え、リアリティが求められるようになった」と言わしめています。

少年から青年層にも読者を広げた功績は、リアリティを感じさせる白土三平の卓越した筆力によるところが大きいでしょう。

特撮でも人気 横山光輝

横山光輝の『仮面の忍者赤影』は実写ドラマ化され、一躍少年たちのヒーローになりました。東映動画が特撮市場でトップを独走していた円谷プロに追いつけ追い越せの、キモ入り作品です。

赤影役の坂口祐三郎は、仮面の上からも伝わるハンサムな容貌で、少年少女にはとてもカッコイイと感じられました。作品の面白さ、特撮の素晴らしさとともに赤影のカッコよさもヒットの要因だったと言えましょう。

映像化はされませんでしたが、忘れてならないのが「伊賀の影丸」です。服部半蔵の名を受けて暗躍する隠密の闘いを描いた力作です。「聖闘士星矢」の車田正美はこの大ファンで彼の「風魔の小次郎」はモロに影丸がベースであることを本人も告白しています。

漫画家10人の競作 忍法十番勝負

1966年に忍者漫画ファンには夢のような連作漫画「忍法十番勝負」が世に出ました。秋田書店の少年誌「冒険王」の企画です。巻物の争奪戦というテーマを10人の漫画家が描き繋いでいく連作でした。

10人は以下の通りです。

  1. 堀江卓
  2. 藤子不二雄A
  3. 松本あきら(松本零士)
  4. 古城武司
  5. 桑田次郎(桑田二郎)
  6. 一峰大二
  7. 白土三平
  8. 小沢さとる
  9. 石森章太郎(石ノ森章太郎)
  10. 横山光輝

まさに圧巻の顔ぶれです。ほとんど忍者モノを描かない松本零士や桑田二郎、小沢さとるなどの回は、貴重なコレクターズアイテムとしての価値もあります。

巻物争奪戦という設定は見事でした。それぞれのエピソードのつながりは巻物オンリーなので、いきなり忍術バトルを展開できます。絵のタッチの違いなど気にならないし、むしろ毎回新鮮という素敵な作品です。

これぞシノビの世界 本格忍者漫画

昭和30年代に勢力を増した忍者小説の流れを汲む、本格的な忍者小説を紹介しましょう。

バジリスク 甲賀忍法帖

伝奇小説の巨匠で忍法帖ブームを仕掛けた張本人、山田風太郎の小説をコミカライズしたのがせがわまさきの「バジリスク~甲賀忍法帖~」です。死闘あり悲恋ありの原作の濃厚な内容を、余すところなく描いた傑作です。

徳川の世継ぎ問題に端を発する流派間の対立の、根深い構図も描かれます。伊賀と甲賀の数百年に及ぶ反目、怨恨、憎悪が大義のもとに死闘の数々を生みました。また、身体そのものを自在に変化させる、妖術的な忍術があまりにも凄まじいのです。

せがわまさきは他にも多くの山田風太郎作品をコミカライズしています。柳生十兵衛がカッコよく描かれる「Y十M(ワイじゅうエム)~柳生忍法帖」もおすすめです。

紹介した2作を読むだけでも、せがわまさきがいかに山田風太郎に心酔しているかが伝わる、熱く濃厚な内容となっています。

NINKU 忍空

『NINKU―忍空―』は桐山光侍による作品で、1993年に週刊少年ジャンプで連載が始まりました。同誌の代表的作品でもあり、1995年にはアニメ化されます。

未完のまま10年ほど休載されて、2005年にウルトラジャンプで「忍空 〜SECOND STAGE 干支忍編〜」のタイトルで再開しました。

主人公は平和を愛する心根の優しい少年「風助」です。実は優れた忍者で、敵方と激しいバトルを繰り広げるギャップがたまりません。

『NARUTO』の岸本斉史は自他公認のNINKUオタクであり、これがあってこそ『NARUTO』が生まれたと言っています。

タイトルは作中の武術の呼び名です。空手のパワーに忍者のスピードとテクニックが組み合わされています。12の流派がある忍空は、十二支に絡む身体能力や自然を意のままに操る力を持っています。

あずみ

幼少時代から暗殺者としての英才教育を受けてきた少女「あずみ」、その波乱万丈の生き様を描いた作品です。劇場版の実写映画にもなり、人気を博しました。小学館漫画賞はじめ多数の賞をものにしています。

物語の序盤の流れが衝撃的です。仲間同士の殺し合いから始まって、村人の惨殺場面も強烈です。女だろうが子供だろうが一寸の迷いもなく…。忍者の持つ暗部を容赦なく描いていきます。

小山ゆうはアクションの表現がシンプルな分、リアリティがあって良いという評判です。また、変装しての隠密行動など、史実に基づいた忍者の行動を描いています。

続編で幕末を舞台にした「AZUMI-あずみ-」があります。同じく小山ゆうの人気作品「お~い竜馬」(原作は武田鉄矢)と交差する内容で、小山ファンには必読とされています。

年齢を超えて楽しめる おすすめ忍者漫画

忍者漫画の中には誰にとっても読みやすく、年齢を問わず楽しめるものがあります。おすすめを紹介しましょう。

忍者ハットリくん

ギャグ系の忍者漫画と言えば真っ先に挙がるのがこの「忍者ハットリくん」でしょう。藤子不二雄Aの筆によるもので、この路線の始祖鳥的な存在感があります。

忍者の里出身の忍者ハットリくんは三葉家の居候になります。現代人とズレが大きいハットリくんの行動が思わず笑いを誘うのです。そういう意味では設定の時点で勝利していると言えます。

日常生活の中でハットリくんが色々な忍術を使い、騒動が持ち上がるのです。この漫画が描かれた頃は、忍者や忍法は暗く重いイメージでした。この作品においてはまるでドラえもんのように、子供の想像力が広がる楽しい内容となっています。

落第忍者乱太郎

尼子騒兵衛によるコミカルな忍法漫画で、「忍たま乱太郎」のタイトルでアニメ化されています。朝日小学生新聞で実に30年にわたって連載されており、アニメも20年続いている長寿コンテンツです。

実は作者・尼子騒兵衛は『万川集海』や『忍秘伝』といったいわゆる忍術書を持っています。だから忍者が使う術にせよ武器にせよ、詳しいイラスト付きで見ることができます。

背景となる室町時代がちゃんと考証されている中で、突然自販機や製造庫が登場したりして笑いを誘います。そうかと思えば戦災孤児の主人公・きり丸に作者が戦乱で家族を失ったという経験を重ねるようなシリアスな部分もあります。

信長の忍び

重野なおきの「信長の忍び」は一見は4コマ漫画に見えます。しかし4コマめ毎にオチをつけながらも、ストーリーは途切れません。4コマでありながらどんどん話は進んでいくという珍しい形式をとってます。

溺れていたことろを信長に助けられ、恩人の天下布武という夢の成就を手助けするのを決めた忍び女子の千鳥が愛らしいキャラです。また信長や木下藤吉郎のいい味のボケに、千鳥が突っ込むというパターン(逆パターンもあり)が病みつきになります。

そんなギャグ要素が基本にありながらも、戦国時代のエピソードや史実をきっちり組み込んでいて意外と重みがあります。忍び目線の戦国モノとしても興味深く読める作品です。

海外にデジタルに大活躍、21世紀の忍者達

日本初の様々なサブカルチャーがヨーロッパやアメリカをはじめとする海外マーケットで評価され始めて久しいです。メディアミックス化した作品やアプリで読むデジタルコンテンツ等を紹介しましょう。

NARUTO

『NARUTO』は世紀末前夜の1999年から2014年まで週刊少年ジャンプにて描き続けられた岸本斉史の長編忍者漫画です。単行本は世界で2億3500万部を売り上げ、アニメやゲームも含むメディアミックスの巨大コンテンツでもあります。

「ONE PIECE」と並び少年ジャンプを代表する連載ものでした。魅力的なキャラクター設定、超派手なバトルアクション、アジアの民族や宗教哲学的要素など多重構造を持ち、全700話を飽きさせずに読ませる熱量の高い作品です。 続編の「BORUTO―ボルト―」は原作が岸本斉史、作画は池本幹雄です。 血統書付きの『NARUTO』の続編と言えましょう。 ナルトの息子ボルトが主人公ですが、彼だけではなく前作で活躍したキャラクターの息子たちが続々登場して楽しめます。

ニンジャスレイヤー

これはブラッドレー・ボンド(Bradley Bond)とフィリップ・ニンジャ・モーゼズ(Philip Ninj@ Morzez)という二人のアメリカ人の共作による同名小説のコミカライズ版です。

原作は「サイバーパンク・ニンジャ活劇小説」とジャンル分けされています。書籍・漫画・アニメ等のメディアミックスな展開で話題となっています。内容は日本を舞台にした、妻子を殺害されて復讐に燃える男の物語です。

ぶっ飛んだ忍者アクションとともにアマクダリ、イクサ、シマナガシなど多数の日本語のエキセントリックな使い方が日本人の興味をそそります。テンションが高い展開と一種独特のナレーション的な語りもウケると評判です。

神式一閃 カムライトライブ

「神式一閃 カムライトライブ」は人気ゲームをコミカライズしたものです。スマートフォンやタブレットでアプリをダウンロードすれば、基本無料で読める作品です。月1のアプリ内連載で、アプリ内には各キャラクターをタップすればキャラ別にも読めるようになっています。

物語の舞台は謎の存在「ケガレ」に民衆が苦しめられている、見たこともない不思議な生物がいる聞いたこともない国々です。

神侍(カムライ)達が自分たちの大切な人、大切なものを護るために宿敵「ケガレ」に闘いを挑みます。たくさんの個性的キャラクターが縦横無尽に活躍する冒険譚です。

漫画の中に生きる忍者達に逢いにいこう

昭和から平成にかけての忍者漫画の変遷を、駆け足で見てきました。もう平成の次の時代が目の前に来ていますが、忍者漫画もさらに進化しさらに世界に広がっていく勢いを感じます。

私たちも二次元の漫画を読むことで忍者たちと逢い、脳内で三次元あるいは時空を超えた四次元に再構築して彼らの活躍を楽しみましょう。

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